ポストカード postcard と クリスマス Christmas

DSCN3943 DSCN3921《 黄金週間 ゴールデンウィークに入りました。皆さまお元気ですか?》
例年この長期休暇、ゴールデンウィークの期間中は〈 朗文堂 〉 と 〈 アダナ ・ プレス倶楽部 〉 の WebSite 双方ともに訪問者が減少します。 長期休暇の乏しいわが国のことですから、皆さまは、旅行に、帰省にと、楽しくゴールデンウィークをお過ごしのことと存じます。

ところでこの休暇を、かつては 「 黄金週間 」 と呼んで、その直前になると、新聞紙面などには賑やかに見出しが躍っていました。 それがいつの間にか 「 ゴールデン ウィーク 」 に転じ、ことしの新聞の見出しには 「 GW 」 と、全角欧文 !? で、縦組みになったタイトルが踊っていました。
このすっかりおなじみとなった 「 ゴールデンウィーク 」 を、『 広辞苑 』 にあたってみました。

【 ゴールデン-ウィーク 】
( 和製語 golden week ) 4月末から5月初めの休日の多い週。 黄金週間。

どうやら 「 ゴールデンウィーク 」 は、「 黄金週間 」 が転じたもので、いわゆる 和製英語 であり、英語圏での会話や表記には使わないほうが安全のようです。
なお 「 ゴールデン-ウィーク 」 のダッシュは、音節 ( syllable ) をあらわすものであり、この語間に 中黒 や ダッシュ は不要です。

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というわけで、せっかくの 「 ゴールデンウィーク 」 に、本コーナーをご訪問していただいたゲストの皆さまに、しばしばあやまって使われている英語表記をご紹介します。
ひとつは 「 郵便はがき ポストカード 」 で、ひとつは 「 クリスマス 」 です。

使用する資料は、英和辞書として高い評価がある 『 研究社 新英和大辞典 』 で、これは画像紹介の許可をいただいておりjます。
もうひとつは、『 THE OXFORD DICTIONARY for WRITERS AND EDITORS 』 (1981,  p.318 ) です。
後者は、オックスフォード大学出版局の刊行書で、執筆者と編集者にむけて、あまりに日常化していて、ついうっかり、あぁ知らなかった、というたぐいの表記、間違えやすい英単語を中心に、簡潔に紹介したものです。
DSCN3937ここには 「 post  郵便 」 から派生した英単語を列挙して、「 abbr.   略称 」、「 しばしばスペースを入れて二単語にされていますが、一単語ですよ 」、「 語間にハイフンを入れて表記してください 」 などと説明されています。
すなわち 『 THE OXFORD DICTIONARY for WRITERS AND EDITORS 』 では、

「 郵便はがき ポストカードは postcard と一単語にしてください。 post card のように二単語では無いのでご注意を。 略語は p.c. です」

この問題はわが国でもふるくから一部の識者から指摘されており、朗文堂 WebSite では 〈 タイポグラフィ実践用語集 は行 葉書・端書・はがき・ハガキ 〉で、ずいぶん以前から触れています。
ところが、いまだに展覧会シーズンともなると、各種の造形者、とりわけ 「 印刷設計士/グラフィックデザイナー」
の皆さまから 「 Post  Card 」 と、堂堂と印刷された 「 Postcard 」 をたくさん頂戴しております。

いかがでしょう。 「 過ちて 改めざるを 是を 過ちと謂う 」、「 過ちては 改むるに憚ることなかれ 」 といいます。 この名詞語は、名にし負う天下のオックスフォード大学の執筆者や編集者でも「ついうっかり」なのですから臆することはありません。
そして 「 ゴールデンウィーク 」 が終わったら、「 そんなことは、昔から知ってたさ 」 、「 そんなの常識だろう 」 と、平然と、どっしり構えてください。

それでもおひとりでも、正しく 「 postcard 」 をもちいれば、まずは大切なクライアントに迷惑をかけることが無くなり、やがてちいさな波紋がどんどん拡大して、わが国の造形者が恥をかかなくなる日も近いことでしょう。
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いっぽう 「 クリスマス 」 は少しやっかいです。
それは某国語辞書 『 広辞苑 』 が、どこか意地になって、クリスマスの項目で 「 Christmas,  Xmas 」 を説明しているからです。

それに牽かれたのでしょうか、わが国の一部に 「 X’mas 」 と表記する向きがありますが、これは省略を重複したもので完全に間違いです。

またギリシャ語由来の 「 Xmas 」 には、キリスト教徒の一部に抵抗を感ずる向きがあって、わたくしも20年ほど前に来社したアメリカの知人から、
「ここに来るまでに X’mas,  X’mas Sale のディスプレイがたくさんあった。 あれはクレイジーだ。  Xmas, エクスマスにも、発音からわたしには抵抗がある。 それよりどうして日本では、11月のはじめから Christmas Sale をはじめるのだ 」
と責められたことがありました。

宗教や宗派、まして発音までがからむと、わたくしの手にあまります。
まして某国語辞典の存在もあって困惑していましたが、『 研究社 新英和大辞典 』 に、わかりやすく 「 クリスマス 」 の解説がありました。 長文にわたりますので、その紹介にあたって、画像紹介の許可を研究社からいただくことができました。
以下は少少時間をいただいて、〈 タイポグラフィ ・ ブログロール花筏 〉でご紹介いたします。そして、ことしの暮れは、せめて 「 X’mas,  X’mas Sale 」 を見なくてすむように念願いたします。

【 関連情報 : 朗文堂好日録-037 なにかとあわただしい師走です。【再掲載】 ポストカード postcard と クリスマス Christmas 2014年12月04日