【新宿私塾】 新宿私塾 第28期がうららかな陽光のもとでスタートしました

私塾28期開始 Web16.4.5_第28期入塾resize《 新宿私塾第28期、櫻花爛漫の春、意欲満満でスタートしました 》
隣接する新宿御苑の、櫻、ミモザ、山吹などがあでやかに花をつけた04月05日、新宿私塾 第28期が開塾いたしました。

これから半年間、ほぼ夏休みもなく新宿私塾は開講され、爽秋の09月20日に終了します。
その間講師、塾生の先輩ともども、全力であたらしいタイポグラフィの前衛を育成するために努力しますし、25回の講座は、いずれも内容の濃いものとなっています。
半年後、自信にあふれた塾生の皆さんの、お顔と、お姿を、再度紹介できたら幸せです。

DSCN8614DSCN8609DSCN8619新宿私塾では、タイポグラフィにおける 「 知 ・ 技 ・ 美 」 のみっつの領域で、バランスのよい学習をモットーとしています。 それはまた 「 知に溺れず、技を傲らず、美に耽らず 」 という、つよい自戒をともないます。
この半年のあいだ、塾生の皆さんがおおきな収穫が得られるように、講師陣はもとより、200名を優にをこえた 「新宿私塾修了生」 の皆さんも、精一杯の努力と応援をいたします。

《 恒例 新宿私塾第28期 カリキュラム  表紙デザインの紹介 》
カリキュラム表1
新宿私塾 第28期 カリキュラム 表紙  ( Design : 講師 杉下城司さん )

新宿私塾 第28期 カリキュラムの表紙は、デジタルタイプの < ブリーセリフ  Bree Serif > です。
新宿私塾では受講期間のあいだに、和文活字でも、欧文活字でも、どちらでもかまわないのですが、できるだけ 「 My Favorite Type ― わたしのお気に入りの活字書体 」 を獲得することが勧められます。

もちろん、世上の評価がたかい活字書体でも、まったく無名の活字書体でも、「はやり書体」 でも一向にかまいません。 むしろどんな活字書体にも、避けがたく付着している 「 長所と短所 」 をみつけだし、「 長所をいかし、短所を制御する能力 」 がとわれます。

──────── 杉下城司さんのコメント
新宿私塾28期のカリキュラムに使用している書体は、英国レディング大学出身のべロニカ・ブリアン(Veronika Burian)と、ホセ・スカジオネ(Jos.ANi Scaglione)による、チェコのインディペンデント系タイプファウンドリー「タイプトゥギャザー  TypeTogether」の「ブリーセリフ  Bree Serif」です。

2008年にサンセリフ体の「ブリー」がリリースされているのですが、このブリーはタイプトゥギャザーのロゴにも使われているほどで、彼らのフラッグシップというべき書体だと思います。彼らはこの書体をハンドライティングの影響を受けていて、アップライト・イタリックだとしています。こうした手書きの動きを内在・外在化するローマン系サンセリフ体といえる考え方は、昨今多くの書体で生かされています。

ブリーセリフは2013年にリリースされたブリーと対になるファミリーです。名前に「セリフ」がついているためローマン体をイメージしますが、セリフ体というよりもスラブセリフ体であり、ほとんどコントラストが無いため、サンセリフ体にセリフがついたようなニュアンスです。
そのセリフはストロークを形成する一部のような作りであり、細いウエイトでは重たい感じはなく、むしろ流れるような手書きの良さが加味できていますし、太いウエイトではしっかりと存在感のあるセリフとなっています。
また片側だけにある微細なブラケットはペンの動きを感じさせます。アップライト・イタリックという呼び名がうなずけます。

イタリック体では、このセリフがスクリプトのように次のキャラクターにつながるストロークと化しています。
アップライトも、イタリックもサンセリフ体の弱い部分を補えていて、テキストでの使用を助けているといえるのではないでしょうか。

21世紀初頭におけるこうしたスラブセリフ系やローマン系サンセリフ体は、さらに進化しているようでその展開が楽しみです。
かつてスタンリー・モリスンが「フェリシティ」で試したスロープト・ローマン体を完全に実現できなかった理由として、
「イタリック体にはカリグラフィ的な古風な要素がいまだにつよくて、将来のタイポグラフィにおいても、その地位を保ち続ける力のあることを証明している」(『活字とエリック・ギル』)としました。
昨今のサンセリフ体の開発はスロープト・ローマン体の考え方とは逆の発想で再考されているようでもあり興味深い傾向です。

【 参考URL : http://www.type-together.com/Bree