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【会員からの情報】 英国 BBC News, テムズ川河床から<Doves Type>を発掘と報じた。ー and more

19世紀世紀末から20世紀の初頭、ロンドンテムズ河畔の
アッパーマル通りにあった、印刷と製本工房が Doves Press でした。
Doves Press は、Cobden – Sanderson と Emery Walker を中心に
Arts and Crafts movement の中核的な存在として知られ
多くの忘れられない図書をのこしています。

Doves Press の工房は、俗に Doves Type とされる
フィリップ ・ プリンスの活字父型彫刻による
独自のハウスフォントを所有していましたが、
1917年(大正06)に、両者のあいだのいさかいがもとで
工房裏のテムズ川にすべての活字と活字複製原型が
投げ捨てられたとされています。

それがこのたび、潜水作業をともなった涙ぐましい調査によって
活字の一部が発見されたことを
英国 BBC News が動画入りで報告しました。
[ 情報提供 : タイポグラフィ学会会員 K 氏 ]

【 元記事 英国BBC : Lost typeface printing blocks found in river Thames 】 動画あり 01:03
【 この項初出 : [会員からの情報] 英国 BBC News, テムズ川河床から<Doves Type>を発掘と報じた。2015年02月13日

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松本八郎_顔松本八郎 遺影 ( 大枝隆司郎氏提供 )

いまはむかし  ロンドンのテムズ河畔のわずかな砂地をさすらうひとりの日本人がいた。
その名を松本八郎という。
松本はときおり砂地にかがみこんでは、それを
掘りおこしたり、あちこちを眺めまわしたりしていた。
松本はここに、かつてのダヴス ・ プレスの活字の一本でもみつけたいとやってきた。

松本八郎からその報告をきいた、もうひとりの日本人がいた。
ならばとばかり、子供と潮干狩りにいった際のちいさな熊手をたずさえ
やはりテムズ河畔の砂地を三時間ばかり掘り起こしてあるいた。 すっかり腰が痛くなった。
千葉の幕張海岸で、
まだ潮干狩りができたころの、ふるいはなしである。

ふたりの酔狂な日本人の挑戦はむなしくおわった。
それだけに今回の Doves Type 発見の報告はうれしかった。
そして松本八郎、この世にありせしば、いかにかこの Doves Type 発見の報を喜んだだろうとおもわずにいられないのである。

松本八郎は、朗文堂に公刊書 『 エディトリアルデザイン事始 』 ( A5判 224ページ 1989年09月08日)をのこした。
9784947613219エディトリアルデザイン事始 』 の刊行はもう四半世紀も前になる。 さほど売れた図書ではない。 だからいまでも30冊ほどの在庫があるほどのものだ。
しかし1960-70年代うまれのグラフィックデザイナーのおおくは、本書でエディトリアルデザインを知り、その初歩をまなんだはずである。 図書とはもともとそんな存在である。

松本八郎は 『 文字百景 』( 朗文堂 ) にも、三冊にわたって寄稿した。
033  いま再び 「 理想の書物をもとめて」 ケルムスコット ・ プレス逍遙
039  いま再び 「 理想の書物をもとめて」 ダヴス ・ プレス エッケ ・ マンダスの余波
041  いま再び 「 理想の書物をもとめて」   エルンスト ・ ルートヴィッヒ ・ プレッセ探訪
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『 文字百景 』 全冊特別合本。 『 文字百景 』 全冊揃いは、印刷図書館、国会図書館などのほか、朗文堂 ( 恐縮ながら貸与不可 ) でご覧いただけます。

松本八郎は2014年09月に逝去した。
松本は晩年の10年ほど、おもに出身地の関西方面に知己を得て、そちらでの活動がおおかった。 そのためであろうか、追悼記の刊行もあったし、ブログでの追悼文もみる。

ところが在京の先輩 ・ 知人から、やつがれに、なにがなんでも松本八郎の追悼文を < 花 筏 > にでも書けと責めたてられている。
やつがれ、松本八郎とはほぼ同世代。 だから勝手に先に逝ったというおもいがないでもない。 いずれにしても、もうすこし気持ちと資料整理の時間をいただきたい。

その間、スタッフが松本八郎著の三冊の 『 文字百景 』 を PDF データーにしてくれた。
ご高覧いただければ、いまや黄泉のひととなった松本八郎も喜んでくれそうである。

【 『 文字百景 』 松本八郎著分三冊 matumoto hatirou  7.5 MB 】

テムズ河畔の図033 いま再び 「 理想の書物をもとめて」 ケルムスコット ・ プレス逍遙 ―― 松本八郎 1996年12月

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◎ イギリス  アーツ&クラフツ運動

ロンドン、アッパーマル12-26番地 19世紀末-20世紀初頭
【 この項初出 : タイポグラフィ あのねのね*014 烏兎匆匆 アルダス工房、ドベルニ&ペイニョ、アーツ&クラフト運動 】 一部を抜粋紹介

テムズ河畔、馬車はもちろん、車も入れない、せまいせまい路地がアッパーマル通り。
故 松本八郎は、このせまい路地を<印刷村>と勝手に名づけて呼んでいた。

19世紀中葉から水運にめぐまれたこの路地に造形者が集まり、産業革命の負の側面を解消し、労働の喜びを賛歌するひとつの運動体を形成した。 それが 「 アーツ & クラフツ運動 」であり、「 プライベート ・ プレス運動 」 であった。

著名なケルムスコット ・ プレスハウス、ウィリアム ・ モリスの自宅跡は、 この路地の入口、かつての馬車のUターンのスペース ( 現在は駐車場 ) の前に、テムズ河畔に面してあり、路地にはダヴス ・ プレスなどの著名な印刷所と、製本 ・ 皮革工芸 ・ ステンドグラス ・ 刺繍の工房などが軒をつらねていた。

アーツ & クラフツ運動と、ウィリアム ・ モリスに関する紹介は、わが国でも多すぎるほど多い。 やつがれも英国 ・ 米国 ・ わが国の先行資料をそれなりにもっている。
さりながら、多くの執筆者は、このせまい路地に立ったことがあるのだろうか……、とおもわせる記述が多い。 なによりも、この路地のテムズ川にせりだした 《 パブ ・ ダヴ 》 の珈琲はかなりうまいのだが、たれもそれにはふれないなぁ。
ピクチャ 1
Lost typeface printing blocks found in river Thames
7 February 2015 Last updated at 11:15 GMT

Printing blocks for a typeface called Doves Type have been discovered in the River Thames.
The font has not been used for nearly a century as the printing type blocks, used to print letters, were thrown into the river in 1917.

Nick Wilmshurst reports.