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【展覧会】榮久庵憲司とGKの世界 鳳が翔く



【同展覧会 フライヤーより】
榮久庵憲司と、彼が率いる創造集団GKは、戦後の復興期より、数々の製品をデザインすることで、日本人の生活や都市空間の近代化の一翼を担ってきました。その領域は、日ごろ街中で目にする日用品やオートバイから、博覧会場の施設やサイン類、都市のインフラストラクチャーまでと、多岐にわたります。

榮久庵は、実家を継ぐべく僧門に入ったのち、デザインの道を志しました。その原点には、原爆で廃墟となった広島の街の光景と、進駐軍が体現していたアメリカ文化があったといいます。そして東京藝術大学在学中より、ともにデザインを学ぶ同窓生と、「モノの民主化」、「美の民主化」をスローガンに、当時の日本としては類のない、インダストリアルデザインを専門とするグループ、GKを結成しました。

以降、60年にわたるデザイン活動の根底に流れているのは、モダンデザインと東洋の思想の融合に加え、人が作ってきたもの=道具についての長年の研究です。人類が太古に初めて手にした道具から、未来の暮らしまでを見据えて、人と道具のあるべき関係をデザインによって提案し続けてきました。 

本展覧会では、製品化されたものやその模型、将来へのプロポーザル、さらには、人と自然と道具が美しく共生する世界を具現化したインスタレーション等によって、榮久庵憲司とGKが展開してきた、デザインの世界像をご紹介します。

2013年7月6日土曜日 ― 9月1日日曜日
世田谷美術館 Setagaya Art Museum

開館時間:
午前10時─午後6時(入場は午後5時30分まで)
休 館 日:
毎週月曜日(ただし7月15日月曜日・祝日は開館、
翌日7月16日火曜日は休館)
観 覧 料:
一般1000(800)円、65歳以上800(640)円、
大高生800(640)円、中小生500(400)円
*( )内は20名以上の団体料金。障害者の方は500円
(介助の方1名までは無料)、大高中小生の障害者の方は無料。

【詳細情報:GK Design GroupSetagaya Art Museum

Viva la 活版 Viva 美唄 さぁはじまったぞ アダナプレス倶楽部イベント狂想曲 !?

 
《アダナプレス倶楽部名物、お祭り騒ぎ !? ── やつがれ Wrote》
【Viva la 活版 Viva 美唄】の「イベント告知はがき」、『アダナプレス倶楽部会報誌』の発送を終えて、すこしは静かになっていたかにみえたアダナプレス倶楽部+活版カレッジの面面。
ところが実際は、みなさんが本来の活版造形者にもどって、アルテ・ピアッツァ美唄の「アート・ギャラリー」での展示に向けて、作品づくりに余念のない日日であることは知っていた。こういうときは、みんながナーバスになるので、触らぬ神にたたり無しでソッとしておくにかぎる。

うれしいことに、会場の美唄をはじめ、北海道各地で支援者が次次と名乗りをあげられ、さまざまな造形者からの熱い反応もしばしば入ってくるようになった。地元ではともかく大歓迎で、期待はどんどん大きくなっているようである。責任重大である。
アダナプレス倶楽部会員と有志のみなさんも、30人ほど北海道入りをするらしい。なかには福岡や徳島から駆けつける会員や修了生もいるようである。
美唄、石見沢、札幌と、各地のホテルに分宿して、えらくにぎやかになりそうな悪寒 モトイ 予感。


北海道はデッカイドーで、 ともかく見どころ、食べどころが多い。ほとんどのかたが、北海道ははじめてだから、美唄の見どころを『アダナプレス倶楽部会報誌』に紹介しようと提案した。担当はコヨーテ キタ。
なにやら熱心にデータを集め、しこしこ地図を作成していたが、怖れていたとおり「イタリアン・レストランならここ」、「和菓子のおいしいお店」、「ケーキと紅茶が勢揃いの店」「名物焼き鳥店紹介」と食べ物紹介ばかり。やはり人選を間違えた。後悔したがあとのまつりだった。

《2013年06月14日[金]──T シャツプリントの夕べ》
そんな多忙なはずのある週末、アダナプレス倶楽部会員が、おもいおもいのTシャツを持参して、三三五五集まっていた。
【Viva la 活版 Viva 美唄】の「制服」として、Tシャツにイベントタイトルの「Viva la 活版 Viva 美唄」のシルクスクリーン・プリントをするのだそうである。
そもそもアダナプレス倶楽部の会員には、シルクスクリーン印刷を本業とするかたがいるし、さまざまな印刷版式のひとつとして、孔版印刷=シルクスクリーンを業務とされる会員もいる。
それなのに今回はプロは後方支援にまわって、教場の片隅に、簡易印刷キット「シルクスクリーン T シャツくん」をもちこんで、各自がそれで印刷するのだそうである。

人気を独り占めして、圧巻だったのは「紋暢モンヨウ クン2歳のTシャツ+ポシェット」だった。ともかくちいさくて、かわいらしい。
コンビニで間に合わせの T シャツを買って、いつものとおり遅れてノコノコやってきたバッカス松尾は、わかっていない。
「エッ、こんなちいさいの、たれが着るの?」



《Viva la 活版 Viva 美唄》

【会 期】2013年7月13日(土)―15日(月・祝)9:00―17:00  
                      (最終日は13:00まで)

【会 場】ARTE PIAZZA BIBAI アルテピアッツァ美唄
     アート・ギャラリーおよびアート・ストゥディオ
     北海道美唄市落合町栄町   http://www.artepiazza.jp/
【入場料】無 料
      (ゼミナールの一部に参加費が必要なものもあります)

【主 催】朗文堂 アダナ・プレス倶楽部

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《Viva la 活版 Viva 美唄》の開催までひとつきを切った。
アダナプレス倶楽部が掲げる「活版印刷ルネサンス」は、かならずしも活版印刷「業務」の再興を願うものではない。むしろ五体をもちいて、五感にひびきわたる、あらたな物づくりに挑戦したかった。そんなおもいを共有できる活版造形者が着実に増加している。
そしてアルテ ピアッツァ美唄の広場いっぱいに、色とりどりの「Viva la 活版 Viva 美唄」のイベントタイトルTシャツを着た造形者が集うかとおもうと、こころ弾むものがあるこのごろである。

四川宋朝体 龍爪 ご愛用いただきました!


二玄社【改訂版】書法技法講座〈全20冊〉 同社Websiteより

二玄社  は、自動車、書道、東洋美術などの
専門書籍を中心に発行している
出版社です。
同社の 【改訂版】書法技法講座〈全20冊〉の装本部に
《四川宋朝体 龍爪》をご使用いただきました。

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《四川宋朝体 龍爪》は、中国宋代の四川刊本『周礼 シュライ』をその源流とします。四川省はふるくは蜀と呼ばれ、唐王朝末期の木版印刷術発祥の地のひとつで「蜀大字本」とよばれ、その風格が珍重されてきた字様です。
現代によみがえった刊本字様《四川宋朝体 龍爪》をご愛用ください。

Viva la 活版 Viva 美唄 開催が迫りました!


《Viva la 活版 Viva 美唄》の開催が近づいてまいりました。
「アルテピアッツァ美唄」は、美唄市の出身で、世界的な彫刻家として知られる安田 侃(やすだ かん)さんが、今なお創り続ける、大自然と彫刻が相響した野外彫刻公園からなる彫刻の美術館です。自然と人と芸術の新しいあり方を模索し、提案し続け、訪れる人々に自分の心を深く見つめる時間と空間を提供している素晴しい施設です。

そのような素敵な環境にある「アルテ ピアッツァ美唄」の「アート・ストゥディオ」と「アート・ギャラリー」の1画をお借りして、『Viva la 活版 Viva 美唄』では各種ゼミナールと、活版カレッジ有志による活字版印刷を中心とした展示をおこないます。

皆さまぜひとも、この機会に、お気に入りの書物を一冊持って、美唄の地にお越しください。そして日常の喧騒を離れ、活字版印刷の展示をじっくりと鑑賞し、活版印刷の魅力をご体験いただきたいと存じます。
彫刻と自然が織りなすシンフォニーの中で、のんびりと読書や思索に耽ったり、大切な人とのゆっくりしたひとときを過ごしたりしてください。
真の造形活動や、こころ豊かな人生について見つめなおすために必要な、贅沢な時間と空間がそこにはあります。

《Viva la 活版 Viva 美唄》
【会 期】2013年7月13日(土)―15日(月・祝)9:00―17:00(最終日は13:00まで)
【会 場】ARTE PIAZZA BIBAI アルテピアッツァ美唄
     アート・ギャラリーおよびアート・ストゥディオ
     北海道美唄市落合町栄町   http://www.artepiazza.jp/
【入場料】無 料
      (ゼミナールの一部に参加費が必要なものもあります)

【主 催】朗文堂 アダナ・プレス倶楽部

参考資料:以下の写真は2013年06月01日、武蔵野美術大学「タイポグラフィ2つの潮流展」のタイポグラフィ・ゼミナール風景です。武蔵野美術大学図書館・美術館ご提供。

アルテピアッツァ美唄《アート・ストゥディオ》にて、各種ゼミナールを開催します。

7月13日(土)
10:00―12:00 「メディアと活版印刷──活版印刷のあらたな挑戦」
            朗文堂/片塩二朗
参加費500円。予約不要・当日参加可能。
わが国への活字版印刷術導入の歴史から未来展望までが学べる講座です。
活字版印刷機Adana-21Jを使って記念カードの印刷体験も行います。

13:00―14:30 「欧文活字と花形活字でつくるオリジナルレターセット」
            アダナプレス倶楽部
参加費2,500円(材料費込) 予約制:定員4名(お申込先着順:定員となりました
花形とアルファベットの活字を使って、名前入りの素敵なオリジナルレターセットをつくります。
便箋10枚と封筒5枚に銀色のインキで印刷します。

15:00―16:30 「欧文活字と花形活字でつくるオリジナルレターセット」
            アダナプレス倶楽部
参加費2,500円(材料費込) 予約制:定員4名(お申込先着順:あと2名
花形とアルファベットの活字を使って、名前入りの素敵なオリジナルレターセットをつくります。
便箋10枚と封筒5枚に銀色のインキで印刷します。

■7月14日(日)
10:00―11:30 「起農への挑戦 〇(まる)をもらえる野菜づくり」
            まるほり野菜園/堀内 剛
参加費500円。予約不要・当日参加可能。
身体性をともなった「ものづくり」の根幹をなす「農」と「食」について、北海道夕張郡由仁町で野菜園「まるほり野菜園を起業した堀内剛さん」にお話いただきます。
堀内さんが育てたトマトの試食とお土産のトマトの配布(先着順)も予定しています。

13:00―14:30 「欧文活字と花形活字でつくるオリジナルレターセット」
            アダナプレス倶楽部
参加費2,500円(材料費込) 予約制:定員4名(お申込先着順)
花形とアルファベットの活字を使って、名前入りの素敵なオリジナルレターセットをつくります。
便箋10枚と封筒5枚に銀色のインキで印刷します。

15:00―16:30 「欧文活字と花形活字でつくるオリジナルレターセット」
            アダナプレス倶楽部
参加費2,500円(材料費込) 予約制:定員4名(お申込先着順:定員となりました
花形とアルファベットの活字を使って、名前入りの素敵なオリジナルレターセットをつくります。
便箋10枚と封筒5枚に銀色のインキで印刷します。

■7月15日(月・祝)
10:00―12:00 「活版印刷で記念カードを印刷しよう」
            アダナプレス倶楽部
参加費無料。予約不要・当日参加可能。
活字版印刷機Adana-21Jを使って記念カードの印刷を体験していただきます。

*「欧文活字と花形活字でつくるオリジナルレターセット」に参加ご希望の方は
e-mail もしくは、ファクシミリ 03-3352-5160 まで、
「Viva la 活版 Viva 美唄 花形活字レターセット 参加希望」と明記の上、
参加希望日時(第一希望、第二希望などもあれば明記)、
住所・氏名・年齢・当日連絡が可能な電話番号・e-mailアドレスもしくはファクシミリ番号をご連絡ください。
(お教えいただいた個人情報は朗文堂/アダナ・プレス倶楽部のみの使用といたします)。

★関連情報:タイポグラフィ・ブログロール『花筏』
◎ 03月13日  Viva la 活版 Viva 美唄 Ⅰ 開催のお知らせ
◎ 03月15日  Viva la 活版 Viva 美唄 Ⅱ 準備着着進行中 !?
◎ 03月28日  Viva la 活版 Viva 美唄 Ⅲ タイトルデザインと過去の活版関連イベントデザインの記録

普及版 欧文書体百花事典 好評販売中!


ご好評をいただいてまいりました
『欧文書体百花事典』を
 『普及版 欧文書体百花事典』として
装本と価格を変更して新発売。

・書 名    『普及版 欧文書体百花事典』
・編 集   組版工学研究会
・装 本  A4判 並製本 572ページ 図版多数
・発 売  2013年5月23日
・定 価  本体8,800円 + 税
       ISBN978-4-947613-87-5 C1070

※   『普及版 欧文書体百花事典』フライヤー近日完成いたします。
  教育機関などで御入用の節はご用命ください。 
※ 詳細は 朗文堂 book cosmique 新刊ページ をご覧ください。

正調明朝体 金陵 ご愛用いただいております!



 

池袋東武百貨店1Fの「草加葵」という和菓子店で、店名(看板)、袋、包装紙などに、トータルで「きざはし金陵M」が使われていました。

産地・素材にこだわったオリジナルせんべい

草加葵店は、大正5年創業、以来80有余年の歴史を有し、現在では草加せんべい専業企業として日本一の売上げ及び生産量を記録している企業です。
草加せんべいと並行して、あられも製造しており、近年「和」と「洋」のセンスを取り入れ、産地と素材にこだわったオリジナルせんべい、あられを製造しており、順調な業績を示しています。

http://asp.aik.co.jp/saitama-doken/card/shop_full.aspx?member=98
ふるくてあたらしい、そして、なによりも視覚にやさしい《正調明朝体 金陵M》、《正調明朝体 金陵B》をご愛用ください。

大日本印刷『秀英初号明朝 撰』を開発。本年09月発売!

 左)秀英初号明朝体 Std.   右)秀英初号明朝体 撰  文字形象比較
右側の行『秀英初号明朝体 撰 』では、上から「文:ひっかけ/筆支えがある」、「分:いわゆるハチヤネの処理」、「筑・倶:ふるい文字形象」が見られます。


左) 秀英初号明朝体 Std.        右) 秀英初号明朝体 撰

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大日本印刷株式会社は《2013年06月04日 ニュースリリース》において、【オリジナル書体『秀英体』の旧字バージョン「秀英初号明朝 撰 」を開発。モリサワにライセンス提供し、本年09月に発売】と発表しました。

あわせて株式会社モリサワは《2013年06月04日 ニュース》において【モリサワ 2013年の新書体「UD新ゴ コンデンス」などを発表】とし、【明朝体として2010年にリリースされた秀英初号明朝の旧字バージョン「秀英初号明朝 撰」は、旧字のほか、イタリック体や括弧などが追加収録されました】ことを発表しました。

【『秀英初号明朝 撰 』の概要── DNP ニュースリリースから一部に補整】
2010年にモリサワから発売した秀英初号明朝は、DNPが明治時代に開発した金属活字のデザインをデジタルフォント化したものです。金属活字の秀英初号明朝の筆の動きを活かしたデザインは、力強く、勢いのある表現が可能で、日本の明朝体を代表する傑作書体として、一世紀以上にわたり多くの出版物や広告などの印刷物で使用されています。

2010 年に発売した「秀英初号明朝Std」は、見出し用書体としてAdobe-Japan1-3(Std) の文字セットに準拠しており、他の秀英体フォント製品との互換性も考慮し、Adobe-Japanの基準に沿った字形[文字形象]を採用しました。
しかし、秀英初号明朝の伝統的な「ひっかけ」、「はちやね」や、旧字形[ふるい文字形象]など、“活字書体としての秀英初号明朝らしさ”を求めるユーザーからの声も多く寄せられたことから、旧字バージョンの「秀英初号明朝 撰 セン」を開発しました。また、イタリック体や括弧なども追加収録し、見出し用書体としてより使いやすい秀英初号明朝をめざしました。

2010 年に発売した「秀英初号明朝Std」と、今回発売する「秀英初号明朝 撰」を組み合わせて使うことで、旧字と新字の両方を利用でき、より幅広い日本語表現が可能になります。
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『秀英初号明朝 撰 セン』の詳細は、大日本印刷、モリサワ両社のWebsiteをご覧ください。
また大日本印刷は秀英体開発室を中心に《第20回 東京国際ブックフェア》(2013年07月03日-06日、東京ビッグサイト西展示棟:ブースNo.6-50)に出展予定です。そちらでも最新の情報が入手できるはずです。
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《第20回 東京国際ブックフェア》
 会 期:2013年07月03日[水]-06日[土]
 会 場:東京ビッグサイト 西展示棟

 [講演会ミニ]
 「秀英体改刻の歩み いまだ止まず」
 と き:07月04日[木] 14:30-15:00
 ところ:大日本印刷株式会社 秀英体開発室 ブースNO.6-50
講 師 :秀英体平成の大改刻 監修者 片塩二朗
 
 続いて、下記ミニセミナーを開催いたします。 是非ご聴講ください。

 [秀英体開発室 グループリーダー 伊藤正樹 ミニセミナー]
 「『秀英体 平成の大改刻』における開発概要」
 と き:07月04日[木] 16:00-16:20
 ところ:大日本印刷株式会社 秀英体開発室 ブースNO.6-50
講 師 :秀英体開発室 グループリーダー 伊藤正樹

 同ブースの秀英体展示コーナーにて、近刊『100年目の書体づくり--「秀英体 平成の大改刻」の記録』(大日本印刷)の見本を展示予定です。お忙しいところ恐縮ですがご参加をお願いいたします。
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Typography Seminar 活字と書物 終了!


主 催 | 武蔵野美術大学 美術館・図書館 
日 時 | 5月30日[木] 16:30-18:30
         6月01日[土] 14:40-16:40
会  場| 武蔵野美術大学 美術館ホール
講  師| 片塩二朗 大石 薫
協  力| 株式会社 朗文堂 アダナプレス倶楽部

たくさんの皆さまのご協力をたまわり、無事にタイポグラフィ・ゼミナール《活字と書物》を終了できました。ご支援、ご協力にふかく感謝申しあげますとともに、ご来場いただきました皆さまにはあつく御礼を申しあげます。

最近ようやく各地で開催されるようになった図書展ですが、とかく表層をなぞり「書誌的解説」をみるだけなのを残念におもっておりました。
書物には著者の苦悩――多くは校正紙と改版にみられます。
製造者の逡巡と葛藤――活字書体の選択、活字サイズ、組版、紙面設計、印刷用紙、印刷方式、製本仕様など、造形者にとって貴重な付帯情報がギッシリとつまっています。

そういった「書物の背後にひそむもの」をご来場者に体験していただき、書物の背後に肉薄するきっかけを少しでも提供したいというおもいがありました。
そのために、わが国ではあまり知られていない「ジョバンニ・マーダシュタイクとオフィチナ・ボドニ」を紹介するとともに、その刊行書『アモーレ』(武蔵野美術大学所蔵)製作の実態を、金属活字組版とパソコンDTP方式によって追体験し、手引き印刷機時代の印刷法である「湿式印刷」をご体験いただくという盛りたくさんな企画でした。

《タイポグラフィ 2つの潮流展》は8月18日までの長期開催が予定されており、その間に関連イベントもたくさん開催されます。ご観覧をお勧めいたします。
《詳細:武蔵野美術大学美術館・図書館
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以下の写真は武蔵野美術大学図書館・美術館からご提供いただいたものです。




『普及版 欧文書体百花事典』新発売 !!

工芸・芸術・美術大学、
工芸・芸術・美術専門学校の教科書に、副読本に
情報関連教育機関、情報産業のオフィスに
そして、アルファベット活字をつかうすべてのかたのために
絶好かつ必備の、わが国における
「欧文活字書体」研究資料の定番書!


ご好評をいただいてまいりました
『欧文書体百花事典』を
 『普及版 欧文書体百花事典』として
装本と価格を変更して新発売。

・書 名    『普及版 欧文書体百花事典』
・編 集   組版工学研究会
・装 本  A4判 並製本 572ページ 図版多数
・発 売  2013年5月23日
・定 価  本体8,800円 + 税
       ISBN978-4-947613-87-5 C1070

※ 詳細は 朗文堂 book cosmique 新刊ページ をご覧ください。

【展覧会】クリムト 黄金の騎士をめぐる物語り

グスタフ・クリムト生誕150年記念 クリムト 黄金の騎士をめぐる物語

 
【展示解説 ──────── 同展フライヤーより】
ウィーンの19世紀末芸術を代表する画家、グスタフ・クリムト(1862-1918)。
その甘美で装飾的なスタイルは、今なお多くの人々を魅了し続けています。その一方でクリムトは、当時のウィーンの旧弊な美術界に立ち向かい、自ら結成の中心となった「ウィーン分離派 SECESSION」のメンバーとともに、自由で新しい芸術の創出に尽力しました。

本展のタイトルにもなっている「黄金の騎士」は、「理想を求めて闘うクリムト自身」を象徴するイメージとして知られており、また、多くの謎を秘めた作品でもあります。
今回は、この「黄金の騎士」にまつわる物語をひもときながら、国内外のコレクションから精選された油彩、デッサン、版画、ポスター、書籍、雑誌、家具、美術工芸品、ジュエリー、写真などによって、クリムト芸術と世紀末ウィーンの諸相を紹介します。

《グスタフ・クリムト生誕150年記念 クリムト 黄金の騎士をめぐる物語展》

【会  場】
宇都宮美術館 
【会  期】
2013年4月21日[日]-2013年6月2日[日]
【開館時間】
午前9時30分-午後5時(入館は午後4時30分まで)
【休 館 日】
毎週月曜日(祝日の場合は開館して翌日休館)、祝日の翌日
【観 覧 料】
一般 1,000円
【詳  細】
宇都宮美術館 Website:http://u-moa.jp/exhibition/exhibition.html

★ 好評開催中の《グスタフ・クリムト生誕150年記念 クリムト 黄金の騎士をめぐる物語展》も会期末が迫ってまいりました。ご観覧をお勧めいたします。同展観覧記は近日中に「タイポグラフィ・ブログロール 花筏」に掲載予定です。

Typography Seminar 活字と書物


「タイポグラフィ 2つの潮流展」に出品されている書物『Amores』(邦題:愛の詩ウタ、ジョバンニ・マーダシュタイク製作、オフィチナ・ボドニ、伊、1932)を中心に、書物の製作背景を、使用活字書体、活字サイズ、組版設計、印刷用紙、製本様式などの側面から立体的に解析し、その活字組版(金属活字版方式、DTP方式)を追試し、実際の活版印刷で追体験するタイポグラフィ・ゼミナールです。


これらの書物にまつわるエピソードや、タイポグラフィの解析と実践的な見かたを知ることにより、展覧会に出品されているたくさんの書物の楽しみや収穫が、2倍にも3倍にもなる画期的なゼミナールとなります。
あわせて、『Amores』の1ページを再現した活字組版を、武蔵野美術大学所有の手動式の活字版印刷機 Adana-21J で印刷する体験ができます。
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参加費は無料ですが、実践型ゼミナールのため定員は20名と少数です。お申込みは下記の武蔵野美術大学美術館担当者様まで、急いでお申込みください。
[2013年05月20日 武蔵野美術大学美術館URLに満員告知がありました]


主 催 | 武蔵野美術大学 美術館・図書館 
日 時 | 5月30日[木] 16:30-18:30(終了予定)
         6月01日[土] 14:40-16:40(終了予定)
会  場| 武蔵野美術大学 美術館ホール
講  師| 片塩二朗 大石 薫
協  力| 株式会社 朗文堂 アダナプレス倶楽部
参加費| 無 料

参加方法|参加希望日・住所・氏名・電話番号・メールアドレス・年齢・武蔵野美術大学学生の場合は学科/学年を明記の上、下記アドレスへお申し込み下さい。
なお、メールの件名は【タイポグラフィゼミナール参加申し込み】としてください。
当館より5月27日[月]17:00までに確認のメールをお送りします。

申込・問い合わせ|武蔵野美術大学 美術館・図書館 美術資料担当(植松・河野) ml_event@musabi.ac.jp
Telephone  042-342-6003

詳細情報:武蔵野美術大学 美術館・図書館 展覧会情報

【展覧会】武蔵野美術大学 タイポグラフィ 2つの潮流


タイポグラフィ 2つの潮流

Two Streams of Typography

会 期 |  2013年5月20日[月]-8月18日[日]
休館日|  毎週 日曜日
           (6/9[日]、7/15[祝]、8/18[日]は 特別開館日)
時 間 |    10:00-18:00(土曜、特別開館日は 17:00 閉館)
入館料|  無 料
会 場 |  武蔵野美術大学美術館 展示室 3
主 催 |  武蔵野美術大学 美術館・図書館
共 催 |  武蔵野美術大学 造形研究センター
監 修 |  新島 実 (視覚伝達デザイン学科教授)
共同監修|寺山祐策(視覚伝達デザイン学科教授)
          白井敬尚(視覚伝達デザイン学科教授)

詳細:武蔵野美術大学 美術館・図書館 展覧会情報

武蔵野美術大学図書館所蔵の貴重書・雑誌・ポスターコレクションから、主にイギリス、アメリカ、フランス、ドイツ、オランダ、スイスにおける20世紀欧文タイポグラフィの、国際様式と伝統様式を俯瞰する。

【展覧会概要 ── 同展フライヤーより】

このたび、武蔵野美術大学 美術館・図書館では「タイポグラフィ 2つの潮流」展を開催いたします。
本展は、19世紀末から20世紀後半にかけて、欧米で出版された美しい書物等を一堂に会して、ヨーロッパ及び米国における「伝統様式のタイポグラフィ」「国際様式のタイポグラフィ」の2つの流れを同時に俯瞰し、550年以上にわたり人々を引きつけて止まないタイポグラフィの魅力を探る試みです。

19世紀後半、ウィリアム・モリスが求めた「美しい書物」制作への試みの原点は、15世紀のインキュナビュラへの眼差しをその基本とし、当時の書物を丁寧に分析することから始められました。
そしてこのモリスの眼差しはその後のプライベート・プレス運動へ大きな影響を与え、20世紀のタイポグラフィ、とりわけ書物制作の一潮流として格調高い伝統様式美を復興させました。
さらにこの美しい書物制作への態度は、スタンリー・モリスンやヤン・チヒョルトによって一般化され、現在に至っています。

一方で、新たなタイポグラフィの転換は19世紀末のアール・ヌーヴォー(ユーゲント・シュティール)に端を発し、20世紀初頭のイタリア未来派、ロシア・アヴァンギャルド、デ・スティルそしてドイツのバウハウスなど、ヨーロッパ全土にまで連鎖的な拡がりを見せた革新的芸術運動の影響のもと、エル・リシツキーやバウハウスでのモホリ・ナジ等のタイポグラフィの革新運動にその萌芽を見ることが出来ます。
この新たな転換はその後、ドイツとスイスで国際様式と呼ばれるタイポグラフィデザイン形式を生み出し、印刷紙面に新しい空間構成と意味生成の土壌を形成することに繋がっていきます。

本展では武蔵野美術大学図書館所蔵のタイポグラフィ・コレクション、ポスター・コレクションと合わせて、貴重書の中からイギリスのプライベート・プレスによる書物をはじめ、フランスやドイツで出版された豪華本、画集、挿絵本、聖書などの優れたブックデザインなど250点を取り上げ、それらを同時に展示することによって、視覚造形言語としてのタイポグラフィの今日的な役割と発展を見つめ直す契機にしたいと思います。

アダナプレス倶楽部 Website リニューアル !



 《アダナプレス倶楽部 Website リニューアル》
朗文堂の活版印刷事業部門、アダナプレス倶楽部が発足したのは2006年秋のことでした。当時は活版印刷の基盤が脆弱で、崩壊の危機すらささやかれるほどの、逆風がふきつのる時代のなかでのスタートでした。ですから当初から、朗文堂単独ではなくて、お客さまとの双方向の情報交換をめざして、「アダナプレス倶楽部」と命名してのスタートでした。

発足当時は朗文堂の Website からの情報発信が中心でしたが、アダナプレス倶楽部では積極的に、21世紀をむかえて、世界でもはじめての活版印刷機製造にとり組み、その設計・試作機製造をへて、小型活字版印刷機 Adana-21J の完成を2007年04月にみることができました。
そのために、朗文堂本体とはいくぶん性格がことなり、双方向の情報交換の場として、アダナプレス倶楽部独自の Website をもうけたのは2007年04月のことでした。

アダナプレス倶楽部 Website の立ち上げには、増住一郎さんの積極的なご協力をいただきました。その維持・拡張には、廣瀬玲哉さん、真田幸治さん、守友彩子さんらの皆さんに、ことばではいいつくせない、おおきなご協力をいただきました。
また朗文堂の歴代のスタッフも日常的なメンテナンスにあたってきました。それぞれの皆さんに、ここに深甚なる謝意をしるします。

2013年05月01日、朗文堂 アダナプレス倶楽部 Website は、大幅なリニューアルを実施しました。今回の担当は、新宿私塾第20期修了生で、活版カレッジでタイポグラフィの実技・実践をまなんできた北美和子さんにお願いしました。 
アダナプレス倶楽部の基調色「ブリティッシュ・グリーン」を中心に、朗文堂 Website との架け橋として「黄色-赤」の朗文堂基調色のバーナーをたくさんつけてのスタートとなりました。
皆さまの積極的なご訪問をお待ち申しあげます。

《アダナプレス倶楽部 ニュース No.001  再録》
リニューアルにともない、さまざまな問題点とともに、埋もれていた懐かしくも貴重な資料が、いくつも「発見」されました。そのひとつ、「アダナプレス倶楽部 ニュース No.001 Adana-21J の誕生おめでとう!」をここに再録いたします。

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ニュース No.001 【アダナ・プレス倶楽部便り】


アダナ印刷機「 Adana-21J 」の誕生、おめでとう ! 

吉田市郎 元・晃文堂/元リョービイマジクス株式会社 代表取締役

Adana-21J 試作機特別内覧会   期間:2006 年 10 月 27 日 – 29 日

吉田市郎

このたび、朗文堂/アダナプレス倶楽部から小型活版印刷機「 Adana – 21J 」が誕生されるとうかがい、大変嬉しく存じます。

ふるい話しになりますが、株式会社晃文堂の時代に「アマチュア用活版印刷機 ADANA3×5, ADANA5×8 」の 2 機種を輸入販売いたしました。当時のわが国では活版印刷はとても盛んでしたが、敗戦直後とあって国家そのものに蓄えがなく、外貨の為替管理がきわめて厳しくて、海外からの物資の輸入には様々な困難がありました。幸い多くのユーザーの皆さまを得て、アダナ印刷機はご好評をいただきましたが、その後イギリスのメーカーが製造を中断し、また活版印刷全般も衰勢をみせるようになって、アダナ印刷機の代理販売業務からは撤退いたしました。従いまして、多くのユーザーの皆さまには、不本意ながらご迷惑をおかけすることになったことにたいして内心忸怩たるものがありました。

それが今般、長年ご厚誼をいただいている朗文堂さんの新事業部門、アダナプレス倶楽部によって、新設計による国産活版印刷機「 Adana-21J 」が誕生するとうかがい、大変嬉しく思っております。

おそらく活版印刷と鋳造活字には、まだまだ寒風が押し寄せるでしょうが、それにめげず、創意と挑戦の意欲を持って、これからの開発・販売にあたって頂きたいと存じます。「 Adana-21J 」の試作機のご発表、おめでとうございます。

吉田市郎

吉田市郎

吉田市郎さん。
1921年(大正10)1月28日、新潟県柏崎市うまれ。名古屋高等商業学校(現 名古屋大学経済学部)卒。卒業後三井物産に勤務したが、まもなく召集されて軍務につく。
1945年(昭和20)召集解除後、明和印刷をへて、1947年(昭和22)活字商として独立し、欧文・和文活字鋳造販売、活版印刷関連機器製造販売を中心とする株式会社晃文堂を設立して代表取締役に就任。

1970年代にリョービと提携して総合印刷機器製造販売業、株式会社リョービ印刷機販売(のちの株式会社リョービイマジクス)を設立して代表取締役に就任。
朗文堂ならびに堂主・片塩二朗にとっては、中学生時代からとてもお世話になったきた大恩のあるかたです。
欧文・和文の金属活字製造販売からスタートして、写真植字機器、写植活字の開発、電子活字の黎明期においても大胆な挑戦を重ねてこられました。
その歴史的背景に関しては、実体験にもとづく該博な蓄積があり、それをかたらせたら、この方の右にでるひとはどこにもいません。

【展覧会】間村俊一 版下ガラパゴス

 

【展覧会】  間村俊一 版下ガラパゴス
【会 場】  ウィリアム モリス  珈琲&ギャラリー
          会場案内図:こちら
【期 間】   2013年05月01日―05月31日
        12:30-18:30 日・月・祝日と第3水曜日は休業
※昨今絶滅危惧種に指定された版下原稿を完成した書物とともに展示します。
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卯の月 4月がおわり、きょうから五月サツキです。
皆さまご健勝で、GWを楽しみ、お仕事にいそしまれておられることと存じます。
朗文堂では例年この時期には《活版凸凹フェスタ》を開催してまいりましたが、ことしは7月に移行した《Viva la 活版 Viva 美唄》の開催準備で、その作品づくりと、タイポグラフィ・ゼミナール資料整備のために、結局連休はふきとんでしまいました。

【おぼろ月 と 穀雨 コクウ】
春の終わりのころに、穀物をうるおす春の雨を「穀雨」といいます。またこの季節の終わりには八十八夜もおとづれます。雨上がりの日には、みごとなおぼろ月もみられますが、なにかと雨の多い季節です。




ことしは「爆弾低気圧」などと呼ばれて、かなり暴れていましたが、じつは「穀雨」の名がしめすように、春の雨は作物にとっては恵みの雨です。ですからこの時期の雨には、さまざまな名前がつけられています。

穀物をはぐくむ雨を「瑞雨 ズイウ」といい、春の艸木をうるおす雨を「甘雨 カンウ」といいます。春の長雨は「春霖シュンリン」、はやく咲いてちょうだい……と開花をうながす「催花雨 サイカウ」、菜の花の咲くころに降る「菜種梅雨」、そしてながく降りすぎて、うつぎの花が腐ってしまうことをあんずる「卯の花くずし」などの情緒ゆたかな名称があります。


装本家にして俳人/間村俊一氏は、展覧会に際して一句ものしています。

    初夏の 版下あはれ 書物果つ

「版下」とは、写真製版を前提とした製版工程の前作業のことで、写植活字文字組版、レタリング、図表などを厚手の台紙に貼っていたものを指します。
この「版下」ということばは、使用期間が短かったので、英語もさまざまで定着せずに、Comprehensive, Comp., Block Copy,  Camera-ready Copy などと様様に呼ばれていました。
わが国でも「関西では はんじた」と濁り、「関東では はんした」と清音がふつうでした。周囲の絶滅危惧種の年配者 !? に聞いてみたらおもしろいかもしれません。

関東と関西の距離感がなくなり、ことばもほとんどが共通語になりましたが、意外に印刷界に頑固にのこっていることば(業界用語)が、パッケージ製作などにおける型抜きの「トムソン抜き、ビク抜き」のようです。
こうした違いをもたらした原因は、輸入代理店のちがいから、「関西ではThompson社製の機械がもちいられたことが多く、その作業をトムソン抜きと業界用語で呼んだ」。いっぽう、「関東ではVictoria社製の機械がもちいられたことが多く、その作業をビク抜きと業界用語で呼んだ」とする説が有力です。

間村俊一さんは、ご自身のことをあまりお書きになりません。ですから「版下 を はんじた、はんした」のどちらで呼ばれているか、「トムソン抜き/ビク抜き」のどちらをもちいているかは、わかりません。その「版下」の名前はともかく、絶滅危惧種!?「版下製作」に従事したかたは、もう45-50歳以上になったようです。

ところで手狭な小社には、マップケースいっぱいの「版下」が、捨てるに捨てられずにたくさんあります。そして印刷工場には、保管を依頼している製版フィルム(ポジフィルム)が山積みで、もっと歴史のある活版印刷工場には「紙型 Paper mold,  Paper matrix」が山をなしています。

ある印刷工場主がこぼしました……。
「毎年 年末に、紙型とポジフィルムの処分許可を出版社に文書でもうしでているんだけど、わかい担当編集が、紙型? ポジフィルム? よく分からないのでそのまま保存してください」
中堅老舗印刷工場といえる同社には、床面積でいったら、ほんとうにテニスコート一面分ほどの「紙型・フィルム」がうずたかく積まれ、ほとんど出番のないままに眠っています。
印刷設計士(グラフィックデザナー)、編集者などが、印刷の現場を訪問しなくなって久しいものがあります。
間村さん、あはれなのは「版下」だけでは無いようですよ。

春爛漫の4月、朗文堂もあたらしい態勢にはいります。第一弾、書道博物館 ギャラリーツアー+掃苔会のお知らせ

 風薫る春、櫻花爛漫の春になりました。いよいよ卯の月、4月のはじまりです。
皆さまお元気で、あたらしい年度をお迎えのことと存じます。
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例年3月は「年度末進行」とされて、印刷・製本・出版界では慌ただしい月となりますが、ことしは人員削減がすすんだせいもあって、製本所が大混雑となって、その余波はまだ解消されたとはいえない状況にあります。

ところできょうは4月1日、エイプリル・フールとされる日です。この日は直訳で「四月馬鹿」とされた時代もありましたが、いつの間にか「四月馬鹿」はあまり使われない訳語となったようです。ことばとは時代とともにあり、いきていますね。

ことしはどんなウィットにとんだ「エイプリル・フール」が世界でかわされるのか、楽しみではあります。
 
朗文堂も4月をむかえて、いよいよ《新宿私塾》《活版カレッジ》が始動します。
また新版による増刷図書も大詰めをむかえており、近近ご案内の予定です。
最初のご案内は、親しくおつき合いさせていただいている書道博物館の意欲的な企画とあわせて、印刷人掃苔会を開催のお知らせです。
この国の近代印刷の開拓者の歴史をたどる、とても意義深いツアーとなります。
皆さまのご参加をおまちしております。



現在、書道博物館で開催中の「唐時代の書、徹底解剖 !!」展には、上掲の「則天武后時代(在位690-705)の写経残巻」がはじめて公開されます(期間限定)。
そこで朗文堂では書道博物館にお願いして、同館学芸員による特別ギャラリートーク+掃苔会を開催いたします。人数は同館の都合で20名限定となります。

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◉  書道博物館ギャラリーツアー+印刷人 掃苔会ソウタイカイ
【開催日時】2013年04月14日[日] 13:00
         (開始5分前にロビー集合してください)
【集合場所】書道博物館 1Fロビー(台東区根岸2丁目10番4号)
http://www.taitocity.net/taito/shodou/shodou_guide/shodou_guide1.html
【参加費用】入場料(500円 各自同館受付にお支払いください )
【掃 苔 会】 書道博物館ギャラリートーク終了後に一旦解散とします。
谷中霊園中心の掃苔会ソウタイカイへは自由参加・無料ですが、バッカス松尾特製『掃苔会の栞  苔の雫』(500円を予定)を用意します。
そこそこの距離をあるきますので、歩きやすい履き物でご参加ください。
【小雨決行】雨男のバッカス松尾さんが案内役ですからとても心配ですが、晴男片塩も同行しますので、お天気は引き分け(小雨 ? )の予定です。
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参加ご希望の方は04月05日までに @メール adana@robundo.com にご連絡ください。掃苔会には定員は設けませんが『掃苔会の栞  苔の雫』の準備の都合もありますので、かならず「件名:ギャラリーツアー申込み」あるいは「件名:ギャラリーツアー+そうたい会申込み」としてご一報ください。

なお、則天武后と則天文字の詳細については、以下の朗文堂ニュースをご参照ください。



書道博物館 企画展 中村不折コレクション
唐時代の書、徹底解剖 !!

【開催場所】  台東区立 書道博物館
          110-0003 東京都台東区根岸2-10-4
          Telephone  03-3872-2645 
          URL : http://www.taitocity.net/taito/shodou/
【開催日時】  2013年03月12日-06月16日
          9:30-16:30(入館は16:00まで)
【休   館 日】  毎週月曜日
          (展示替えのため04月30日、05月07日は休館)
          連休中の04月29日、05月06日は開館
          会期中の展示作品の入れ替えにご注意ください。
【観  覧 料】  一般:500円、小中高生:250円
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[この部分は、書道博物館フライヤーの一部に加筆してご紹介します]
唐の時代(618-907)とは、中国の歴史上、王羲之オウギシらが活躍した東晋トウシン時代(265-420)とともに、「書」がもっともたかい水準に達した時代です。
唐時代の書の特質は、従来からつちかわれてきた書法を、たれにでもわかりやすく法則化した点にあります。とりわけ唐時代の楷書は、理知的な審美眼によって、非のうちどころのない字姿として完成されました。

初唐の三大家、欧陽 詢(オウヨウ ジュン、557-641)、虞 世南(グセイナン、558-638)、褚 遂良(チョスイリョウ、596-658)によって確立された美しい楷書は、いまも多くのひとたちによって学ばれつづけています。
その潮流は顔真卿(ガンシンケイ、709-85)に受けつがれ、「顔法 ガンポウ」とよばれる表情豊かな楷書がつくりだされました。

唐の歴代皇帝は、事実上の建朝者・李世明(高祖・李 淵の次子、唐朝第2代皇帝・太宗、在位626-49、598-649)に倣って、王羲之の書をおもくみましたから、次第に中国全土にわたって、王羲之の書風にもとづいた、格調の高い書風がひろく浸透しました。

すなわち皇帝・李世明をはじめとして、孫 過庭(ソン カテイ、648-703 ?)や、李邕(リ ヨウ、678-747)らは、王羲之の書法にもとづき、洗練された書法をよくしました。
また、伝統的な書法から逸脱した美しさを創出した懐素(カイソ、僧侶、725-85 ?)らも、異彩をはなつ名品をのこしています。

今回の「唐時代の書、徹底解剖 !!」では、唐の四大書家とされる、欧陽 詢、虞 世南、褚 遂良、顔 真卿をはじめ、唐の太宗皇帝・李 世明、孫 過庭、柳 公権、懐素など、唐時代を代表する書の名品と、唐時代の貴重な肉筆資料である『則天武后時写経残巻』(初公開、期間限定:03月12日-04月14日)、『敦煌トンコウ写経』などの貴重な書墨や拓本が、中村不折フセツ コレクションから紹介されます。

第14回活版ルネサンスフェア開催のお知らせ

たくさんの皆さまをお迎えして無事終了いたしました。
ご来場たまわりました皆さま、ありがとうございました。
活版ルネサンスの歩みが、着実に進行していることを
とても嬉しくおもえる2日間でした。
秋季に再度《活版ルネサンスフェア》を開催の予定ですが
その間、活版印刷関連機器、資材などに関しましては
ご遠慮無く  朗文堂 アダナプレス倶楽部までご相談ください。

と き * 2013年03月29日[金] 30日[土] 13:30―19:00
ところ * 朗文堂4F-B
160-0022  新宿区新宿2-4-9 中江ビル4F
Telephone : 03-3352-5070
[ご案内マップ]

アダナ・プレス倶楽部の会員と、活版ファンの皆さまを対象とした
新品・中古品のカッパン関連機材・資材の展示即売会です。
手狭な会場ながら、貴重アイテム、マニアックな商品が溢れています!
創作の春に向けて、このチャンスをぜひともお役立てください。
[東京都公安委員会許可 第304380708865号] 

アダナ・プレス倶楽部が製造・販売している新品のカッパン印刷関連機器、独自企画開発商品はもとより、カッパン印刷所で長年の使用に耐えてきた優秀な中古品もドッサリ用意いたしました。
これらは現在では生産中止となったカッパン関連機器や、個人では入手しにくい活版専用インキなどの器材・資材を含みます。

カッパン印刷のサポーターとして、アダナ・プレス倶楽部ならではの、懇切丁寧な使用方法の解説もいたしますので、狭い会場いっぱいに、魅力溢れる展示販売会となります。
春の創作シーズン、展覧会シーズンの到来に合わせて、創作に活用できそうな機材の補充、実制作での疑問解決・技術の向上に、どうぞこの「活版ルネサンス フェア」をご利用ください。
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《今回の主なご紹介アイテム  順不同》
小型活版印刷機 Adana-21J/新開発 圧盤用ラバー・クッション胴張りセット/KMT全自動活字組版機(日本語モノタイプ)活字母型庫8pt, 9pt, 10pt明朝体/活版専用ピンセット新旧/ジャッキとジャッキハンドル新旧/罫線各種/くじら尺/特製組みつけ台/金属インテル各種/活版用強力磁石/特製組版ステッキ、中古組版ステッキ/ファニチュア各種/工具類(ブレース鋏・鳥居鋏・罫切り鋏)/罫切り器/各サイズ込め物セット/活字倍数尺/特製ムラ取りハンマー&ならし木セット/ブロッキング防止パウダー/特白ウェス/無臭洗い油/インキ・ハンド・ローラー/インキべら/インキ・パッド/ゴム・ローラー・メンテナンス剤/オイルベース活版用インキ各色(1キロ缶、特製200グラム缶)/活版用墨青口インキ/ラバー・ベース・レタープレス用インキ/版画用メタルベース(高さ19.68ミリ、高さ19.70ミリ)/樹脂版用メタルベース(高さ21.89ミリ、高さ23.39ミリ)/特製五号サイズメタルベース箱入りセット/特製カタ仮名活字アラタ1209/輸入欧文活字スキームセット/輸入オーナメント活字各種/凸版用スプレーボンド/特製文選箱/中古文選箱各種/文選箱ストッパー/セッテン/特製文選箱立て/特製ミニ組みゲラ/中古組みゲラ/特製ミニ置きゲラ/中古置きゲラ/特製ミニスダレケース棚/活字サイズ照合キットなど。

販売アイテムの一例 ──
アダナ・プレス倶楽部特製 五号サイズ基本メタルベース箱入りセット

その他掘り出しもの、在庫限りの貴重アイテムがどっさり。
皆さま、友人・知人と誘いあわせてのご来場をお待ちしております。

【展覧会】空想の建築-ピラネージから野又穫 町田国際版画美術館


空想の建築
── ピラネージから野又 穫へ ── 展 
Imaginary Architecture from Piranesi to Minoru Nomata

【主催・会場】 町田市立国際版画美術館
【会期・時間】 2013年04月13日[土]-06月16日[日]
         月曜休館。4月30日、5月7日は休館
         平日:10:00-17:00 
         土・日・祝日:10:00-17:30
【観   覧   料】 一般 800円

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[国際版画美術館のフライヤーに、一部補筆して紹介します]
この世には存在しない建築を空想すること ── それはわたしたちが、いま現在存在している世界とは別の世界を空想し、その世界にかたちをあたえることかもしれません。
そうであれば、空想の建築群とは、人間のイマジネーションと、想像力を駆使してうみだされる、もうひとつの世界〈アナザーワールド〉への入口といえるでしょう。

本展では、ヨーロッパのふるい版画から現代美術へ、時空をも飛びこえる〈空想の建築群〉を展示して、世界を空想の建築というかたちで、目にみえるようにしようとした人びとの系譜を紹介します。

はるか古代ローマにおもいを馳せ、その壮麗さを銅販画によって結実させたジョバンニ・バッティスタ・ピラネージ(Giovanni Battista Piranesi  1720-78)をはじめとして、18世紀世紀末の画家たちから、現代の美術家まで── 絵画や立体、そして版画など、変化に富んだおよそ180点の作品を展示することによって、見るものをはるかな世界へといざなう展覧会です。

また本展開催とあわせ、特別展示として、出品作家のひとり、野又  穫(ノマタ ミノル  1955- )のドローイング展『ELEMENTS──あちら、こちら、かけら』を開催いたします。あわせてご観覧ください。
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[以下:片塩二朗 wrote]
ジョバンニ・バッティスタ・ピラネージ
     (Giovanni Battista Piranesi  1720-78) 
ピラネージは、本来は建築家でしたが、実際に完成した建築は「サンタ・マリア・デル・プリオラート聖堂」ほか数点にとどまり、こんにちピラネージは銅版画作家であり、出版人として知られています。

写真術がまだ登場していない18世紀にあって、ピラネージの精細で正確無比な エッチングによる銅版画 は、絵画とは異なり、一定の数量を複製(印刷)できましたから、当時では驚異的なものでした。

その影響はひろく欧州全域にわたって、ギリシャ、古代ローマなどの建築を「銅版印刷という複製芸術」によって、ひとびとの眼前に、あたかも実際の建築をみるおもいがするまでの完成度をもって迫り、圧倒的な人気を博しました。
ピラネージは、建築を銅版という印刷版の上に、エッチング技法によって画像を刻み、銅版印刷(凹版印刷の一種)によって、ゆたかな創造の成果を実現した「建築家」であり、「銅版画家」でもありました。
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小社の周辺でも、建築界から印刷人へ、あるいは建築設計士から印刷設計士(グラフィックデザイナー)に転換されたかたも多くおられます。
またその転換の過程で、新宿私塾や活版カレッジでまなぶかたも少なくない現代です。凹版印刷も、凸版印刷も、あるいは書物づくりも、立体的構造物である建築と通底するものがあるようです。

畏兄「無想庵主人」のWebsite『無想庵乃書窓』には、ピラネージの略歴と、豊富な図版が紹介されています。ぜひこちらをご覧いただき、町田国際版画美術館に足を運んでいただきたいと存じます。
【リンク:無為庵乃書窓 ジョバンニ・バッティスタ・ピラネージ 略歴、画像集】

「本の知と美の領域 vol.2 ー 森山明子の仕事」展のご案内

第693回 デザインギャラリー1953 企画展
「本の知と美の領域 vol.2 - 森山明子の仕事」
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  • タイトル:第693回 デザインギャラリー1953 企画展
                「本の知と美の領域 vol.2 - 森山明子の仕事」
  • 会 期:2013年3月20日(水)-2013年4月15日(月)
         最終日午後5時閉場
         入場無料
  • 会 場:松屋銀座7階・デザインギャラリー1953
  • 主 催:日本デザインコミッティー
  • 協 力:山田脩二、白井敬尚
  • 企画・会場構成:平野敬子

この度、日本デザインコミッティーでは、第693回デザインギャラリー1953企画展といたしまして、デザインジャーナリスト・森山明子の仕事を紹介する展覧会「本の知と美の領域vol.2 – 森山明子の仕事」を開催いたします。

森山明子は、デザイン雑誌「日経デザイン」の創刊に携わり、以降、デザインをジャーナリストの立場から 俯瞰して見続けてきました。
その長年に亘る活動の中で、森山は多くのクリエーターとの接点を持ち、彼らの活動や仕事を編集して世に送り出すという仕事に近年、力を注いています。

独自の視点によるクリエーターへの入念なインタビューは、そのクリエーターの内面を透かし見ることが出来るほど精緻に編まれる書籍作りへと繋がっています。
本企画展では、そうした仕事の中から、前衛いけばな作家・中川幸夫、写真家・石元泰博、そしてテキスタイルプランナー・新井淳一の、3人のクリエーターの仕事をまとめた書籍を中心に、森山明子の世界をご紹介したいと思います。

[森山明子さんの略歴]
Moriyama Akiko/デザインジャーナリスト、武蔵野美術大学教授
1953年新潟県生まれ。1975年東京芸術大学美術学部芸術学科卒業。特許庁意匠課審査官、財団法人国際デザイン交流協会勤務をへて、1986年日経マグロウヒル社(現・日経BP社)入社。「日経デザイン」の創刊にかかわり、1993-98年同誌編集長。1998年から現職、デザイン情報学科所属。
NHKハート展詩選考委員、グッドデザイン賞審査副委員長、芸術工学会副会長・名誉理事、公益財団法人三宅一生デザイン文化財団理事、公益財団法人日本デザイン振興会理事などをつとめる。
主著は『まっしぐらの花 - 中川幸夫』、『石元泰博 - 写真という思考』、『新井淳一 - 布・万華鏡』。
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森山明子さんは、朗文堂とも、長年にわたって、とても親しくおつき合いさせていただいているかたです、そんな森山さんの近著をまとめた意欲的な展覧会が開催されます。皆さまのご観覧をお勧めいたします(片塩二朗)。
【詳細:日本デザインコミッティー デザインギャラリー1953】

これは実際に書かれていたひとつの「字」です。なんと読みますか ? 回答はタイポグラフィ・ブログロール『花筏』で、のんびりアップ。

上記の「字 ≒ 文字」は、ひとつの「字」です。
漢の字(漢字)というより、国字(わが国でつくられた漢風の字)、もしかしたら個人の創意、あるいはわずかなテライ、もしくは軽い諧謔ユーモアをこめてつくられた「字」かもしれません。
図版でおわかりのように、上部に「毎」をおいて、下部に「水」をおき、ひとつの「字」としたものです。

やっかいなことに、この「字」は、わが国の歴史上で実際に書きしるされており、国宝とされる複数の貴重な文書の上に、なんども登場していて、一部の「集団」からは、いまもとてもおもくみられている「字」です。
ですから簡単に「俗字」「異体字」として片付けるわけにもいかず、原典文書の正確な引用をこころがける歴史学者などは、ほかの字に置きかえられることをいやがります。

1970年代の後半だったでしょうか、まだ写研が開発した簡易文字盤製造「四葉」セットもなかったころのことです。展覧会図録として、この「字」をふくんだ文書の組版依頼がありました。
当時は原始的というか、当意即妙というのか、原字版下を作成して、ネガフィルムをおこし、ガラス板にはさんで写真植字法で組版するという、簡便な方法で対処したことがありました。もう40年ほど前のこととて、その資料も、使用例も手もとにはありません。

もちろん現代の文字組版システムは汎用性にすぐれており、こうした「特殊な字」は、アウトラインをかけるなどして「画像」とすればいいということはわかります。それでも学術論文までもが Website で発表されるという時代にあって、やはりなにかと困った「字」ではあります。
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先まわりするようですが、デジタル世代のかたが愛用するパソコン上の「文字パレット」や「手書き文字入力」ではでてきません(わたしのばあいは ATOK ですが)。
ちなみにこの「字」のふつうの字体は、人名・常用漢字で、JISでは第一水準の「字」であり、教育漢字としては小学校二年に配当されている、ごくあたりまえの「字」です。

また、一部のかたが漢の字の資料としておもくみる『康煕字典』では、「毎」は部首「母部」で「辰集下 五十七丁」からはじまり、「水」は部首「水部・氵部」で「巳集上 一丁」からはじまります。為念。

現代中国で評価がたかい字書のひとつ『漢語大詞典』(上海辞書出版社)もありますね。これらのおおがかりな資料にもこの「字」は見あたりません。
また、わが国のふつうの『漢和辞書』とされるものは、なんらかの中国資料の読みかえがほとんどですから、当然でてきません。
これらの資料には「標題字」としては、上掲の「字」は掲載されていないようです。もしかして、万がいつ、応用例としてでも、ちいさく紹介があったらごめんなさいです。
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とかく「漢字」「文字」というと、ほんの一部のかたのようですが、妙にエキセントリックになるふうがみられるのは残念です。
ここではやわらか頭で、トンチをはたらかせて、
「なぁ~んだ、つまらない」。「ナンダョ、簡単じゃないか」
とわらってください。
そしてこの「字」をつくりだした、天性のエンターティナーに、おもいをはせてください。
「回答」というほどのものではありませんが、お答えは タイポグラフィ・ブログロール《花筏》にのんびりとしるしていくつもりです。 
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やよい三月です。あちこちから梅だよりをいただきますし、ことしの《Viva la 活版 Viva 美唄》の開催予定地、北海道の美唄では、例年にない豪雪だそうです。
また3月は企業や官庁では異動の月です。学生の皆さんは、入学・進級・卒業と、あわただしい毎日でしょうか。
また、この時期は、印刷・出版業界ではふるくから「年度末進行」とされて、繁忙期です。小社、小生も、ひとなみにあわただしい毎日です。
そしてきょうは3月11日、2年前のあの大惨禍がおそった日でもあります。
さまざまなおもいを抱えながら、頭をやわらかくするために、一筆啓上つかまつり候。

【展覧会情報】書道博物館『唐時代の書、徹底解剖!!』。+則天武后と則天文字。

 

書道博物館 企画展 中村不折コレクション
唐時代の書、徹底解剖 !!

【開催場所】  台東区立 書道博物館
          110-0003 東京都台東区根岸2-10-4
          Telephone  03-3872-2645 
          URL : http://www.taitocity.net/taito/shodou/
【開催日時】  2013年03月12日-06月16日
          9:30-16:30(入館は16:00まで)
【休   館 日】  毎週月曜日
          (展示替えのため04月30日、05月07日は休館)
          連休中の04月29日、05月06日は開館
          会期中の展示作品の入れ替えにご注意ください。
【観  覧 料】  一般:500円、小中高生:250円

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[この部分は、書道博物館フライヤーの一部に加筆してご紹介します]
唐の時代(618-907)とは、中国の歴史上、王羲之オウギシらが活躍した東晋トウシン時代(265-420)とともに、「書」がもっともたかい水準に達した時代です。
唐時代の書の特質は、従来からつちかわれてきた書法を、たれにでもわかりやすく法則化した点にあります。とりわけ唐時代の楷書は、理知的な審美眼によって、非のうちどころのない字姿として完成されました。

初唐の三大家、欧陽 詢(オウヨウジュン、557-641)、虞 世南(グセイナン、558-638)、褚 遂良(チョスイリョウ、596-658)によって確立された美しい楷書は、いまも多くのひとたちによって学ばれつづけています。
その潮流は顔真卿(ガンシンケイ、709-85)に受けつがれ、「顔法 ガンポウ」とよばれる表情豊かな楷書がつくりだされました。

唐の歴代皇帝は、事実上の建朝者・李世明(高祖・李 淵の次子、唐朝第2代皇帝・太宗、在位626-49、598-649)に倣って、王羲之の書をおもくみましたから、次第に中国全土にわたって、王羲之の書風にもとづいた、格調の高い書風がひろく浸透しました。

すなわち皇帝・李世明をはじめとして、孫 過庭(ソン カテイ、648-703 ?)や、李邕(リ ヨウ、678-747)らは、王羲之の書法にもとづき、洗練された書法をよくしました。
また、伝統的な書法から逸脱した美しさを創出した懐素(カイソ、僧侶、725-85 ?)らも、異彩をはなつ名品をのこしています。

今回の「唐時代の書、徹底解剖 !!」では、唐の四大書家とされる、欧陽 詢、虞 世南、褚 遂良、顔 真卿をはじめ、唐の太宗皇帝・李 世明、孫 過庭、柳 公権、懐素など、唐時代を代表する書の名品と、唐時代の貴重な肉筆資料である『則天武后時写経残巻』(初公開、期間限定:03月12日-04月14日)、『敦煌トンコウ写経』などの貴重な書墨や拓本が、中村不折フセツ コレクションから紹介されます。
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《則天武后と則天文字》
[以下は、片塩二朗 wrote]
河南省洛陽郊外、黄河の支流、伊水河畔には、敦煌トンコウ、雲崗ウンコウとならんで、中国三代石窟のひとつとされる龍門石窟リュウモンセックツ群があります。
その造営は、とおく南北朝時代の鮮卑族王朝の北魏(386-556)の時代にはじまり、初唐のころには、もっとも巨大な奉先寺の造営によってピークをむかえました。

とりわけ仏教にふかく傾倒していた則天武后、武 照(三代皇帝・李 治、高宗の皇后武照、周の聖神皇帝、在位690-705、623-705)は、宏大な石仏群の奉先寺の造営を、事実上20年ほどのあいだに進行しました。

その本尊の毘盧遮那仏 ビルシャナブツ は、洛陽の春をかざる大輪の牡丹の花にもにて、豊饒でふくよかな顔立ちをしています。ですから数十万躰ともされる、痩身で峻厳な顔立ち、いわゆる北魏様式とされる、ほかの龍門石窟の諸仏、とりわけふるくから開鑿がすすんだ左岸の諸仏とくらべると、あきらかに女性のこのみが表出した、おおらかで優美な仏像となっています。

則天武后こと、武 照の表情を模したとされるこのおおきな石像をみると、後世の歴史家が文字で描きだした人物像とくらべると、ふくよかで、豊満な、魅力に溢れるものですし、わが国東大寺の大仏像のモデルとなったという伝承もうべなるかなとおもわせます。

たしかに則天武后は奔放なひとであり、淫乱にして剣呑な面もうかがえます。また嫉妬深くて残忍な性格だったかもしれません。
後段で解説しますが、則天武后は、感情の起伏がはげしく、そのほとばしりを制御できないまま、側近の甘言におぼれて、恣意的な施策をかさねた側面はみられます。

ところが則天武后が設立した控鶴府コウカクフ(のちに改称して奉宸府ホウシンフ)は、いまの文化サロンさながら、あまたの文人、詩人、書画壇の偉才をまねいて、大小の宴会を連日開催し、「勅命」によって即興の詩や歌を吟じさせ、書画を描かせることも多かったとされます。
この時代の洛陽は、また「華のみやこ」とも称されていました。

則天武后の治世は、その薨去からまもなく、李白や杜甫が活躍する盛唐文化の開花につらなり、書壇では欧陽詢書風だけでなく、顔 真卿や柳公権らがあたらしい書風をもって活躍し、則天武后の孫にあたる李  隆基・玄宗帝の「改元の治」につらなって、盛唐文化としての結実をみました。
史家のまなざしは、この女性にいささか酷にすぎるようでもあります。
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ところで、則天武后は、漢の字がもともと内包する造形の神秘性に鋭敏であり、その背後にある種の霊性をみいだし、その呪術性や神秘性に憑かれていたのではないかとおもえることがあります。
もちろんその制定にあたっては、鳳閣侍郞ホウカクジロウの宗 秦客ソウシンカク の手によって載初元年(689)に献上され、ひろく天下に実施されたとされます。

そんな則天武后と則天文字へのおもいから、だいぶ以前かfら、則天武后がつくりだした「則天文字」をコツコツと追ってきました。当時は資料がすくなく、『則天武后』(外山軍治、中央公論新書)程度の資料を頼りに、中国での実地調査がおもでした。

今回の展覧会を期に、あらためてそんな資料を整理して、『花筏』に紹介しようと苦慮中です……。
ところがなにぶん整理が苦手なもので、資料の大半が四散しており、それをまとめることに時間がかかります。しばらくのお時間をいただきます。


中国河南省・洛陽郊外の龍門石窟の巨大石造寺院、奉先寺は唐の高宗(事実上は則天武后、武 照)の創建によるものです。本尊の毘盧遮那仏は則天武后の表情を模したものとされ、わが国の東大寺大仏にも影響をあたえたとされます。
上)奉先寺・毘盧遮那仏  下)奉先寺・左脇持仏


上)則天武后・昇仙太子碑拓本。
2-4行目の上から3文字目が、順番にいわゆる則天文字の「年、月、日」になっています。
『昇仙太子碑』ショウセンタイシ ヒの建碑は、聖暦2年(699年)。則天武后は「唐」にかえて、国号を「周」と号したことから、古代の周の太子の廟を修復し、これを記念してみずから撰文し、みずから書して建碑しました。碑石はとても大きく立派な碑で、河南省偃師エンシ市の仙君廟センクンビョウに現存しています。

中)「則天文字の誕生とその東漸」『印刷雑誌』(片塩二朗、1994年07月号)に紹介した写植活字での「則天文字」の試作。
筆者はつづいて、則天文字「圀」をもちいている「徳川光圀にみる西方へのまなざし」『印刷雑誌』(片塩二朗、1994年08月号)をしるしました。
徳川光圀の「圀」は、いわゆる則天文字であり、また光圀の知行地であった水戸、墓所のある常陸太田には、いまも則天文字の痕跡が、あちこちでみられることを報告したものです。
この当時は資料がすくなく、苦労があったと記憶しています。製作協力:吉田佳広氏。

こののちに研究書『則天文字の研究』(蔵中 進、翰林書房、1995)が発行されて、「則天文字」に関する本格研究が着手されました。
同書は研究内容の評価だけではなく、わが国のタイポグラフィ史からみても貴重な書といえます。すなわち同書は、金属活字原版刷りによって印刷されています。

特殊活字の「則天文字」は、同書のためだけに活字母型を特注製造し、自動活字鋳植機(KMT)で組版・印刷・刊行されたものであり、『則天武后』(外山軍治、中央公論新書)などの先行書とくらべても違いは歴然としています。同書は活字版書籍印刷後期の記念すべき書物です(印刷所:文京区後楽に旧在・共信社印刷所)。 

下)「則天武后がのこした文字」『文字百景 089』(片塩二朗、2000年09月)
電子活字本明朝-Mと混用できるように製作した「則天文字」。製作:鈴木孝。

いまにしておもえば……、この写植活字と電子活字による2回の試作活字の挑戦は、いかに楷書体の末流に属するとはいえ、明朝体活字書風で試作したことには問題がありそうです。
また、現在では「則天文字」として争いのないものは、識者のあいだでは17キャラクターに落ちついているようです。ですからキャラクターの選択そのものも、再考が必要です。

「則天文字」は、いわゆる漢字六書の法からいうと、象形であり、会意といえますが、本来の六書の法からはかなり逸脱しており、むしろこれを「文」(徴号)とみて、則天武后みずからが『昇仙太子碑』にのこしたような、唐代の楷書書風で再現を試みるべきであったと反省しています。
現代はデジタルタイプ、明朝体によって「則天文字」は再現されていますが、ほとんどのキャラクターはユニコード対応で、ソーシャルメディアでは表示に困難をともないます。

またこんにちのソーシャルメディアのなかでは、G 検索によると90,500件(2013年03月調査)ほどのたくさんの記述をみることにおどろきます。いつの間に「則天文字」が、こんなに多くの皆さんの関心を呼んだのでしょう。
また ウィキペディア「則天文字」は、どなたが記述したものか、とても丁寧な解説になっていて、これもまたおどろきました。

「書道博物館」フライヤー裏面部分拡大。『則天武后時写経残巻』(初公開、期間限定:03月12日-04月14日)図版の最終行「日」に、則天文字の「日」がみられます。

《則天武后、武 照のひととなり》
則天武后こと武 照(武皇后・周の聖神皇帝、在位690-705、623-705)は、「貞元の治」で知られる、唐の二代皇帝・李世明(太宗、在位626-49、598-649)の後宮(わが国江戸期の大奥にちかい)に14歳にしてはいり、太宗の死後に出家して尼となりましたが、三代皇帝・李 治(高宗、在位649-83、628-83)の即位後に還俗して、あらためて高宗の後宮にはいったひとです。

高宗の後宮にはいると、王皇后を失脚させ、代わってみずからが皇后となり、朝政に加わって、李 世明以来の高官・褚遂良を左遷し、元老・長孫 無忌らの反対派を粛清し、武氏一族を登用して実権を握りました。

高宗の死後、武  照は、李 顕(中宗)、李 旦(睿宗)を相次いで皇帝に立てましたが、いずれも短期間で廃し、嗣聖七年(690)、高宗の死後6年余に、みずからが聖神皇帝となって、国号を唐から周(武周、690-705)とあらためて、中国史上唯一の女帝となりました。

治世の当初は、西南方で抵抗していた吐蕃(トバン、チベット系民族)や、西北の突厥トッケツなどの武装勢力を鎮圧するなどの面もみられましたが、まもなく、古代王朝の周(BC1100 ?-BC256)のあまりにふるい制度を復興させました。ほかにも密告を奨励して、酷吏・寵臣を専横させました。
このように、唐をむしばみ、漢族の儒教的倫理観に抵触した武 照に関しては、史家のおおくが批判的であり、周(武周)という国とその国号につめたく、武 照はあくまでも三代皇帝・李 治、高宗 の皇后として、則天武后と呼ぶことがならいとなっています。

それでも武 照の時代に登用された多くの人材が、孫にあたる李 隆基(唐六代皇帝・玄宗。在位712-56、685-762)の前半期、すなわち 楊貴妃 に惑溺する以前の「開元の治」で活躍したことは評価されています。
武 照は齢80歳をこえると、さすがに高齢化がめだって、長安四年(705)、宰相の張東之らが武 照に退位を迫り、李 顕(唐第四代皇帝・中宗、在位683-84、705-10。656-710)が帝位に重祚して、国号も周(武周)にかえて唐の名が復活しました。

また「則天文字」も重祚した実子の李 顕(中宗)の勅命をもって、廃止が宣せられました。
それでも「則天文字」は、民間ではながらくもちいられており、廃止からおよそ100年後(804年)に入唐した空海は、いくつもの「則天文字」を使用した書墨をのこしています。


そして、はるかな後世、江戸時代初期に、明末清初の大混乱が中国で発生し、それを逃れてわが国に亡命・帰化した中国・余姚ヨヨウのひと、朱 舜水(1600-82)が、徳川光圀の政治顧問となり、光国にかえて、則天文字「光圀」の使用を勧め、「憂いを先に、楽を後に」の故事から「後楽園」の名称などをもたらしたとされます。
ついでながら朱舜水の墓所は、水戸藩歴代徳川藩主がねむる、茨城県常陸太田市 瑞竜山 にありますが、東日本大震災の影響で墓標や設備の損壊がひどく、現在は公開されていません。

武 照は唐のみやこ長安よりも、副都洛陽の、ゆたかな水と緑にあふれた風土を愛していました。その洛陽の西、洛水の左岸に、唐の高宗の時、みずからが建てた宮殿「上陽宮」で長安四年(705)に薨去しました。その遺骸は夫の三代皇帝・李 治(高宗)の「皇后」として、李 治がねむる 乾陵 に合葬されました。

【特別情報】 朗文堂では4月初旬に、書道博物館でのギャラリー・トークの特別開催をお願いしています。ご希望のかたは事前に片塩宛にご連絡ください。