版画家として、教育者として、ひろく活躍されている笹井(奥村)祐子さんが、はじめてご主人の彫刻家・奥村浩之さんとともに、朗文堂 アダナ・プレス倶楽部を訪問されました。
おふたりの出会いはメキシコとうかがいましたが、いまも奥村さんはメキシコを本拠地として、石と格闘する日日をおくられています。メキシコと日本、なにぶん遠距離ですし、なかなかおふたりがお会いできないのが気の毒です。
奥村さんは、今秋、東京で開催予定の個展準備のために久しぶりに帰国され、ご来社いただきましたが、はじめてお会いするかたとはおもえないほど、すっかり意気投合。とてもうれしい出会いでした。
造形者同士の考えていることは、版画であれ、彫刻であれ、活版印刷(タイポグラフィ)であれ、多くの共通点を持つものだと実感した一日でした。
そしておみやげにいただいた、香りたかいメキシコ珈琲のおいしいことといったら!
左) 奥村浩之 Hiroyuki Okumura さん。右) 笹井(奥村)祐子 Yuko Okumura-Sasai さん
奥村浩之 Hiroyuki Okumura さん。笹井祐子 Yuko Okumura-Sasai さんの作品集。
左) Hiroyuki Okumura 1999 - 2013
右) Yuko Sasai 1988 - 2013
笹井祐子 「 赤 の 声 」 リトグラフ
笹 井 祐 子 SASAI Yuko
<略 歴>
1966年 東京都生まれ
1990年 日本大学藝術学部美術学科卒業
1992年 日本大学藝術学部研究所版画コース修了
2010年 日本大学海外研究員(平成21年度 メキシコ)
現在、 日本大学 藝術学部 教授
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奥 村 浩 之 Okumura Hiroyuki
<略 歴>
1963年 石川県に生まれる。
1986年 金沢美術工芸大学美術学部彫刻科卒業
1988年 金沢美術工芸大学大学院修士課程修了
1989年- メキシコに渡る
現在、メキシコを本拠地に、彫刻制作に没頭
【 YouTube 2:42 奥村浩之 彫刻を語る https://youtu.be/US5XMIHnT5I 】
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“ FSPONTÁNEIDAD ” わ が 宝
奥 村 浩 之
明るい光と静かな風の流れに包まれながら、コーヒーを楽しむ。
そこから一日が始まる。 毎日の繰り返しでありながら、ゆっくりと流れるメキシコ時間の豊かさを改めて実感できるときであり、「今日もよい一日だ」と爽やかになってくる。 メキシコ時間もメキシコ風ライフスタイルもすっかり身についた。
メキシコに渡ってもう24年。日本から見て地球の反対側にあるメキシコ文化に誘いかけられ、僕の求める彫刻がそこにあるのでは、と希望にもえて渡ってきた。 僕は若かった。
彫刻の道は僕には運命だったのかもしれない。幼い頃から墓石が身近にあり、大小や組合せもとりどりに積み上げられた石の群れは、幼い心にもこの世ならぬもの、モノでありながら内に力を秘め、何かを語りかけてくるもののように見え、親しいなかにも畏れ多いもの、日常でない世界へ誘いかけるものと感じていた。
石には古い古い記憶がこもっている。彫刻を始めたとき、石との対話は僕には必然だった。古代遺跡、巨石遺跡など、石は圧倒的な力で語りかけてくる。 時間を超えたメッセージを封印した石は内蔵したものを気づかせようとクリエーションへと誘いかけてくる。
僕は幼少のころから親しんだ石と共同制作すること、石の呼びかけを造形すること、それを創作の原点とし、石を生涯の同志としてきた。
日本での石との対話から、さらに大きな石との格闘を求めて渡ったメキシコでは、石の他に、メキシコ時間との出会いがあり、ESPONTÁNEIDAD (のびのびとした) という言葉が、何をすべきか、僕を大きく成長変貌させた。
メキシコの豊かな大地と歴史、メキシコの人々の心が育て上げたメキシコ時間の精髄で、その真意を知ったとき、僕は真に自由になり、メキシコと同化したことを自覚した。
ESPONTÁNEIDAD は僕を僕たらしめ、僕の宝となった。 そしてそれは彫刻表現の方向をも導いてくれ、さらにもう一つの言葉 「GOZOSO」 (楽しい) も連れてきてくれた。
石を媒介にして日本からメキシコへ、そして24年目に再び日本へ、日本の繊細さとメキシコの ESPONTÁNEIDAD、このふたつを糧にして、文化の交錯 ・ 融和 ・ 習合する地点が僕の道となるだろう。 24年目の結節点が新しい出発点となることを願って、ここに僕の足どりを作品集としてまとめてみた。 (2013年 夏)
奥 村 浩 之
Okumura Hiroyuki
<略 歴>
1963年 石川県に生まれる。
1986年 金沢美術工芸大学美術学部彫刻科卒業
1988年 金沢美術工芸大学大学院修士課程修了
1989年- メキシコに渡る
<個 展>
1991年
「Estructuras del Subconscientes」 ラモン アルバ デ ラ カナル 画廊 (ハラパ, メキシコ)
「El Medio de los Silencios」 AP 画廊 (ハラパ, メキシコ)
1994年
「Canto Tierra」 ベラクルス州 画廊 (ハラパ, メキシコ)
1998年
「Erosiones de la Mano」 エントレ エストッウデイオ イ ガレリヤ 画廊(プエブラ, メキシコ)
「Emociones Arcaicas」 キン 画廊(メキシコ シティー, メキシコ)
1999年
「Eras」 キン 画廊(メキシコ シティー, メキシコ)
「Antes del Hombre」 日本文化センター(パリ,フランス)
2000年
「Augurios」 キン 画廊(メキシコ, シティー, メキシコ)
「Elementos」 ピナコテカ デイエゴ リベラ 画廊(ハラパ, メキシコ)
2001年
「Eco」 エントレ エストッウデイオ イ ガレリア 画廊(プエブラ, メキシコ)
「Hiroyuki Okumura」 アラン ボーン 画廊(アリゾナ, アメリカ)
「Corriente de Piedra」 キン 画廊(メキシコ シティー, メキシコ)
「Minamoto-manantial de origen」 日本大使館内 日本文化インフォメイション センター (メキシコ シティー, メキシコ)
2002年
「Resonancia de Piedra」 日本文化センター(パリ, フランス)
「Pertenencia de la Tierra」 キン 画廊(メキシコ シティー, メキシコ)
2003年
「Inside of all」 ハワード スコット 画廊(ニューヨーク, アメリカ)
2005年
「Paisajes Terrenales」 カサ ディゴ リベラ 美術館(グアナフアト, メキシコ)
「Hiroyuki Okumura 2005」 ラモン アルバ デ ラ カナル 画廊(ハラパ, メキシコ)
2006年
「Corazon de la Tierra」 ベルティセ 画廊(グアダラハラ, メキシコ)
「Materia: Virtual Continente」キン 画廊 (メキシコ シティー, メキシコ)
2008年
「Messenger」 ハワード スコット 画廊(ニューヨーク, アメリカ)
「Trozos de la vida」 キン 画廊(メキシコ シティー, メキシコ)
2009年
「Hiroyuki Okumura」 ベルティセ 画廊(グアダラハラ, メキシコ)
2010年
「Tiempo Sagrado」 ラモン アルバ デ ラ カナル 画廊(ハラパ, メキシコ)
2013年
「Nest of Wind」 ハワードスコット 画廊(ニューヨーク、アメリカ)
<グループ展>
1991年
「Nuevos Tiempos en la Plastica」 アリアンサ フランセサ(ハラパ, メキシコ)
1992年
「La plasica Veracruzana 1992」 アンパロ 美術館(プエブラ, メキシコ)
「Primera Bienal Monterrey」 フェムサ 美術館(モンテレイ, メキシコ)
1993年
「Siete Escultores en Veracruz」べラクルス州 画廊(ハラパ , メキシコ)
1997年
「Los Caminos de la Forma y del Volumen」ベラクルス州 画廊(ハラパ, メキシコ)
「El Primer Salon Nacional de Arte Visuales -Seccion Bienal Tridimencional 1997」
エスパシオ デ セントロ ナショナル デ アルテ(メキシコ シティー, メキシコ)
2001年
「Outside Japan : Three Sculptors」 ハワード スコット 画廊(ニューヨーク, アメリカ)
「Ichigo Ichie」 大学付属チョッポ美術館(メキシコ シティー, メキシコ)
「Quinta Bienal Monterrey FEMSA」 フェムサ 美術館(モンテレイ, メキシコ)
「Laberinto」 アルテ コンテンポラニョ デ ハラパ 画廊(ハラパ, メキシコ)
2004年
「Proyecto – Merida de Yucatan: Cuidad de la Escultura」 (メリダ, メキシコ)
2005年
「Reflejos de la Alteridad」キン 画廊 (メキシコ シティー, メキシコ)
2006年
「White II」 ハワード スコット 画廊(ニューヨーク, アメリカ)
2009年
「12‘ Festival Cultural de Mayo – Japon 」 ベルティセ 画廊(グアダラハラ, メキシコ)
「Los Murmullos del tiempo」 UAM 大学 スール 画廊(メキシコ シティー, メキシコ)
2011年
「Selva de Cristal」 大学付属チョツポ美術館(メキシコ シティー、 メキシコ)
2012年
「Esultura de pequeno formato y obra grafica」 アルテオイ画廊(メキシコ シティー、メキシコ)
2013 年
「Geometrismo escultorico mexicano 」 アルテオイ画廊(メキシコ シティー、メキシコ)
<コレクション>
1988年 金沢美術工芸大学 (石川県, 日本)
1997年 チヤパス自立大学 (チヤパス, メキシコ)
1998年 べラクルス州立彫刻公園 (ハラパ, メキシコ)
1999年 日本文化センター (パリ, フランス)
2000年 ソソポル 画廊 (ソソポル, ブルガリア)
2001年 金沢21世紀美術館 (石川県, 日本)
2002-04年 ホテル ガレリア プラサ (べラクルス, メキシコ)
2004年 グルーポ チェドラウイ セントラル オフィス (メキシコ シティー, メキシコ)
2005年 スイミング スクール アクア X (ハラパ, メキシコ)
2007年 ホテル カサレイナ (プエブラ, メキシコ)
2009-13年 べラクルス自立大学 音楽堂 (ハラパ, メキシコ)
2011年 ラ カサ デ ベラクルス (ハラパ, メキシコ)