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デザインギャラリー1953企画展

本の知と美の領域 VOL. 1

白井敬尚の仕事

朗文堂とは30年余にわたってもっとも親しいタイポグラファ、白井敬尚さんによる展示会が企画されています。白井敬尚さんには小社刊行書の多くの装本をお願いしてきましたし、デジタルタイプのパッケージも白井敬尚さんの手をわずらわせてきました。

また、朗文堂新宿私塾は17期生を迎えようとしていますが、開塾以来、その中核をになっていただきました。自己顕示や過度な作家性の表出に慎重だった白井敬尚さんは、これまでほとんど展覧会や公募展への参加には慎重でしたが、日本デザインコミッティの依頼をうけてのはじめての本格的な展覧会となります。

新宿私塾修了生の皆さんはもとより、ひろくタイポグラフィを愛される皆さまのご参加を期待します。
――朗文堂  片塩二朗



会期 : 2011. 2. 24.[木]―3. 21.[祝・月]|10:00―20:00
最終日17時閉場|入場無料

会場 : 松屋銀座7階・デザインギャラリー1953   http://designcommittee.jp/

主催 : 日本デザインコミッティー|協力:株式会社サンエムカラー|
企画・会場構成:平野敬子

情報が氾濫する現代こそ、機能と美の調和を目指したエディトリアル・デザインにスポットライトをあてたいと考えました。そのシリーズ企画「本の知と美の領域」の第一回目はグラフィックデザイナーの白井敬尚さんの展覧会です。
白井さんの研究的態度からは知性と品性が香り立ち、ここにデザインの理想を見いだしております。
――平野敬子

トークショーのお知らせ *3月6日[日]18:00―19:00、銀座3丁目アップルストアー内シアターにて白井敬尚と平野敬子、両氏によるトークショーを開催いたします。詳細は、Webサイトでご確認下さい。

タイポグラフィ学会「研究論文発表会」

タイポグラファのみなさまへ!

寒い毎日が続きますが、皆さまお元気ですか。
今回はタイポグラフィ学会主催「研究論文発表会2011」の
お知らせです。同学会は『タイポグラフィ学会誌』を定期
刊行しており、その発表会も随時開催されています。

今回の発表は、アドビシステムズ株式会社シニア・マネー
ジャーの山本太郎さんと、わたくし朗文堂・片塩二朗です。
山本さんは、話題の電子書籍に関する専門的な考察を発表。
片塩は「弘道軒清朝活字の製造法とその盛衰」を発表。

猛暑・酷暑と呼ばれた昨夏、夜ごと資料の山と格闘。それを
ともかくわかりやすく皆さんにお伝えすることに努めます。
清朝活字は明治初期には、明朝体より多用された活字です。
それがなぜ、後発の明朝体に凌駕・駆逐されたのか、そして
21世紀、明朝体の衰退があるのかどうか、あるいはそれは
どんな書体が候補となりうるのか……。

わが国の活字の抱えているテーマを様々お話しできればと。

また『タイポグラフィ学会誌』の会場特価販売もあるよう
ですし、片塩論文掲載の第4号をお求めのかたには、貴重な
「弘道軒清朝 活字原版刷カード」がゲットできます。

日曜日の開催で恐縮ですが、添付ファイルを確認のうえ、
予約申込みを完了され、2月20日[日]にお目にかか
れたらうれしく存じます。

PDF画像はこちらです

タイポグラフィ学会論文発表会

タイポグラフィ学会
研究論文発表会2011

タイポグラフィ学会は、タイポグラフィという技芸に学問的な基盤を与え、その成果を実技・実践に生かし、有効で豊かな展開を通して社会に貢献することを目的に、2007年に設立されました。
『タイポグラフィ学会誌』は2007年に創刊され、先般その04号が刊行されました。ここに『タイポグラフィ学会誌04号』に掲載された研究論文、および研究ノートの発表会の開催をお知らせします。当学会員だけではなく、ひろくタイポグラフィにご関心のある皆さまのご参加をお待ちしています。
タイポグラフィ学会 会長 山本太郎

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日時:2011年2月20日日曜日 午後2時より
受付開始 午後1時30分
会場:学校法人専門学校 東洋美術学校 C棟 C-1教室
入場料:無料

講演者:山本太郎 片塩二朗
参加費:無料(会員・一般ともに)
プログラム:
午後2時15分から3時
研究ノート発表
「いわゆる電子書籍に関する断片的考察」
山本太郎
午後3時15分から4時45分
研究論文発表
「弘道軒清朝体の製造方法とその盛衰」
片塩二朗

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タイポグラフィ学会による第2回研究論文発表会が上記の予定にて開催されます。
すでに『タイポグラフィ学会誌04』での発表をしておりますが、文字だけでは伝えきれない枢要な部分を執筆者自身よる講演と、実際にモノを提示しながらお伝えする魅力的な内容となっています。
皆さまお誘いあわせの上、ふるってのご参加をお待ちしております。


PDF画像********************************************************

詳細は下記までお願いいたします。

タイポグラフィ学会 東京事務局

E-mail :info@society-typography.jp
Facsimile : 03-3352-0727

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新宿私塾18期生募集


「新宿私塾」はタイポグラフィの知・技・美の領域をバランス良くまなぶためのちいさな教育機関です。書物と活字づくり、すなわち「タイポグラフィ」の550 年におよぶ魅力的な歴史をまなび、本格的なタイポグラフィの教育と演習を通じて、あたらしい時代の要請に柔軟に対処する能力を身につけた、タイポグラフィの前衛を養成します。

詳細はこちら

「新宿私塾」は設立から8年余の歳月を有し、現在は第17期生が意欲的な学習を続けています。今回募集する第18期生は、2011年3月下旬―11年9月までの、半年間、24回の講座が予定されております。

定員10名で、お申し込み順に受付させていただきます。
受講料30万円のうち、申込金3万円を指定口座に振り込んでいただき受付完了となります。

先ずはメールにてお問い合わせください。
件名/新宿私塾18期申し込み
お名前、住所、電話(携帯可)そして略歴を必ずお書きください。
講義の際に参考とさせていただきます。

受信後、返信をさせていただきます。

詳しく知りたいというかたはどうぞ電話連絡をしてください。
担当根岸が対応させていただきます。

杉明朝体 OpenTypeフォント発売中 !! 杉本幸治氏三回忌にあたり再掲載しました。

杉明朝体|杉本幸治制作|硬筆風細明朝、
OpenTypeフォント発売中 !

杉明朝体はね、構想を得てから随分考え悩みましたよ。
その間に土台がしっかり固まったのかな。
設計がはじまってからは、揺らぎは一切無かった。
構造と構成がしっかりしているから
小さく使っても、思い切り大きく使っても
酷使に耐える強靱さを杉明朝体はもっているはずです。
若い人に大胆に使ってほしいなぁ。
── 杉本幸治の述懐 ── 

OpenTypeフォント化により、Macintoshでも「崎、高」などの異体字、いわゆる「タツサキ  﨑」、「はじごダカ 髙」の「﨑、髙」も使用できるようになり、宮﨑あおい髙村薫などの正式な表記が可能となりました。
また、草(彅)剛、(德)永英明、(鄧)小平、森(鷗)外などの表記が可能です。



杉明朝体の書体設計は杉本幸治氏(タイポデザインアーツ)です。
◎OpenTypeフォントStd仕様
◎対応機種:Macintosh、Windows
◎PDFファイルにエンベッド(埋込可能)、アウトライン化可能。
◎OpenTypeフォントStd仕様ですが、非漢字(仮名、英数字、記号など)は1221文字のみの収容となっています。
◎Adobe InDesign、Adobe Illustratorのプロポーショナル・メトリクス機能には対応しておりません。カーニング(オプティカル)機能をご利用ください。
◎OpenTypeフォントに対応していないアプリケーション(バージョン)では、正常に表示できない場合があります。
●OpenTypeフォントの動作環境
Windows
・Windows 2000、XP、Vista、7:利用可能です。
・Windows 95、98、Me、NT4.0:ATM(Adobe Type Manager)4.1以降が必要です。
Macintosh
・Mac OS X 10.1以降:利用可能です。
・Mac OS 8.1- 9-X:ATM(Adobe Type Manager)4.6以降が必要です。
・その他のMac OS:ご利用いただけません。
販売価格/31,500円(本体¥30,000円)

《秀英体100》

ギンザ・グラフィック・ギャラリー第294回企画展

 秀英体100

2011年1月11日―31日
ギンザ・グラフィック・ギャラリー

明治45年(1912)に本格的に展開した、大日本印刷(秀英舎)のオリジナル書体「秀英体」の生誕100年を記念して、活字版印刷から、デジタルの活用期までを、時代とともに歩んできた「秀英体」の100年を紹介する企画展です。皆さまのご参観をおすすめいたします。

詳細

◎    ◎    ◎    ◎
下記のイベントは盛況裡に終了いたしました。
たくさんの皆さまのご来場ありがとうございました。

大日本印刷 秀英体展示室見学会

トークショー
《秀英体 平成の大改刻の道のり》

大日本印刷の「秀英体 平成の大改刻」の中間発表ともいうべきイベント《秀英体100》が、東京gggギャラリーをはじめ、各地・各所で開催されています。

今回のご案内は秀英体展示室を見て、秀英体平成の大改刻の実製作者が語りつくす意欲企画です。朗文堂・片塩二朗もパネラーとして登場しますので、ご参加希望の皆さんは、下記をご確認、手続きを完了されて、ふるってご参加ください。

秀英体のリニューアルプロジェクト「平成の大改刻」製作メンバーで、これまでの山あり谷ありの製作状況の中間報告のイベントです。また、開発資料がたくさんつまった秀英体展示室も見学いただけます(50名限定)。

日 時:2011年1月18日(火)17:00-19:30
(トーク=17:00-18:30、見学=18:30-19:30)
会 場:DNP五反田ビル1階ホール、先着50名
出 演:片塩二朗朗文堂)+鳥海 修字游工房)+石岡俊明リョービイマジクス伊藤正樹(DNP秀英体開発室

海外・国内の活版印刷教育

College & University Letterpress Printers’ Association
専科大学・総合大学 活版印刷者協会

2006年に「専科大学・総合大学 活版印刷協会」が結成され、現在は、ケンブリッジ大学、フィレンツェ美術大学、ハーバード大学、オックスフォード大学、エール大学をはじめ、欧米の造形教育、技術教育拠点校のうち、錚々たる有力校を結集して36校を数えています。ちなみに《Letterpress》とは、活字を主要な印刷版とする《凸版印刷術》の意ですが、わが国ではふつう《活版印刷》と呼ばれています。

これらの大学のほとんどは、パソコンの普及とともに、次第に、写真工房、版画工房、シルクスクリーン工房、活版印刷工房などを、閉鎖したり、縮小する傾向がありました。ところが近年の動向は、造形教育のためには身体性をともなった、もっともプリミティブな《活版印刷》の教育課程が必要だと鮮明に認識されるようになり、活版印刷工房を再開・再構築した有力大学が中心となって「専科大学・総合大学 活版印刷協会」が結成されました。同協会は論文発表、作品発表も盛んですが、情報交換はおもに Website を中心になされていますのでぜひご参照ください。

2010年は、わが国でも海外に負けずに画期的な年となりました。各地の美術系・技術系の大学や専門学校が、つぎつぎに「活版印刷工房」を、新設・再開・増強する動向が顕著になりました。朗文堂 アダナ・プレス倶楽部では、各校の現状とカリキュラム内容にあわせて、機器、機材、消耗品をふくめて、無理のないサポートをさせていただいております。


専科大学・総合大学 活版印刷協会 会員紹介
*
UNIVERSITY OF ARIZONA
CAL POLY SAN LUIS OBISPO
CAMBRIDGE UNIVERSITY (UK)
COLLEGE OF VISUAL ARTS
COLORADO COLLEGE
COLUMBIA COLLEGE CHICAGO
FLORENCE SCHOOL OF VISUAL ARTS
FLORIDA ATLANTIC UNIVERSITY
FOOTHILL COMMUNITY COLLEGE
HARVARD UNIVERSITY
UNIVERSITY OF HAWAII. MANOA
IDAHO STATE UNIVERSITY
UNIVERSITY OF ILLINOIS
UNIVERSITY OF IOWA
UNIVERSITY OF KANSAS
UNIVERSITY OF KENTUCKY
MACALESTER COLLEGE
MASSACHUSETTS COLLEGE OF ART
MARYLAND INSTITUTE COLLEGE OF ART
MILWAUKEE INSTITUTE OF ART AND DESIGN
MISSOURI STATE UNIVERSITYMONTANA STATE UNIVERSITY
NAROPA UNIVERSITY
UNIVERSITY OF NEBRASKA-OMAHA
UNIVERSITY OF NORTH DAKOTA
OREGON COLLEGE OF ART & CRAFT
OSLO NATIONAL ACADEMY OF THE ARTS
OXFORD UNIVERSITY
UNIVERSITY OF PENNSYLVANIA
ST. AMBROSE UNIVERSITY
UNIVERSITY OF TAMPA
UNIVERSITY OF TOLEDO
WASHINGTON UNIVERSITY SCHOOL OF ART
WEBER STATE UNIVERSITY
UNIVERSITY OF WISCONSIN-MADISON
YALE UNIVERSITY


www.collegeletterpress.org/

実感! 活版ルネサンスの進展

アダナ・プレス倶楽部
in
かすがい市

[ 日 時 ]
11月13日[土]―11月14日[日]
[ 会 場 ]
文化フォーラム春日井
[ 主 催 ]
財団法人かすがい市民文化財団


[活字版印刷ワークショップ]
クラス1―― 学童向け
クラス2―― 一般向け
[企画展示]
「活版印刷の歴史と未来」展

書の町として著名な、かすがい市民文化財団様からの熱心なお誘いをいただき、アダナ ・ プレス倶楽部が、愛知県かすがい市に出張しての 「活字版印刷ワークショップ」 と 「企画展示会――活版印刷の歴史と未来展」 が盛況裡に終了いたしました。  かすがい市民文化財団の皆さま、そして東海地区にとどまらず、京阪神地区、北陸地区からお越しいただいた皆さまに あつく御礼を申しあげます。 また在京のアダナ ・ プレス倶楽部会員の皆さまも、遠路を駆けつけてご協力いただきました。 本当にありがとうございました。

2日間、4回、各回10名の定員のワークショップは、各回とも事前申込みが定員を大きく上回り、参加者は相当な倍率の抽選をくぐり抜けてのご参加だったそうです。 そのためご夫婦で申し込まれたのに、おひとかただけが当選となって、どちらが参加するのかちょっとした 「家庭騒動」 もあったと笑いながら漏らされた参加者もいらっしゃいました。 ですから毎回の参加者の意気込みは ひとかたならぬものがあり、スタッフも熱気にたじたじの内容の濃いワークショップでした。

企画展示は、テーマを 「活版印刷の歴史と未来」 として、従来あまり論究されることがなかった東海地区の活版印刷と 活字鋳造に関して、あたらしい資料をご紹介し、この地で製作された図書などの実際をご覧いただけるように努力いたしました。 また、活版関連機器や資材は重量があって 出張展示には適さないのですが、できるだけ多くの実物を運搬し、活版印刷の魅力と 可能性をご紹介するべく努力いたしました。 通常、アダナ ・ プレス倶楽部のイベント報告は写真紹介が少なかったのですが、主催者のかすがい市民文化財団様から写真データをご送付いただきましたので、百聞は一見にしかず、今回の報告は写真画像を中心にご紹介いたします。

まずはお行儀良く着席して説明を聞きます。
活字を組み終え、印刷に突入、踏み台に乗っての作業。
合間をぬって特製名刺ホルダーの製作作業。
花形活字も名前の活字も組んだ。 あとは印刷機で刷るぞ!
花形活字入りの名刺がドンドン刷り上がります。
お気に入り名刺は誰にも見せないで秘密にしておこう!

\(^O^)/>^_^<\(^O^)/(^◇^)\(^O^)/(^o^)\(^O^)/

ドウダ! ボクもワタシも活版印刷やさんだぞ!

自作の詩を和様三号活字から文選作業。活字初体験!
文選した活字を組版ステッキに組み並べる参加者。
読みにくい和様三号でも要領さえわかれば独りでも。

* * *

* * *

ゆったりとした会場に、心地好い緊張がはしる。
脈々と継承された活字の全貌がわかる展示に熱い視線。

ありがとうございました!

盛況裡に終了いたしました。

ご来場いただきました沢山の皆さま、ありがとうございました。
「活版ルネサンスフェア」 と銘うってのイベントも、
第8回目となり 機材や資材を選ぶお客さまの視線は、
真剣で厳しいものがありました。
どうやらこの展示販売会は、すっかり活版印刷実践者の
皆さまの間で定着したようで嬉しい限りです。
*     *     *
年賀状の販売もはじまり、慌ただしいこれからの毎日です。
ところが活版実践者にとってはクリスマス・カード、
年賀状の印刷と、心はずむ ( 悩み多い ) 季節です。
皆さまの ご奮闘を期待します。
*     *     *
アダナ・プレス倶楽部の11月は、
毎週開催の 《 活版カレッジ 》 のほかに
愛知県かすがい市への出張ワークショップ、操作指導教室、
大学版画展の準備と 慌ただしい毎日です。
それよりなにより、アダナ・プレス倶楽部の会員の皆さんが
本音で期待? しているのは、11月29日開催
《アダナ・プレス倶楽部忘年会 餅プレス大会》!!

本音を申せば、チト自慢?

トロロアオイの花をご紹介します!

さんざんじらしたあげく。それでもお利口なことに、週末16日[土]に、トロロアオイが大輪の花をふたつつけました。翌17日[日]にもまた一輪。蜂やチョウチョが嬉しそうにやってきます。朝まだきのころ、ソロリと咲いて、夕方にはもうしおれてしまいます。草の丈は身長ほど、花はコーヒーカップのソーサーより、もっと大きな、ほんわり黄色の大きな花です。絡みついている蔓草は風船カヅラ。こちらもまだまだ元気です。

花壇とはいえ、ノーガク部が勝手にベランダに煉瓦を積みあげ、コンクリで固めた、チト大型のフラワーポット状の花壇。したがって、すべての花は、みんな陽当たりの良い、ソッポを向いて咲きます。つまり「ロダンの椅子」からみると、みんなお尻を向けて咲くカタチ。写真もうまく撮れないし、これがチトシャクの種です。

ここのところ、ミヤギタニ アキミツ、アサダ ジロー、キタカタ ケンゾーにはまっています。ときどき毒消しに司馬遼太郎をはさんでいるので、いささか睡眠不足の今日この頃。3人とも油がのりきっている作家ですから、その筆の早いこと速いこと。連載は追わないものの、単行本が相次いで発行されます。それでも、ミヤギタニとアサダは、デビュー当時からほとんど全てを読んでいます。キタカタはここ3年くらいか。

キタカタ『水滸伝』には参った。ケンゾーはハード・ボイルド作家だと思っていたのでほとんど手にとることはなかったのだが、『水滸伝』となると、宋朝体活字を研究しているわが身にとっては、北宋末期・痩金体をのこした徽宗帝治下時代の物語り。駒田信二版、村上知行版、吉川英二版を読んでも、いまひとつピンとこなかっただけに必読書。これがいけなかった。つまりケンゾーのハード・ボイルド時代のものまでほとんど読んでしまった。

参ったついでにケンゾー友の会に@メール登録したら、「オメーら、明日新刊××が出るぞ。書店へ直行だ!」なんて@メールがケンゾーからくる。『水滸伝』19巻が終わったら、今度は『揚令伝』ときた。つまりはまりまくって、頭の中に全集を三組、しかもまだまだ増えそうな全集を三組置いているようなものだ。アサダなど、何を狂ったのか、書き下ろしまで発行してしまった。『珍妃の井戸』、『蒼穹の昴」と続いた、一連の清朝末期の動乱を綴った作品をまとめたようなもの。

週末用にとアサダの書き下ろしの新刊を買い込んだ。家に帰ってメシ前にチョット読んだら、やめられない、どうにも止まらない。マンチュールの大草原を、銃をかざし、弾倉帯を十字に背負った満州馬賊が縦横に駈けまわる。怪しいトンヤンキー(東洋鬼・日本人の蔑称)の大陸浪人や、カントー軍が暗躍する。胸湧き血が踊るのだ。アレッ違った、血湧き胸踊るのだ。最後は張作霖が玉と砕け散る。ハラハラと落涙。完全に感情移入している。週末用じゃなくて、金曜の夜というか、土曜の朝まだきまでかかって、結局速攻読了。

寝る前にちょっと一服とベランダにでたら、朝の日差しを浴びて、トロロアオイがこっそりと花をつけていたという次第。この花は、5月に偶然黒ポットにはいった苗を頂き、アダナ・プレス倶楽部の会員に4鉢だけおすそ分けしたもの。それが、あそこでも咲いた、こっちでも咲いた。こうした報告を頂くたびに、嬉しくもあり、チト悔しかった。

ところで、花が萎れると、すぐに大きなサヤ状の種になる。一輪で20粒ほど入っているようだ。花は10輪は咲きそうなので、100粒の種が採れることになる。来年は花咲爺さんになって種まきからはじめる。どこかで黒ポットも仕入れなくてはいかん。つまり来年は5月から10月ころまで、はた迷惑を顧みず「トロロアオイ情報」が溢れることになりそうな気配濃厚。

アダナ・プレス倶楽部が愛知県に出張します

東海地区の皆さまお待たせしました!
この秋、アダナ・プレス倶楽部が
「書のまち」春日井市に出張いたします!

2010年11月13日(土)―14日(日)

【会 場】
文化フォーラム春日井
愛知県春日井市鳥居松町5-44
* * *

企画展示
「活版印刷の歴史と未来」展

***入場無料***
[日 時]
11月13日(土)9:30―17:00
11月14日(日)9:30―16:30
[会 場]
文化フォーラム春日井2F 展示ギャラリー


あいち子ども芸術大学2010
講座No.32 私もいんさつ屋さん!
カッパンいんさつでメッセージカードをつくろう

[日 時]
11月13日(土) 各クラス定員10名
クラス1 10:00―12:00
クラス2 14:00―16:00
[会 場]
文化フォーラム春日井・文化活動室
[内 容]
昔のいんさつ屋さんのように、手で一文字ずつ活字を組んで、手動式の印刷機Adana-21J(アダナ21ジェイ)を使って印刷します。使用する活字は、まんがの吹き出しに多く使われてきた「アンチック体」という「かな書体」です。
[対 象]
愛知県在住または在学の小学生・中学生
[参加費]
500円
[申込先]
〒486-0844愛知県春日井市鳥居松町5-44
文化フォーラム春日井
(財)かすがい市民文化財団
「あいち子ども芸術大学 カッパンいんさつ」係

参加希望者は「往復はがき」に
(1)希望講座名(クラス)
(2)保護者の住所・郵便番号・氏名(ふりがな)・電話番号
(3)子どもの氏名(ふりがな)・性別・学校名・学年
を明記してお送りください。

申込期間:9月25日(土)~10月30日(土)必着
(応募多数の場合は抽選)

文化フォーラム春日井
かすがい市民文化財団
地域と文化講座Work Shop
文字もじ書くかくシリーズ
「活版印刷」講座

[日 時]
11月14日(日) 各クラス定員10名
クラス1 10:00―12:00
クラス2 14:00―16:00
[会 場]
文化フォーラム春日井・文化活動室
[内 容]
「書のまち」春日井市にちなみ、異体字の豊富な仮名活字を使って、三十一文字程度の活字を組み、手動式の活版印刷機Adana-21Jで印刷します。使用する活字は、わが国に近代式活版印刷術を導入した本木昌造がつくった明治時代の活字を復元したもので、その活字の版下は明治帝の文学掛でもあった書家の池原香穉(かわか)によるものとされています。この貴重な活字を使って、自作または好きな和歌などを印刷しましょう。
[協 力]
活字提供:本木昌造顕彰会
印刷用紙提供:アワガミファクトリー
[参加費]
一般:2,000円、PiPi会員1,900円
[申込先]
〒486-0844愛知県春日井市鳥居松町5-44
文化フォーラム春日井
(財)かすがい市民文化財団「文化と地域講座係」
ファクシミリ番号、e-mailアドレスは→コチラでご確認ください

参加希望者は
講座名・郵便番号・住所・氏名・年齢・性別・電話番号を明記し、
はがき・ファクシミリ・e-mailのいづれかでご応募ください。
(申込は一人一通のみ有効)
e-mailでご応募の場合の題目は
「文字もじ書くかく申込」としてください。

申込〆切:10月30日(土)必着
(応募多数の場合は抽選)

【研修旅行】東京都あきるの市五日市町の秋川渓谷にある「ふるさと工房」で{紙漉きツアー} 好評裡に終了!

自分で漉いた本物の手漉き紙と、美味しい空気がお土産でした!

2010年10月02日、好天に恵まれ、東京都あきるの市五日市町の秋川渓谷にある「ふるさと工房」で《手漉き紙ツアー》が開催されました。
主催は朗文堂活版カレッジでしたから、皆さん本物のタイポグラファであり、活版印刷実践者の皆さん17名でした。

それでも会員の皆さんにご案内したときは、本当に東京都内で手漉き紙の抄造が体験できるのかと半信半疑のかたもいらっしゃいました。
それでも五日市町の軍道紙 グンドウガミ の伝統を継承する「ふるさと工房」に集合したときは、あたりの緑豊かな景観と、清らかな秋川の渓流と渓谷美にううっとりとした表情でした。

総勢17名+1 の紙漉き風景は壮観でした

まず学芸員によって、手漉き紙の主原料となる楮(こうぞ)と、ネリにつかわれるトロロアオイの根の説明があって、さっそく紙漉き開始。
今回は舟(材料槽)三つを借り切っての本格抄造とあって、ほとんど全員が初体験とは思えない鮮やかな手つきで黙々と抄造に励みます。サイズはA3、ハガキサイズ、名刺サイズとさまざまでしたがみんな目的意識をもってそれぞれのサイズを選択しての抄造でした。
工房前のコウゾの説明をうける。

楮の植栽の前で学芸員から説明を受ける

ところで堂主やつがれ! 実はオヤジの生家が雪国の貧しい農家で、冬場は紙漉が盛んであった関係で、しもやけの手で手伝わされた苦い思い出があった。そこで途中は中抜けして秋川渓谷をお散歩。そして「喫茶むべ」の珈琲を愉しんでおりました。皆さんは熱中していましたから気づかれなかったはず。
そしてやおら最終版に、なにくわぬ顔で登場しての抄造作業開始。ハガキサイズ二面付け枠を用いての堂々の勇姿ですが、あとで写真をみると、メンバーの心配そうな視線を浴びての抄造ではありました。

皆さんは笑いを堪えているのか、はたまた心配しているのか?

しつこいようですがトロロアオイ。工房の前には大型フラワー・ポットに植えられたトロロアオイがもう種子をたくさん付けており、花はこの写真の一輪だけでした。
ふるさと工房からこの種をわけていただきましたので、来年はたくさんの苗をおわけできそうです。五月中旬に種まき、六月定植、八月末開花のスケジュールです。

ところで……、ウチのトロロアオイはまだ花をつけません。毎朝の水遣りのあと、「ロダンの椅子」に腰を下ろしてジーッと見ているのですが。もしかすると……、此奴は花をつけてしまったら、根っこごと抜かれるのをいやがっているのかな? と。

トロロアオイの花と種子

サービスカットは、ふるさと工房から徒歩圏内のランチョン会場「黒茶屋」の厠の暖簾です。
レタリング関係の書物ではこうした文字を「籠字」としたものもありますが、チト疑問。「籠字」は双鉤字であり、籠写しにした文字です。関心のあるかたは『広辞苑』でご確認ください。

それではこうした文字はなんというのか、「箱字?」……。かつてはイナセな職人のハッピなどでよくみた形象です。厠の暖簾で恐縮ですが、ご存知のかたはご教授ください。

黒茶屋と書いてありました。厠の暖簾

本音をもうせば、チト悔しいのですが!

トロロアオイの花をご紹介します!


晩夏を彩るトロロアオイの花が咲いた(そうです。悔)。写真はHさんが育てられたもので写真を送っていただきましたのでご紹介します。ウチのトロロアオイは、背丈は高く、茎は太いものの、一向に花をつける気配がなく、まだまだ成長を続けそうな勢いです。

手漉き紙の製造にあたって、このトロロアオイの根を擂りつぶし、コウゾの繊維と混ぜて攪拌するそうです。それによって、繊維が沈殿することなく、均一に浮遊することを助けるために「ネリ」と呼ばれて重宝されるのだそうです。

堂主がこの花にひどくこだわるのは、活字狂を自他共に許した志茂太郎がこの花を愛し、自社の商号を「アオイ書房」とし、川上千帆らにこの花をたくさん描かせていたためでした。また、晩夏のころに公子夫人にお招きをいただいて、山の城の旧志茂邸訪れたとき、敷地内の広大な墓地にこの花が心地好さそうに風に揺れていました。その際、この花は1日しか持たず、これをみることを終生志茂太郎は楽しみとしていたと伺いました。志茂太郎の墓標と正対する場所には、何本ものこの花が、お行儀良く一輪ずつ花をつけていました。

ともかく明日10月2日は、活版カレッジの皆さんと紙漉にでかけます。A3から名刺サイズまで、各種の手漉き紙を漉いてくるつもりです。ついでにといってはナニですが、近くにある「喫茶むべ」(アケビ)の絶品の珈琲を愉しみ、店主のミニ・ギャラリーを拝見することも愉しみのひとつです。都心で慌ただしく活動していたグラフィックデザイナーが老境に達したとき、こんな充実した生き方もあるな……、とおもわせるゆっくりとした時が漂う空間も好きです。

本音を申せば、チト不安なのです!

トロロアオイが、まだ花をつける気配がありません!

この欄の6月8日に紹介しました「トロロアオイ」です。エアコン排気の熱風にも負けず、なんとかけなげに酷暑を乗りきったのですが、いっこうに花芽をつける気配がありません。気長に花をつけるのを待ちたいところですが、10月2日には、五日市の「軍道紙 グンドウガミ工房」にこの根を持っての集合がかかっています。

活版印刷をはじめると、印刷用紙もなにかとこだわりが生じるものです。ですから東京都内で手漉き紙が体験できることを知ると、谷あいの「黒茶屋」でプチ贅沢ランチをとり、「喫茶むべ」の美味しい珈琲を愉しみ、さらに天然温泉の露天風呂にまで浸かって日帰りしよう……、などという無謀な企画を平気で立てるのが「活版カレッジ・アッパークラス」です。堂主としてはただ呆れて見ているばかりなのですが……。

まだ肌寒い日が続いた6月の下旬に、活版カレッジ修了生・活版カレッジ・アッパークラスの皆さんに、黒ポットにはいった若芽の「トロロアオイ」をお分けしました。その際、晩夏のころに、真っ黄色な大輪の花をつけるはずだ……、としてご案内しました。すでに花が咲いたとの報告もいただいているのですが、わがベランダ花壇の「トロロアオイ」は一向に花をつけようとしませんし、連日の肌寒い雨に打たれるばかりなのです。

ミニトマト、大輪朝顔、風船カズラなどと一緒に、ごちゃごちゃと植え込んだのがわるかったのかもしれません。それでも茎は太く、背丈を越えるほどに成長しているのですが、花はつけないのです。なんでも実践しないと気が済まない「活版カレッジ」の修了生の皆さんは、おそらく「トロロアオイ」の根を持ち寄り、花の写真を見せ合うのを愉しみにしているはず。それなのに……。

あと3—4日、ともかくこのまま着花をまつしかありません。ザクロが黄色くなったようなシロモノは、ニガウリの実が過熟して黄変したものです。開花を待つ間に、愛用の「ロダンの椅子」に乗せてシャッターを切りました。




おまたせしました ! 杉明朝体 発売開始 !!

杉明朝体杉本幸治制作硬筆風細明朝、TrueType先行発売

杉明朝体はね、構想を得てから随分考え悩みましたよ。
その間に土台がしっかり固まったのかな。
設計がはじまってからは、揺らぎは一切無かった。
構造と構成がしっかりしているから
小さく使っても、思い切り大きく使っても
酷使に耐える強靱さを杉明朝体はもっているはずです。
若い人に大胆に使ってほしいなぁ。
—— 杉本幸治の述懐 ——
  • 杉明朝体の書体設計は杉本幸治氏(タイポデザインアーツ)です。
  • 製品仕様/日本語TrueTypeフォント。
  • Macintosh用とWindows用を用意(選択発注)。
  • PDFファイルにエンベッド(埋込可能)、アウトライン化可能。
  • JIS X 0201およびJIS X 0208-1990(第1・2水準)準拠。
  • Windouws対応TrueTypeフォントにはIBM拡張漢字を収容。
  • 動作環境/詳細カタログに記載。
  • 販売価格/¥31,500(本体¥30,000)

OpenTypeフォント完成後、希望者にはパッケージの提示によって、
OTFと無償交換いたします(送料はご負担いただきます)。

詳細はこちら

特約販売店 朗文堂 タイプ・コスミイク

新宿私塾、活版カレッジがスタート

イベントの秋です! お元気ですか?

《新宿私塾16期-17期》

秋たけなわのこのごろです。残暑ももうしばらくの辛抱のようです。皆さまお変わりなくご活躍のことと存じます。猛暑・酷暑・残暑をものともせず朗文堂は8月を乗りきり9月に突入しました。

陽春の4月にスタートした「新宿私塾第16期」は、真摯で意欲的なメンバーによって構成されました。開塾日にはいつも定時で終わることなく、遅くまで講師を交えて熱いタイポグラフィ談話を交す風景が毎週のように見られました。

そんな「新宿私塾第16期」は、さまざまな成果とおもいを込めて、9月11日「新宿私塾第16期生終了制作会」に堂々と各自の研究成果を発表して旅立っていきました。塾生の皆さんの前途に幸多かれと祈るとともに、いつも変わらぬ多くの講師陣と特別講師の皆さまの献身的なご協力に感謝いたします。

新宿私塾第17期カリキュラム

新宿私塾の教場に、まだ16期生の熱気がこもっているような9月14日「新宿私塾第17期生」が入塾して、簡単なオリエンテーションののち、さっそく第1回目の講座がスタートしました。造形界に吹く風は、必ずしも順風とはいえないさなか、さまざまなおもいと熱意とを抱いて結集した17期生です。当然講座は熱気を帯び、瞬時のゆるみも許されない緊張感に教場は包まれていました。

新宿私塾後期の修了はこれから半年後、3月末の予定です。担当講師陣の皆さんも、カリキュラムの見直しと、さらなる充実を計って臨んでいます。例年とは違って残暑の中でのスタートとなりましたが、秋から冬を経て、早春を迎える頃には17期生も先輩に負けない、実技と実践を基盤とした、たくましいタイポグラファになってくれることを期待してのスタートとなりました。

《活版カレッジ第7期》

アダナ・プレス倶楽部による「活版カレッジ第7期」が9月2日から3ヶ月の研修期間の予定でスタートしました。このところアダナ・プレス倶楽部は極めて多忙で、Adana-21Jの出荷に追われ、Adana-21Jの購入希望・予定者に向けた「Adana-21J操作指導教室」が間断なく開催されています。そんななかでの「活版カレッジ第7期」のスタートです。

活字版印刷術における技・知・美をバランス良く学ぶことを目的とする「活版カレッジ」は、Adana-21J実機を用いての講座となりますので、徹底した少人数の講座が特徴です。ところが……、3ヶ月の講座修了後も、「活版カレッジ」のメンバーは、まだAdana-21Jを持たない修了生を中心に「活版カレッジ・アッパークラス」と称して、毎月2回ほどのペースで集まり、Adana-21Jを用いての印刷と情報交換が盛んです。
活版印刷は、重い活字を用い、実際に活版印刷機を駆使しての「身体性をともなった造形」が特徴です。自らの五感にもとづく造形の結果は、すべて言い訳が許されずに「活版印刷物」として眼前に現出します。ですからその賑やかなことといったらありません。ましてイベントの秋とあって、修了生同士がかたらってちいさな展覧会を開いたり、ほかの活版仲間との交流も盛んです。

「活版カレッジ・アッパークラス」では、既報のとおり「活版カルタ」を製作中。イロハ順かあいうえお順か知りませんが、目下のところ「け」まできたようです。この連中ときたら、手漉き紙に関心が向くと、とろろアオイを苗から育てて、10月初旬にはその根っこをもって、手漉き紙体験会に出かけるそうですし、12月には突如「餅プレス倶楽部」を結成して、セイロ・臼・杵まで持ち出して「大餅つき大会」を企画しています。それまでにカルタができたらまるで奇跡ですね。

《美術館巡り》

なにしろ9月の声を聞いた途端に、魅力的な展覧会が目白押し。あれも行きたい、これも行きたいと思いつつ、もともと出不精ですし、これまた書店の書棚いっぱいに新刊書が並んで、あれも読みたい、これも読みたいで……。とどのつまり、宇都宮美術館で展覧予定だった「ザ・コレクション・ヴィンタートゥール/スイス発―知られざるヨーロピアン・モダンの殿堂」が巡回した、世田谷美術館に出かけました。

ヴィンタートゥール美術館は、15年ほど前、スイスのバーゼルで訪れたことのある、とても雰囲気の良い美術館でした。それでも美術館の雑踏を抜け、木陰に立って煙草を一服したとき、結局大好きなユトリロの「白い家」だけが鮮烈な印象としてのこり、ほかの絵画や彫刻は、わたしの貧弱な図像記憶メモリーから溢れ出てしまいました。

19日(日)は、どうしても気になっていた書道博物館での「漢字のはじまり—古代文字の不思議をさぐる」に出かけました。学芸員の中村信宏さんともお会いでき、甲骨文の魅力を堪能。それでもやはり甲骨文は地味ですし、難解です。10月からは特別展示「中村不折ベストコレクション展」が予定されており、皆さんにはこちらをご案内することにしました。

そんなわけで、せっかくの3連休も、ただ疲れた! のひとことで終わりました。

杉明朝体 近日発売開始!

杉明朝体--杉本幸治制作/硬筆風細明朝体 近日発売開始!


杉明朝体はね、構想を得てから随分考え悩みましたよ。
その間に土台がしっかり固まったのかな。
設計がはじまってからは、揺らぎは一切無かった。
構造と構成がしっかりしているから、
小さく使っても、思い切り大きく使っても
酷使に耐える強靱さを杉明朝はもっているはずです。
若い人に大胆に使ってほしいなぁ。

-杉本幸治 83歳の述懐-

上左)晃文堂明朝体の原字と同サイズの杉明朝体

 

上右)晃文堂が和文活字用の母型製作にはじめて取り組んだ「晃文堂明朝」の原字。(1955年杉本幸治設計 原寸/協力・リョービイマジクス)

 

 

2つの 「 書 」 の図版を掲げた。かたや1955年、杉本幸治28歳の春秋に富んだ時期のもの。こなたは新書体「杉明朝体」である。

 2003年、骨格の強固な明朝体の設計を意図して試作を重ねた。杉本が青春期を過ごした、三省堂の辞書に用いられたような、本文用本格書体の製作が狙いであった。現代の多様化した印刷用紙と印刷方式を勘案しながら、紙面を明るくし、判別性を優先し、可読性を確保しようとする困難な途への挑戦となった。制作に着手してからも既成書体における字体の混乱に苦慮しながらの作業となった。名づけて 「 杉明朝体」 の誕生である。

 制作期間は6年に及び、厳格な字体検証を重ね、ここに豊富な字種を完成させた。痩勁ながらも力感に富んだ画線が、縦横に文字空間に閃光を放つ。爽風が吹き抜けるような明るい紙面には、濃い緑の若葉をつけた杉の若木が整然と林立し、ときとして、大樹のような巨木が、重いことばを柔軟に受けとめる。

《杉明朝体の設計意図-杉本幸治》

2000年の頃であったと記憶している。昔の三省堂明朝体が懐かしくなって、何とかこれを蘇らせることができないだろうかと思うようになった。 ちょうど 「 本明朝ファミリー 」 の制作と若干の補整などの作業は一段落していた。 しかしながら、そのよりどころとなる三省堂明朝体の資料としては、原図は先の大戦で消失して、まったく皆無の状態であった。

わずかな資料は、戦前の三省堂版の教科書や印刷物などであったが、それらは全字種を網羅しているわけではない。 従って当時のパターン原版や、活字母型を彫刻する際に、実際に観察していた私の記憶にかろうじて留めているのに過ぎなかった。

戦前の三省堂明朝体は、世上から注目されていた 「 ベントン活字母型彫刻機 」 による最新鋭の活字母型制作法として高い評価を得ていた。 この技法は精密な機械彫刻であったから、母型の深さ、即ち活字の高低差が揃っていて印刷ムラが無かった。 加えて文字の画線部の字配りには均整がとれていて、電胎母型の明朝体とは比較にならなかった。

しかしながら、戦後になって活字母型や活字書体の話題が取り上げられるようになると、「 三省堂明朝はベントンで彫られた書体だから、幾何学的で堅い表情をしている 」 とか、 「 理科学系の書籍向きで、文学的な書籍には向かない 」 とする評価もあった。

確かに三省堂明朝体は堅くて鋭利な印象を与えていた。 しかし、それはベントンで彫られたからではなく、昭和初期の文字設計者、桑田福太郎と、その助手となった松橋勝二の発想と手法に基づく原図設計図によるものであったことはいうまでもない。

世評の一部には厳しいものもあったが、私は他社の書体と比べて、三省堂明朝体の文字の骨格、すなわち字配りや太さのバランスが優れていて、格調のある書体が好きだった。 そんなこともあって、将来何らかの形でこの愛着を活用できればよいがという構想を温めていた。

三省堂在職時代の晩期に、別なテーマで、辞書組版と和欧混植における明朝活字の書体を様々な角度から考察した時、三省堂明朝でも太いし、字面もやや大きすぎる、いうなれば、三省堂明朝の堅い表情、即ち硬筆調の雰囲気を活かし縦横の画線の比率差を少なくした 「 極細明朝体 」 を作る構想が湧いた。

ちなみに既存の細明朝体をみると、確かに横線は細いが、その横線やはらいの始筆や終筆部に切れ字の現象があり、文字画線としては不明瞭な形象が多く、不安定さもあることに気づいた。 そのような観点を踏まえて、全く新規の書体開発に取り組んだのが約10年前 「 杉本幸治の硬筆風極細新明朝 」 即ち今回の 「 杉明朝体 」 という書体が誕生する結果となった。

ひら仮名とカタ仮名の 「 両仮名 」 については、敢えて漢字と同じような硬筆風にはしなかった。 仮名文字の形象は流麗な日本独自の歴史を背景としている。 したがって無理に漢字とあわせて硬筆調にすると、可読性に劣る結果を招く。 既存の一般的な明朝体でも、仮名については毛筆調を採用するのと同様に「 杉明朝体 」 でも仮名の書風は軟調な雰囲気として、漢字と仮名のバランスに配慮した。

杉明朝体 」 は極細明朝体の制作コンセプトをベースとして設計したところに主眼がある。 したがって太さのウェートによるファミリー化の必要性は無いものとしている。 一般的な風潮ではファミリー化を求めるが太い書体の 「 勘亭流・寄席文字・相撲文字 」 には細いファミリーを持たないのと同様に考えている。

杉明朝体 」 には多様な用途が考えられる。例えば金融市場の約款や、アクセントが無くて判別性に劣る細ゴシック体に代わる用途があるだろう。 また、思いきって大きく使ってみたら、意外な紙面効果も期待できそうだ。

《杉明朝体設計者-杉本幸治氏の略歴》

東京都台東区下谷うまれ。終戦直後1946年 ( 昭和21) 印刷・出版企業の株式会社三省堂入社。  本文用明朝体、 ゴシック体、 辞書用の特殊書体などの設計開発と、 ベントン機械式活字母型彫刻システムの管理に従事し、 書体研究室、 技術課長代理、 植字製版課長を歴任。 またその間、 晃文堂 ( 現・株式会社リョービイマジクス ) の明朝体、 ゴシック体の開発に際して援助を重ねた。「 本明朝体 」 の制作を本格的に開始し、 以来30数年余にわたって 「 本明朝ファミリー 」 の開発と監修に従事している。 「 タイポデザインアーツ 」 主宰。



処暑を迎えました。お元気ですか?

ことしの8月23日は、二十四節季のひとつ「処暑」とされ、暑さがやわらぐころとされます。おおむね、甲子園の高校野球が準決勝戦から決勝戦のころ、TVのカメラが外野の芝生に飛び交う赤トンボを捉え、アナウンサーが、

「気がつけば、もう赤トンボが舞う季節になっています」

という「常套句」を聞くのをひそかな楽しみとしていました。

ところがことしは、太平洋高気圧とやらがやたら元気だそうで、暑かったですね。高校野球の決勝戦でも、赤トンボが飛翔する姿はとらえていませんでした。それでも昨夏は元気が無かったアブラ蝉が街路樹でうるさく鳴き、サルスベリが深紅の花をたくさんつけています。まだまだ夏、真っ盛りのこのごろです。

朗文堂の夏ですが、梅雨明けから一気に猛暑・酷暑となり、そんな中で《新宿私塾第16期》《活版カレッジ第6期》が夏休みもなく、熱く熱く繰り広げられていました。そして社員一同、書物づくりに、デジタルタイプの制作・監修に、Adana-21Jの出荷にと、慌ただしい日々をおくっております。

新町活版所/新街私塾跡の碑

諏訪公園にたつ本木昌造像

堂主、福地櫻痴誕生の地で錯乱 !?

その「アダナ・プレス倶楽部」ですが、倶楽部の有志が、この猛暑の最中に「長崎さるく――長崎方言でブラブラ歩き」にでかけました。大河ドラマが龍馬長崎編に突入した直後とあって、長崎は町をあげての龍馬ブームに沸きかえっていましたが、アダナ・プレス倶楽部はあくまでも《近代活字版印刷発祥の地を訪ねて》と大まじめでした。「長崎さるく」の報告は、『アダナ・プレス倶楽部会報誌 No.10』にありますのでご覧ください。

 

新宿私塾17期生 募集受付開始

「新宿私塾」はタイポグラフィの知・技・美の領域をバランス良くまなぶためのちいさな教育機関です。書物と活字づくり、すなわち「タイポグラフィ」の 550 年におよぶ魅力的な歴史をまなび、本格的なタイポグラフィの教育と演習を通じて、あたらしい時代の要請に柔軟に対処する能力を身につけた、タイポグラフィの前衛を養成します。

詳細はこちら

「新宿私塾」は設立から8年余の歳月を有し、現在は第16期生が意欲的な学習を続けています。今回募集する第17期生は、2010年9月―11年3月までの、半年間、24回の講座が予定されております。

定員10名で、お申し込み順に受付させていただきます。
受講料30万円のうち、申込金3万円を指定口座に振り込んでいただき受付完了となります。

先ずはメールにてお問い合わせください。
件名/新宿私塾17期申し込み
お名前、住所、電話(携帯可)そして略歴をお書きください。
講義の際に参考とさせていただきます。

受信後必ず返信をさせていただきます。

詳しく知りたいというかたはどうぞ電話連絡をしてください。
担当根岸が対応させていただきます。