《 新宿私塾第29期、さわやかな秋の風のなか、意欲満満でスタートしました 》
隣接する新宿御苑の遊歩道に金木犀のかおりがかすかにただよい、さまざまな秋の艸花が咲きそろった2016年09月27日[火]、新宿私塾 第29期が開塾いたしました。
教場にはまだ終了したばかり、異色の人材で、きわめて熱気のあった前期<新宿私塾28期生>の熱気がのこっていましたが、ここにあらたなタイポグラフィの俊英を迎えました。これから半年間、ほぼ正月休みもなく新宿私塾は開講され、早春の2017年03月14日[火]に終了します。 講師、塾生の先輩ともども、全力であたらしいタイポグラフィの前衛を育成するために努力しますし、25回の講座は、いずれも内容の濃いものとなっています。
半年後、自信にあふれた塾生の皆さんの、お顔と、お姿を、再度紹介できたら幸せです。
新宿私塾では、タイポグラフィにおける 「 知 ・ 技 ・ 美 」 のみっつの領域で、バランスのよい学習をモットーとしています。
それはまた 「 知に溺れず、技を傲らず、美に耽らず 」 という、つよい自戒をともないます。
この半年のあいだ、塾生の皆さんがおおきな収穫が得られるように、講師陣はもとより、200名を優にをこえた 「新宿私塾修了生」 の皆さんも、精一杯の努力と応援をいたします。
《 恒例 新宿私塾第29期 カリキュラム 表紙デザインの紹介 》
新宿私塾 第29期 カリキュラム 表紙 ( Design : 講師 杉下城司さん )
新宿私塾 第29期 カリキュラムの表紙は、デジタルタイプの<タインハルト>という欧文書体です。
新宿私塾では受講期間のあいだに、和文活字でも、欧文活字でも、どちらでもかまわないのですが、できるだけ 「 My Favorite Type ― わたしのお気に入りの活字書体 」 を獲得することが勧められます。
もちろん、世上の評価がたかい活字書体でも、まったく無名の活字書体でも、「はやり書体」 でも一向にかまいません。 むしろどんな活字書体にも、避けがたく付着している 「 長所と短所 」 をみつけだし、「 長所をいかし、短所を制御する能力 」 がとわれます。
────────── 杉下城司さんのコメント
新宿私塾29期の書体は、2009年にリリースされた、スイスのオプティモ・タイプファウンドリーのフランソワ・ラッポ(François Rappo, Optimo Type Foundry )による <タインハルト>という書体です。
この書体は20世紀初頭のグロテスクをモデルにしています。 <タインハルト>という書体名は、ロイヤル・グロテスクという書体を手がけたフェルディナンド・タインハルト(Ferdinand Theinhardt)にちなんで命名されました。(ちなみにロイヤル・グロテスクもベルトルドより復刻されています)
このロイヤル・グロテスクは、アクチデンツ・グロテスクを制作する際にベースとされた書体です。そしてアクチデンツ・グロテスクはノーマル・グロテスクを、ノーマル・グロテスクはノイエ・ハース・グロテスク、後のヘルベチカを制作する際に参考にされた書体です。
サンセリフ体がはじめて活字書体見本帳に掲載されたのが、ちょうど200年前の1816年、イギリスのキャズロン活字鋳造所のものとされています。200年前とはいえ五百数十年の歴史を有する活字セリフ体に比べると、サンセリフ体はまだ歴史が浅いのかもしれませんが、サンセリフ体もまた脈々と受け継がれていることがわかります。
21世紀に入りデジタルフォントも多様な姿を見せています。ヘルベチカやユニヴァースのような、サンセリフ体の頂点と思われた書体にも新しい提示がなされています。 今回の使用書体であるタインハルトのように、19世紀から20世紀にかけて使われた、金属活字初期のサンセリフ体を見直した書体も続々とリリースされていますので、今後のサンセリフ体の動向がますます楽しみです。 [杉下城司]