新宿私塾第22期生の皆さん(2013年04月02日)
《新宿私塾第22期、スタート》
例年になくはやく櫻が開花した春でした。
おりしも春爛漫、若葉が萌え、花が咲き、鳥が歌い舞い、いのちが輝く、とても良い季節の2013年04月02日[火]、新宿私塾第22期が開講しました。
新宿私塾第22期生は、これまでの塾生諸君とおなじように、とても意欲的で、向上心と個性のつよい若者、それも珍しく男性がたくさんあつまりました。
まだ03月05日に修了したばかりの、きわめて活発かつ賑やかだった21期生のむくもりが、あちこちにのこっているような教場でした。
それでも早速、新宿私塾第22期、第1回目の講座では、カリキュラムの説明につづいて、制限時間各自1分間の自己紹介があって、ここに集まった塾生同士が、年齢も経歴も職場・学校環境などがさまざまなことに、塾生諸君はあらためて驚いたようです。これが新宿私塾の魅力のひとつでもあります。
すなわちここには、現役の藝術大学・美術大学の学生もいます。もちろんすでに造形者としての職業人も、異分野で活躍する職業人もいます。
それでも造形者、タイポグラファとして、いっそうの向上をめざすという一点において、こころざしをおなじくする仲間であることを確認します。
ですから30分ほどの短い開塾セレモニーのあいだに、次第に緊張がゆるみ、笑い声ももれるようになりました。
みじかい開塾式のあとは、いきなり、たくさんの資料が机上にならび、パソコン映像を併用しながら「タイポグラフィをまなぶこととは」の講義がはじまりました。
「形而上の文と、形而下の字」「コミュニティとコミュニケーション」……。一見むずかしそうなテーマも、実例と資料をもとに諄諄ととかれていきました。
新宿私塾では、タイポグラフィにおける「知・技・美」のバランスのよい学習をモットーとしています。それはまた「知に溺れず、技を傲らず、美に耽らず」という、つよい自戒をともないます。
新宿私塾第22期は、早春の2013年04月02日にスタートし、早秋の2013年09月10日に修了します。この半年のあいだ、塾生の皆さんがおおきな収穫が得られるように、講師陣はもとより、200名をこえた「新宿私塾修了生」の皆さんも、精一杯の努力と応援をいたします。
《恒例の 新宿私塾第22期カリキュラムの表紙デザインの紹介》
新宿私塾第22期カリキュラム 表紙 (Design : 講師 杉下城司さん)
新宿私塾第22期カリキュラムの表紙は Jean François Porchez(ジャン・フランソワ・ポルシェ)の「パリジーヌ Parisien シリーズ」 が中心です。
新宿私塾では、半年間の受講期間のあいだに、和文活字でも欧文活字でも、どちらでもかまわないのですが、できるだけ「My Favorite Type ── わたしのお気に入りの活字書体」を獲得することが勧められます。
もちろん、世上の評価がたかい活字書体でも、まったく無名の活字書体でも、「はやり書体」でも一向にかまいません。むしろどんな活字書体にも避けがたく付着している「長所と短所」をみつけだして、「長所をいかし、短所を制御する能力」がとわれます。
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ジャン・フランソワ・ポルシェ(Jean François Porchez 1964-)
フランスのパリに本拠地「Typofonderie 」を置くポルシェは、欧米やわが国のタイプ・ベンダーが、一種の踊り場現象をむかえて、統廃合による混乱と混迷のさなかにある現在、もしかすると、もっともアクティブに活動しているタイプデザイナーであり、デジタルタイプ製造所が、フランソワ・ポルシェと、1994年に設立されたパリの「Typofonderie」かもしれません。
ポルシェの名前がひろく知られたのはフランスの夕刊紙『ルモンド Le Monde』のための企業制定書体『Le Monde Journal 』の発表でした。その後「Typofanderie」を開設したポルシェは、精力的にフランス電話局や、パリ交通局などの多くの企業や団体の制定書体をつくりました。
さらに本格派タイプデザイナーとしての力量を発揮したのは、ヤン・チヒョルトがフランス活字「Garemond」を、ドイツ高等印刷組合の依頼をうけて、当時の活字自動組版システムに整合させてリ・デザインした「サボン Sabon」を、「Sabon Next」として改刻したことかもしれません。
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「Sabon Next」のとおい源流は、1455年ころ、ヴェネツィアのアルダス・マヌティウス工房のローマン体活字「De Aetna」に発し、1545年からギャラモン(Claude Garamond c.1500-61)が独自の設計によって活字父型と活字母型を製造して、出版物にもちいたものです。
ギャラモンの没後から、その活字製造原型はネーデルランド地方に売却され、ながい流浪の旅にでていました。
その情報は『朗文堂Website』のタイプコスミイクの片隅にひっそりと「組版工学研究会 Type Review 1-3」として丁寧に記録されています。
それは21世紀を迎えた、もう10年以上も以前に、タイポグラフィ・ジャーナル『ヴィネット』シリーズとして企画されながら、資料(おもにデジタルタイプの全リーズを揃えるには、残念ながら高額すぎて……)がそろわずに、刊行をみなかったものでした。
その第一章は筆者(片塩二朗)による「Linotype Library Platinum Collection 嬉しくて、頭のいたい時代がはじまった」と題して、あたらしい21世紀の「活字」の展開をすこし大胆に記録したものです。
すなわち、こんにちの世界規模における、おおきなタイプ・ベンダーの統廃合と低迷をある程度見通した記述ですが、時局をかたったものだけに、さすがに執筆から12年余を経た現代では有効性が半減しています。
【リンク:robundo type cosmique 嬉しくて、頭の痛い時代がはじまった 片塩二朗】
第二章には河野三男氏による「Linotype Library Platinum Collection Sabon Next サボン-改刻の歩みやまず」があります。これは相当の長文ですが、いまでも新鮮で興味深い記事です。欧文活字に関心のあるかたはぜひともご覧ください。
【リンク:robundo type cosmique サボン-改刻の歩みやまず 河野三男】
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今回「新宿私塾第22期カリキュラム」の表紙をかざった書体は、フランソワ・ポルシェのデザインによるもので、同氏のアトリエ「Typofonderie 」が販売している「Parisine Office Std.」です。
そのシリーズのうち、ここには「パリジーヌ・オフィス・スタンダード・イタリック」と、「パリジーヌ・オフィス・ボールド・イタリック」が使用されています。
「Parisine パリジーヌ」とは聞きなれないことばです。「パリジャン/パリッ子」は、仏「Parisien」、英「Parisian」ですので、おそらくはポルシェの造語とおもえますが、まだ確認はしていません。それでもいかにもパリッ子らしい、エレガントでエスプリがきいた書体であり、リガチュアのセットが丁寧に製作された活字書体といえるでしょう。
現在ジャン・フランソワ・ポルシェの書体は、ネット販売環境が整備されたこともあって、Websiteをつうじての販売が中心となっています。その情報は、以下のURLに詳しく紹介されています。
【リンク:jean francois porchez フランソワ・ポルシェのオフィシャルサイト】
【リンク:Print Center Gallery -jean-francois porchez アドビ社の日本語版】