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Viva la 活版ーすばらしき活版 2014年 <Viva la 活版 薩摩 dé GOANDO>-Report 01 開催のお知らせ

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Viva la 活版 ―― すばらしき活版
いよいよ 開催が迫りました ― 2014年11月1日[土], 2日[日], 3日[月・祝] 3日間
重要記念物 木村嘉平活字 特別展示 ・ 講演会 ・ ギャラリートークをはじめ
見逃せない大型企画がどんどん進行中です。
詳細情報は <朗文堂 アダナ ・ プレス倶楽部 ニュース> にてご紹介します。
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【 名 称 】 Viva la 活版 薩摩 dé GOANDO
【 会 期 】 2014年11月1日[土], 2日[日], 3日[月・祝] 3日間
【 時  間 】   開場 8 : 30 ― 閉場 17 : 30
【 会 場 】 仙巌園〔磯庭園〕  尚古集成館本館 展示室
鹿児島県鹿児島市吉野町9700-1
【 主  催 】  朗文堂  アダナ・プレス倶楽部

尚古集成館 http://www.shuseikan.jp/  仙巌園  http://www.senganen.jp/
朗文堂 アダナ・プレス倶楽部  http://robundo.com/adana-press-club/       

※ 会期中は同敷地内の「尚古集成館別館 展示室」においても、重要文化財「木村嘉平による鋳造活字と関連資料」の特別企画展示をご覧になれます。
※ 入館には隣接している仙巌園 センガンエン/尚古集成館 ショウコシュウセイカン との共通入館料(大人1,000円、小・中学生500円)が必要となります。

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<GOANDO ごあんど-は、薩摩ことばで「ございます」、「ございますぞ」の意です>

写真 : アダナ・プレス倶楽部 鹿児島支部広報部長/六花窯 横山 博
タイトルデザイン : アダナ・プレス倶楽部会員/バッカス 松尾

【Viva la 活版 薩摩 dé GOANDO-開催にあたって】

朗文堂/アダナ・プレス倶楽部では、手動式小型活版印刷機 Adana-21J  および 手動式小型活版印刷機 Salama-21A を中核としながら、活版印刷の今日的な意義と、活字組版の実践を中心とした、その魅力の奥深さの普及をつうじて、身体性をともなった造形活動を重視し、ものづくりの純粋な歓びの喚起を提唱してまいりました。

活版印刷の今日的な意義と、その魅力の奥深さを追求するためには、活版印刷術の技術の獲得と、知識の修得はもちろんのこと、「ものづくり」と真剣に向き合う姿勢と環境も重要です。
その活動の第一段階として2008-2012年の五年間、例年五月の連休に、都合四回にわたって< 活版凸凹フェスタ >を開催してまいりました(2011年は東日本大震災のため中止)。

また昨年からは、活版関連イベント開催が盛んになった首都圏をいったんはなれ、多くのアダナ・プレス倶楽部会員が存在している地方からの振興をめざすあらたな段階として、<Viva la 活版-すばらしき活版>の普及活動にはいりました。
その第一弾として、昨2013年は07月の三連休に、北海道の美唄ビバイ市にある野外彫刻庭園「アルテ ピアッツァ 美唄」において、< Viva la 活版 Viva 美唄 >を開催いたしました。
【Youtube : Viva la 活版  Viva 美唄

 ことしは、重要文化財「木村嘉平の活字関連資料」を所蔵し、活版印刷術をはじめ、近代産業の揺らんの地となり、ふるい歴史と文化を有する、鹿児島市 「尚古集成館本館(重要文化財)展示室」において、11月の三連休に< Viva la 活版 薩摩 dé GOANDO >を開催いたします。
イベント名称の一部となった「GOANDO -ごあんど」は、薩摩ことばで「ございます」、「ございますぞ」という意味です。
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「尚古集成館 しょうこしゅうせいかん」は、ふるくは歴代の鹿児島薩摩藩主:島津家の別邸であった景勝地「仙巌園 せんがんえん」に隣接して、幕末の薩摩藩主・島津斉彬ナリアキラによって一連の近代工場群のひとつの「機械工場」として建造されました。
島津斉彬は西欧諸国のアジア進出に対応して近代産業の育成を進め、富国強兵を真っ先に実践しました。それらの事業の中心となったのが、磯(錦江湾の海岸べり)に建てられた反射炉、機械工場などの工場群です。
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 「尚古集成館」外観(2013年06月早朝 大石 薫撮影)
隣接の仙巌園と、桜島、錦江湾の景観は、下記の画像集でお楽しみください。

その地に1865年(慶応元)に竣工した石造りの「機械工場」は、その後重要文化財に指定され、現在内部は島津家の歴史・文化と、集成館事業を語り継ぐ博物館「尚古集成館」として親しまれています。
その「尚古集成館」の一隅の展示室を<Viva la 活版 薩摩 dé GOANDO>の会場とします。
また同館に隣接する「尚古集成館別館」は、これも重要文化財である「木村嘉平の活字関連資料」を所蔵し、近代活字版印刷術をはじめとする近代産業の揺らんの地でもありました。
このような歴史と文化を有する、鹿児島県都、鹿児島市にある「名勝 仙巌園 尚古集成館本館」において、11月初旬の三連休に<Viva la 活版 薩摩 dé GOANDO>を開催いたします。

会場の前面におおきくひろがる紺碧の海/錦江湾と、火の精霊サラマンダーさながら、天たかく火焔を噴きあげる活火山「桜島」の雄大な景観に見守られての<Viva la 活版 薩摩 dé GOANDO>の開催は、造形者の皆さまの創作意欲をかきたて、さらなる創作活動のための活力をあたえてくれることでしょう。

会場の<仙巌園/尚古集成館>は、鹿児島市中央部からは車で15-20分ほどですし、鹿児島市内各所からのバスが頻繁に運行されています。
鹿児島空港からは高速道利用の車か、市内までのバスで40分ほどです。
アダナ・プレス倶楽部会員の皆さまには、アダナ・プレス倶楽部の会報誌「夏号」にて詳細をお知らせの予定です。その後も、アダナ・プレス倶楽部、朗文堂双方のWebSiteでも、随時情報を公開してまいります。

<Viva la 活版 薩摩 dé GOANDO>の開催期間の、11月1日[土], 2日[日], 3日[月・祝]は、爽秋のもっともよい行楽のときでもあります。
おりしも仙巌園では「菊まつり」が予定され、また鹿児島市内では南九州最大の祭とされる「おはら祭」の開催時期とも重なっています。
アダナ・プレス倶楽部の会員の皆さま、ならびに全国の活版印刷愛好家の皆さま、ことしの秋は、歴史と情熱の地、薩摩に大集合でごあんど ! !
【リンク : 名勝 仙巌園(磯庭園) 】 【リンク : 尚古集成館 】 【リンク : 仙巌園と桜島 画像集 】

<参考資料:前回の Viva la 活版 Viva 美唄の映像記録> ────────────
◎ Viva la 活版 Viva 美唄  14:40

Viva la 活版-すばらしき活版。5 年間 4 回にわたり開催された <活版凸凹フェスタ> にかえて、2013年07月北海道美唄市 アルテ ・ ピアッツア美唄で開催された活版イベントの記録。
【関連URL : 活版アラカルト  Viva la 活版 Viva 美唄 レポート01-12

【活版カレッジ】 2014年夏期生 定員となりました!

活版カレッジ朗文堂 アダナ・プレス倶楽部の直接指導により
本格的な活字版印刷術の
知・技・美の三領域をバランス良く学べます。

活版カレッジでは、科学と学術的根拠にもとづいた実践を基盤として、活版印刷機 Salama-21A,  Adana-21J によるケーススタディ・メソッドをふんだんに駆使し、あたらしい時代の活版印刷の現場での、現実的な課題の解決方法を学ぶことを目的とします。
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写真上) 活版カレッジ 2013年冬期生の講習風景
写真下)活版カレッジ  2014年春期生の講習風景

「活字版印刷術 Typographic Printing」は、印刷による視覚伝達技術のなかでも、文字情報の主要な複製・伝達の手段として「活版印刷・活版・カッパン」などと呼ばれてひろく親しまれてきました。 そして今、印刷複製技術の原点として560年余におよぶ長い歴史を有し、メディアの変遷とともにさまざまな浮沈を経た「活版」が、ふたたび熱く注目され、関心をあつめています。 活版カレッジは、あたらしい活版ユーザーに向けた活字版印刷機 Salama-21A,  Adana-21J の製造・発売をおこなっているアダナ・プレス倶楽部が開講する活版講座です。

──── 活版カレッジ  2014年 夏期講座 募集のお知らせ  定員となりました!
◎ 徹底した少人数の講座のため、お申込先着順とさせていただきます。
◎ 受講希望者多数の場合には、次期講座への予約をお勧めする場合がございます。
◎ 次期の開催日時と募集の開始は、この アダナ・プレス倶楽部ニュース にてお知らせいたします。
◎ 本年は<Viva la 活版  薩摩 dé GOANDO>ほか、イベントと活版ゼミナールが秋に重複しております。そのため秋期講座はお休みとさせていただきます。
◎ 来年01月からの冬期講座は昼間部での開講を予定していますので、 今期をのがされますと次回の夜間講座での受講は 来年の春期講座以降となります。この機会にぜひご受講ください。
◎ 《活版カレッジ》を受講希望の方は、お気軽に、できるだけ早めに、アダナ・プレス倶楽部の @メール まで受講希望の意向をご連絡ください。一般公募に先だってあらためてご案内をさしあげ、受講の最終確認をさせていただきます。積極的なご参加をお待ちしております。

                    • 活版カレッジ 2014年夏期講座
                      【講座教室】  東京都新宿区新宿 2-4-9 中江ビル  4FB 朗文堂内(通学制)
                      【講   師】  朗文堂 アダナ・プレス倶楽部
                      【開講日時】  毎週木曜日(夜間部) 19:00-22:00 (時間超過の場合も有)
                      3 ヶ月間(毎月3 回、全9 回)
                      【定    員】    定員 4 名
                      【受  講  料】  66,000円(税込・教材費込)
                      【支払い期日】 開講02週間前まで(中途退講の場合でも受講料の返却はいたしません) 【講座日程】
                      07月10日        活版印刷概論
                      07月17日        和文端物組版
                      07月24日        文 選
                      08月07日        和文ページ物組版
                      08月21日        和文と欧文の違い
                      08月28日        欧文書体の歴史
                      09月04日        欧文スペーシング
                      09月11日        多色刷り 1
                      09月18日        多色刷り 2
                • ──────────────
                  受講をご希望の方は <アダナ・プレス倶楽部 @メール >まで 下記の事項をご連絡ください。
                  1.件名 : 「活版カレッジ」2014年春期 受講希望  2.お名前  3.ご連絡先 郵便番号、ご住所、電話番号、@メールアドレス  4.活版印刷のご経験の有無。
                  その他、お差し支えなければ、性別、ご年齢などもお書き添えください。 各回の基本的な指導内容は統一させていただきますが、参加者それぞれのご経験やご関心をお教えいただければ、できる限り講習内容として反映いたします [お教えいただいた情報は、朗文堂/アダナ・プレス倶楽部の内部だけで使用します]。
                  ご参加お待ちしております。

【終了いたしました!たくさんのご来場ありがとうございました。 4月29,30日】活版ルネサンスフェア。話題の新機種 Salama-21A もご紹介。

活版ルネサンスWeb初日は曇天、二日目はあいにくの天候となりましたが、両日ともたくさんのご来場者をお迎えして、《第16回活版ルネサンスフェア》は盛況裡に終了いたしました。ご来場ありがとうございました。
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今回は新機種 Salama-21A の初登場もあって、いっときは狭い会場が大混雑の様相を呈しました。
また昨年から、アダナ・プレス倶楽部は東京でのイベント《活版凸凹フェスタ》を中断して、全国縦断イベント《Viva la 活版》シリーズを展開中のため、久しぶりに拝見する懐かしいお顔もおおく、両日とも展示・販売会というより、さながら、活版造形者の皆さまとの心弾む交流会の様相を呈しておりました。
活版ルネサンスの歩みの、たしかな手応えを感じさせていただいた二日間でした。
簡略紹介はすこしお時間をいただいて、おもに アダナ・プレス倶楽部ニュース欄 でご報告いたしますが、「交流会」のたのしい様子は、〈 活版アラカルト 〉コーナーで紹介いたします。

活版ルネサンスWeb
第16回 活版ルネサンスフェア
と き * 2014年04月29日[火・祝]-30日[水] 13:30―19:00

ところ * 朗 文 堂 4 F-B
160-0022  新宿区新宿2-4-9 中江ビル4F
Telephone : 03-3352-5070
[ 来場ご案内マップ ]

春うらら、櫻前線が北上中です。いよいよ創作の春がはじまりました。
皆さまお元気にてご活躍のことと存じます。
《活版ルネサンスフェア》 は、通常春と秋の 2 回にわたって開催され
アダナ・プレス倶楽部会員、活版造形者、活版ファンの皆さまを対象に
活版印刷関連の新製機器と、資材、そして一部は中古品の
活版印刷関連機材・資材の展示即売会です。
手狭な会場ながら、貴重アイテム、マニアックな商品が溢れています!
春の創作シーズンに、このチャンスをぜひともお役立てください。
[東京都公安委員会許可 第304380708865号]

話題沸騰 !!
新登場 アダナ式小型活版印刷機 Salama-21A
ぜひとも会場で実機をご覧ください。

Salama 4cWebsala22630 sala22657 sala22663 sala22651Salama図面 寸法/天地 475mm, 左右 376mm, 奥行最大 563mm  重量/19.3kg

新登場の 〈 アダナ式小型活版印刷機  Salama-21A 〉 はもとより、新品の活版印刷関連機器、独自企画開発商品とともに、活版印刷所で長年の使用に耐えてきた、優秀な中古品もドッサリ用意いたしました。

これらは現在では生産中止となった活版関連機器や、個人では入手しにくい、
◎ 適度な乾燥速度、印刷に気品を「青口アオクチ墨活版インキ」(見本展示・受注製造)
◎ インキ・ローラーの清拭と、長期使用にむけた「ゴム・ローラー・メンテナンス剤」
◎ 印刷作業が本格化したかたに好適な、おおきなメタルベース代用の「アルミ作業台」(リユース)
◎ 〈活字はいっさい使わない。すべて樹脂凸版でいく!〉、超割り切り型のユーザーのご希望で開発した新製品「メタルベース一体型チェース」(見本展示・受注製造)
◎ 新開発 圧盤用ラバー・クッション胴張りセット
などの器材や資材を含みます。
すべて実物をご覧いただき、その特徴をご理解のうえご採用いただけます。

活版印刷(Type printing, Letter press)のサポーターとして、アダナ・プレス倶楽部ならではの、懇切丁寧な使用方法の解説もいたしますので、狭い会場ながら魅力溢れる展示販売会となります。
春の創作シーズン、展覧会シーズンの到来に合わせて、創作に活用できそうな機材の補充、実制作での疑問の解決、技術の向上に、どうぞこの 《活版ルネサンス フェア》 をご利用ください。

《第13回 活版ルネサンスフェア》の会場の模様

《今回の主なご紹介アイテム  順不同 》
── 商品の一部に、現品限りのものがございます。売り切れの際はご容赦ください。

新開発 アダナ式小型活版印刷機 Salama-21A/新開発 圧盤用ラバー・クッション胴張りセット/活版専用ピンセット新旧/ジャッキとジャッキハンドル新旧/KMT全自動活字組版機(日本語モノタイプ)活字母型庫8pt, 9pt, 10pt明朝体/罫線 各種/くじら尺/特製組みつけ台/金属インテル各種/活版用強力磁石/特製組版ステッキ、中古組版ステッキ/ファニチュア各種/工具類(ブレース鋏・鳥居鋏・罫切り鋏)/罫切り器/各サイズ込め物セット/活字倍数尺/特製ムラ取りハンマー&ならし木セット/ブロッキング防止パウダー/特白ウェス/無臭洗い油/インキ・ハンド・ローラー/インキべら/インキ・パッド/ゴム・ローラー・メンテナンス剤/オイルベース活版用インキ各色(1キロ缶、特製200グラム缶)/活版用墨青口インキ/ラバー・ベース・レタープレス用インキ/版画用メタルベース(19.68ミリ、19.70ミリ)/樹脂版用メタルベース(21.89ミリ、23.39ミリ)/特製五号サイズメタルベース箱入りセット/特製カタ仮名活字アラタ1209/輸入欧文活字スキームセット/輸入オーナメント活字各種/凸版用スプレーボンド/特製文選箱/中古文選箱新旧各種/文選箱ストッパー/セッテン/特製文選箱立て/特製ミニ組みゲラ/中古組みゲラ/特製ミニ置きゲラ/中古置きゲラ/特製ミニスダレケース棚/活字サイズ照合キット

────  その他掘り出しもの、在庫限りの貴重アイテムがどっさり。
皆さま、友人・知人と誘いあわせてのご来場をお待ちしております。

活版カレッジ 2014年春期講座 スタートしています!

 

活版カレッジ朗文堂 アダナ・プレス倶楽部の直接指導により
本格的な活字版印刷術の 知・技・美の三領域を
バランス良く学べます。

活版カレッジでは、科学と学術的根拠にもとづいた実践を基盤としながら、活版印刷機 Adana-21J,  Salama-21A によるケーススタディ・メソッドをふんだんに駆使し、あたらしい時代の活版印刷の現場での、現実的な課題の解決方法を学ぶことを目的とします。

なにしろ定員四名という徹底した少人数の講座が〈活版カレッジ〉ですから、開講後まもなくから、活版造形に挑む仲間としての連帯意識が芽生えるのでしょうか。打ち解けて、和気藹藹とした、にぎやかきわまりないお仲間になります。
DSCN3834 DSCN3833 DSCN3831「活字版印刷術 Typographic Printing」は、印刷による視覚伝達技術のなかでも、文字情報の主要な複製・伝達の手段として、ひろく「活版印刷・活版・カッパン」などと呼ばれて親しまれてきました。
そして今、印刷複製技術の原点として560年余におよぶ長い歴史を有し、メディアの変遷とともにさまざまな浮沈を経た「活版」が、ふたたび熱く注目され、関心をあつめています。
活版カレッジは、あたらしい活版ユーザーに向けた活字版印刷機 Salama-21A  の製造・発売をおこなっているアダナ・プレス倶楽部が開講する活版講座です。

活版カレッジ  2014年次期講座
◎ 3 ヶ月 木曜日 全9回(毎月3回) 19:00-22:00

※各コース定員4名(お申込先着順)
※ 毎月第1-3週木曜日の開講。 第4-5週は基本的にお休みです。
※ GW・夏期休暇などに際して若干の変動があります。
◎ 徹底した少人数講座のため、お申込先着順とさせていただきます。
◎ 受講希望者多数の場合には、次期講座への予約をお勧めする場合がございますのでご了承ください。
◎ 次期の開催日時と募集の開始は、アダナ・プレス倶楽部ニュース にて随時お知らせいたします。
◎ 《活版カレッジ》受講ご希望の方は、お気軽に、できるだけ事前に、アダナ・プレス倶楽部の @メール まで受講希望の意向をご連絡ください。
一般公募に先だって、あらためてご案内をさしあげます。 積極的なご参加をお待ちしております。

  • 活版カレッジ
    【講座教室】 東京都新宿区新宿 2-4-9 中江ビル   4FB 朗文堂内(通学制)
    【講   師】 朗文堂 アダナ・プレス倶楽部

【活版カレッジ】 2014年春期 応募締めきりました。

活版カレッジ朗文堂 アダナ・プレス倶楽部の直接指導により
本格的な活字版印刷術の
知・技・美の三領域をバランス良く学べます。

活版カレッジでは、科学と学術的根拠にもとづいた実践を基盤としながら、活版印刷機 Adana-21J によるケーススタディ・メソッドをふんだんに駆使し、あたらしい時代の活版印刷の現場での、現実的な課題の解決方法を学ぶことを目的とします。
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「活字版印刷術 Typographic Printing」は、印刷による視覚伝達技術のなかでも、文字情報の主要な複製・伝達の手段として、ひろく「活版印刷・活版・カッパン」などと呼ばれて親しまれてきました。
そして今、印刷複製技術の原点として560年余におよぶ長い歴史を有し、メディアの変遷とともにさまざまな浮沈を経た「活版」が、ふたたび熱く注目され、関心をあつめています。
活版カレッジは、あたらしい活版ユーザーに向けた活字版印刷機 Adana-21J の製造・発売をおこなっているアダナ・プレス倶楽部が開講する活版講座です。
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活版カレッジ  2014年春期講座

◎ 3 ヶ月 木曜日 全 9 回(毎月 3 回) 19:00-22:00
  ※ 各定員4名(お申込先着順)
◎ 徹底した少人数講座のため、お申込先着順とさせていただきます。
◎ 受講希望者多数の場合には、次期講座への予約をお勧めする場合がございますのでご了承ください。
◎ 次期の開催日時と募集の開始は、この アダナ・プレス倶楽部ニュース にて随時お知らせいたします。
◎ 《活版カレッジ》受講をご希望の方は、お気軽に、できるだけ事前に、アダナ・プレス倶楽部の@メールまで受講希望の意向をご連絡ください。一般公募に先だって、あらためてご案内をさしあげます。

  • 木曜日コース(夜間部)19:00 ─ 22:00
    2014年 春

    04月10日(木) 活字版印刷概論
    04月17日(木) 和文端物組版
    04月24日(木) 文選
    05月08日(木) 和文ページ物組版
    05月15日(木) 和文と欧文の違い
    05月22日(木) 欧文書体の歴史
    06月05日(木) 欧文スペーシング
    06月12日(木) 多色刷り1
    06月19日(木) 多色刷り2

【講座教室】  東京都新宿区新宿 2-4-9 中江ビル
                      4FB 朗文堂内(通学制)
【講   師】  朗文堂 アダナ・プレス倶楽部
【受  講  料】  66,000円(税込・教材費込)
【支払い期日】 開講2週間前まで
          (中途退講の場合でも受講料の返却はいたしません)
次期講座にもご参加お待ちしております。

Viva la 活版 Viva 美唄 レポート01-12 アダナ・プレス倶楽部コラム欄に掲載しました。

美唄コラム緑uu 美唄はがきDMuu

《Viva la 活版 Viva 美唄では活版造形者の作品展示会、講演会、各種の活版ゼミナールを開催》
「アルテピアッツァ美唄」は、地元の北海道美唄市出身で、世界的な彫刻家として知られる、安田 侃ヤスダ カンさんがいまなお創り続ける、大自然と彫刻が相響した野外彫刻と諸施設からなる彫刻美術館です。
「アルテ ピアッツァ美唄」はまた、自然と人と芸術のあたらしいありかたを模索し、提案し続け、訪れる人びとに、自分の心を深く見つめる時間と空間を提供している素晴しい施設です。

この「アルテ ピアッツァ美唄」の「アート・ストゥディオ」と、「アート・ギャラリー」の一画をお借りして、〔Viva la 活版 Viva 美唄 ── すばらしき活版、すばらしい美唄〕では、活版造形者による作品展示と、各種タイポグラフィゼミナールをおこないました。

皆さまもこれを機会に、お気に入りの書物を一冊持って、北海道美唄の地「アルテ ピアッツァ美唄」にお出かけください。そして彫刻と自然が織りなすシンフォニーの中で、のんびりと読書や思索に耽ったり、大切な人とのゆっくりしたひとときを過ごしたりしてください。
真の造形活動や、こころ豊かな人生について見つめなおすために必要な、贅沢な時間と空間がそこにはあります。
bibaisakuhin_0002uu bibaisakuhin_0007uu bibai_561uu bibai_445uuuu bibai_586uu bibai_657uu DSCN0945uu P1000688uu P1000609uu《Viva la 活版 Viva 美唄 全記録》
【会  期】  2013年7月13日[土]―15日[月・祝] 9:00―17:00
【会  場】  ARTE PIAZZA BIBAI アルテピアッツァ美唄
        アート・ギャラリーおよびアート・ストゥディオ
        北海道美唄市落合町栄町  http://www.artepiazza.jp/
【入場料】  無  料
【後  援】  タイポグラフィ学会
【主  催】   朗文堂 アダナ・プレス倶楽部

《いささか旧聞に属しますが、Viva la 活版 Viva 美唄の全記録を別コーナーに掲載しました》
〔Viva la 活版 Viva 美唄 ── すばらしき活版、すばらしい美唄〕の報告は、これまでも本コーナーなどでも随時掲載してまいりました。また、まとまったカタチでのご紹介の場を〔アダナ・プレス倶楽部 コラム〕に予定しておりましたが、同コーナーのバージョンアップなどがあって全体報告が遅延しておりました。
したがいまして、いささか旧聞に属して恐縮ですが、ようやく 〔アダナ・プレス倶楽部 コラム〕 に「Viva la 活版 Viva 美唄 レポート01 プロローグ-レポート12 エピローグ」にわけて   掲載が完了いたしました。
ここに新コーナー 〔リンク : アダナ・プレス倶楽部 コラム 〕 をあらためてご紹介いたします。ブログロールの構造上、掲載順が降順(No.12-01)となっておりましたが、昇順(No.01-12)に変更してご紹介いたします(No.11-12は過去ログに収納されています)。

《本2014年、Viva la 活版 ── すばらしき活版展は、鹿児島で開催いたします》
本年の〔Viva la 活版 ── すばらしき活版展〕の会場と開催時期に関するご報告です。
本年は北の大地から一転して、焔をふきあげる活火山・桜島のちかく、南の鹿児島を会場として、11月初旬の開催に内定いたしました。皆さまの積極的なご参加とご来場をお待ち申しあげます。
この詳細は、これからもニュース欄、コラム欄の双方で随時お知らせいたします。

フランス国立印刷所 新シンボルロゴ 火の精霊サラマンダーと 王のローマン体 ローマン・ドゥ・ロワ

フランス王立印刷所フランス国立印刷所カードフランス国立印刷所シンボルロゴ《Étude pour un caractère : Le Grandjean 動画紹介 YouTube 3:53  撮影協力:中川順雄氏》

ローマン・デュ・ロア01 ローマン・デュ・ロア02最初に動画で「王のローマン体、王家のローマン体  ローマン・ドゥ・ロワ or ローマン・ド・ロァ Romains du Roi」をご覧いただきました。この活字書体の本格的な紹介は、ステージを容量のおおきな「タイポグラフィ・ブルグロール 花筏」にうつして、近近ご紹介いたします。

フランス国立印刷所 新ロゴ《フランス国立印刷所 Imprimerie Nationale の新シンボルロゴの紹介 YouTube 1:42》

磯田01uu磯田04uu磯田02uu上掲写真は、フランス国立印刷所における 『Étude pour un caractère : Le Grandjean』 の製造過程を説明するために特別に取材許可を得た写真。この大冊の書籍のために、フランス国立印刷所では、元図となる銅版印刷を実施して、それに説明と活字印刷見本を付与した特装本60部を市販用とした。
それをもとに活字父型をあらたに彫刻し、それから打込(押しこみ)活字母型を製造して、あらたな活字鋳造をおこなった。
したがって 『Étude pour un caractère : Le Grandjean』 は、大型印刷機をもちいて、銅版印刷、活字版印刷、箔押し作業などが、特別製造による手漉き紙のうえに実施されている。印行などのちいさな印刷面積の部分は小型ハンドプレスをもちいている。
[取材・撮影協力:磯田敏雄氏] 
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フランス国立印刷所では、先般シンボルロゴを近代化して、Websiteに動画をアップしました。同所のあたらしいシンボルロゴのモチーフは、創立以来変わらずにもちいられてきた「サラマンダー」です。
このサラマンダーには TV CM でお馴染みの「ウーパールーパー」という愛称がありますが、正式には メキシコサラマンダー(Ambystoma mexicanum)とされ、もともとはメキシコの湖沼に棲む、両生綱有尾目トラフサンショウウオ科トラフサンショウウオ属に分類される有尾類だそうです。その愛称ないしは流通名が「ウーパールーパー」とされています。

ところで、灼熱の焔からうまれるイモノ、「鋳造活字」をあつかうタイポグラファとしては、こと「火の精霊 ── サラマンダー or サラマンドラ or サラマンドル」と聞くと、こころおだやかではありません。今回はフランス国立印刷所からのメッセージも届きました。

Viva la 活版 Viva 美唄タイトルデザイン04 墨+ローシェンナ 欧文:ウンディーネ、和文:銘石Buu

サラマンダーとは、欧州で錬金術が盛んだった中世のころに神聖化され、パラケルススによって「四大精霊」とされたものです。
四大精霊とは、地の精霊・ノーム/水の精霊・オンディーヌ/火の精霊・サラマンダー/風の精霊・シルフです。このことは欧州ではひろく知られ、アドリアン・フルティガーは、パリのドベルニ&ペイニョ活字鋳造所での活字人としてのスタートのときに、「水の精霊/オンディーヌ Ondine」と名づけた活字を製作していました。
この欧文活字「オンディーヌ」と、和文電子活字「銘石B」 をイベントサインとしてもちいたのが《Viva la 活版 Viva 美唄》でした。
【リンク:花筏 朗文堂-好日録032 火の精霊サラマンダーウーパールーパーと、わが家のいきものたち

2008年アダナプレス倶楽部年賀状 裏2008年アダナプレス倶楽部年賀状 表アダナプレス倶楽部年賀状におけるサラマンダー

アダナプレス倶楽部では、2008年の年賀状で「活版印刷術とサラマンダーのふしぎな関係」をご紹介しました。ここにあらためて、フランス国立印刷所であたらしく再生されたシンボルロゴをご紹介いたします。
[取材・翻訳協力:磯田敏雄氏]

《Toute la vérité sur la Salamandre —— サラマンダーの事実のすべて》
フランス国立印刷所公開フライヤーより抜粋       
       考古学事典と紋章学の説明からの引用 
       1901年 ケリー・ド・ガルレー(Kelley de Galurey)
空想上のトカゲ、サラマンダーは、いつも激しい火焔と、高い火柱に囲まれている。
その形姿は、背が丸く、首と尻尾は長く、先は尖って、背中は持ち上がっていると想像されている。そして四足の足は、ギリシャ神話の グリフォン(Griffon, Gryphon) に似せて描かれている。
Griffin ウキペディアより
すなわち紋章に登場する多くのサラマンダーは、その実態とはかけ離れ、むしろ神話に描かれたサラマンダーと多くの関係がある。神話でのサラマンダーは、怪奇な姿で、体長がながく、尖った尾を有している。四本の足は、横から見るとおなじ長さになっていて、水かきはついていなく、爪も四本の指についていない。
体はくすんだ黒色で、生生しい黄色の斑点がちりばめられている。両脇は結節で、蛇にも似た粘り気のある体液が染み出ている。
わが家の怪獣?! サラマンダー/ウパルンⅡ世【リンク:サラマンダーのアルビノ種、ウーパールーパー画像集 —— こちらは可愛い!】
【リンク:サラマンダーの画像集 —— こちらはすこし不気味なものもあります】

神話のサラマンダーは、また、おおくの寓話につつまれている。サラマンダーは紅蓮の焔の真ん中に棲息しており、もしかまれると、つよい毒に侵されるとするものだ。
ところが真実は、サラマンダーは確かに、体表から白っぽいねばねばした体液を分泌する。その量はとても多く、もしサラマンダーを炎のなかに入れても、火の熱から身を守り、なかなか死なない。この体液には、強烈な臭いと、渋い味があるが、少しも毒性はない。
それでも奇っ怪な外観と、柔らかくべとついた躰は、ふつうは有害な生物かとおもわせる。ところが実際のサラマンダーは、害意の無い生物で、弱くて臆病であり、ほとんど耳がきこえず、目も見えないのである。

古代人は、サラマンダーを炎の表象として崇めていた。
詩人たちは、愛の価値と象徴のシンボルにした。
歴史家、考古学者たちは、逆境にあっても誠実な典型の生物と見なしていた。
そして ルーバン・ジェリオ(Louvan Géliot) によれば、サラマンダーは高潔と勇気を表しているのである。

《国立印刷所の新しいシンボルロゴ —— Le nouveau logo de l’Imprimerie Nationale》
フランス国立印刷所は定款を変更して、あたらしいロゴとしてやはり「サラマンダー」の意匠を採用した。
あたらしいシンボルロゴとして、今回も神話の生物サラマンダーを選定したのは、フランス国立印刷所のながい歴史と、象徴主義とふかく結びついている。

フランス国立印刷所 新ロゴ

フランスヴァロワ朝フランス王、第9代フランソワ1世(François Ier de France,  1494-1547)は、フランスにルネサンスをもたらし、また1538年にフランス王室で印刷事業をはじめたひとである。フランス国立印刷所は、この年1538の創立をもってその淵源としている。
フランソワ1世は、みずからと、その印刷所の紋章として、フランス王家の伝統としての百合の花を象徴する王冠 【画像集リンク:フランス王家の紋章】 とともに、火焔のなかに棲息するサラマンダーを取りいれた。
そこにはまた、ギャラモン(Claude Garamond,  1480-1561)の活字父型彫刻による標語を付与した。
「Je me nourris de Feu et je L’éteins   意訳:吾は火焔をはぐくみ、それを滅ぼす」
フランス国立印刷所 旧ロゴこのサラマンダーは何世紀もの歴史のなかで、すこしずつ意匠をかえて、フランス国立印刷所の紋章としてもちいられてきた。それらの意匠変遷の記録のすべてはフランス国立印刷所にのこされているが、21世紀のはじめに、どれもが幾分古ぼけた存在とみなされ、それを「モダナイズ」する計画がもちあがり、フランス国立印刷所のデザインチームが改変にあたった。

その結果よみがえったサラマンダーは、フランス国立印刷所の伝統を継承しつつ、かぎりなく前進をつづける、あたらしいフランス国立印刷所のシンボルとして再生された。

【ご報告】『平野富二伝』刊行記念 展示・講演会

平野表紙uu

明治産業近代化のパイオニア
『平野富二伝 考察と補遺』
古谷昌二 編著
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A 4 判 ソフトカバー 864ページ
図版多数
発 行 : 朗 文 堂
定 価 : 12,000円[税別]
発 売 : 2013年11月22日
ISBN978-4-947613-88-2 C1023
平野展ポスターuu明治産業近代化のパイオニア
『平野富二伝』 考察と補遺  古谷昌二編著
刊行記念 展示・講演会
─────────
日 時 : 2013年11月30日[土]-12月01日[日]
      11月30日[土]  展示 観覧  10:00-16:30
                     著者講演会 14:00-16:00
            12月01日[日]   展示 観覧  10:00-15:00
                     掃 苔 会   10:00-12:00
      編著者・古谷昌二氏を囲んでの懇話会、サイン会は、会期中随時開催
会 場 : 日展会館
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主 催 : 平 野 家
協 力 : 朗 文 堂
後 援 : 理想社/タイポグラフィ学会/アダナ・プレス倶楽部
【詳細報告は 朗文堂花筏 にてご報告いたします】

古谷昌二氏講演2 _MG_0547uu _MG_0566uu _MG_0573uu_MG_0579uu展示3_MG_0365uu_MG_0418uu

【朗文堂 アダナ・プレス倶楽部】歳末恒例のことながら、年賀状の製作でおおわらわでした

adana年賀

《コンテンツと、活字書体の選択》
朗文堂 本体の年賀状は、すでに20年余にわたってほとんど変化のない内容とデザインによっています。
すなわち、すぐる年の新刊書籍と、新作タイプフェースの簡素な紹介に徹しています。
印刷はオフセット平版印刷で、白井敬尚さんを肝煎りとして、9-12名の造形者の皆さんと、「つけ合わせ方式」で印刷しています。経費を抑制するために、みんなが少しずつ我慢して、四六判四裁か菊判半裁で、絵柄面4色、宛名面1色という仕様です。

 いっぽうアダナ・プレス倶楽部の年賀状はおおわらわです。、例年、数ある欧文活字を、時代性によっていくつかのカテゴリーにわけ、それを歴史順に一書体ずつ選択して製作してきました。コンテンツも、その活字書体にちなんだものか、時代性を考慮しながら選択してきました。
これまでの年賀状では、ブラック・レターからはじまり、ヴェネチアン・ローマン、オールド・ローマン、トランジショナル・ローマン、モダン・ローマン、クラレンドンを経て、いよいよ今年はサン・セリフの「フランクリン・ゴシック」の新鋳造活字 24pt. のちいさなフォント・スキームを購入して使用しました。

「フランクリン・ゴシック」は、アメリカン・タイプ・ファンダース(ATF)のチーフ・デザイナーをつとめた、モーリス・フラー・ベントン(1872-1948)による活字書体です。M. F. ベントンは、200種以上の活字書体を設計した活字設計士として知られています。
このようにたくさんの活字書体を製作することができた背景には、発明家で、おなじく活字設計士でもあった、父 リン・ボイド・ベントンの開発による、いわゆる「ベントン機械式彫刻機」によって、活字父型および活字母型の製造効率が飛躍的に向上したことも見逃せません。

活版印刷時代の活字書体をたくさん紹介した、イギリス版活字書体事典『 ENCYCLOPAEDIA OF TYPE FACES 』によりますと、M. F. ベントンが「フランクリン・ゴシック」を、アメリカン・タイプ・ファンダース(ATF)からデビューさせたのは1903年のことです。
おなじ年にM. F. ベントンは、やはりアメリカン・タイプ・ファンダース(ATF)から、オルタネート・ゴシックと、エージェンシー・ゴシックも発表しています。
────────
ちょうどその頃、おなじアメリカ大陸で偉業を成し遂げたふたりの兄弟がいました。
ふたりとは、ライト家の5人兄妹の3男、ウィルバー・ライト(1867-1912)と、4男、オーヴィル・ライト(1871-1948)です。
ライト兄弟 として知られるウィルバーとオーヴィルは、奇しくも「フランクリン・ゴシック」が誕生した年とおなじ1903年に、人類初の有人動力飛行に成功しました。20世紀の初頭、まさに機械産業時代の幕開けを告げるできごとであり、あたらしい活字書体の誕生でした。

あまり知られていませんが、ライト兄弟は、飛行機の開発のほかに、活版印刷機械や活版印刷業とも、とてもゆかりの深い人物でした。飛行機の開発に成功する以前、10代の頃のライト兄弟は、活版印刷機や紙折り機をみずから製作し、取材記者もこなして、新聞『 West Side News 』の発行をしていました。
のちに「ライト&ライト印刷所」を創業して印刷業を続けるかたわら、自転車の製造・販売、そして、子供の頃からの夢であった、飛行機の開発へとつなげていきました。

今回の年賀状では、ライト兄弟の飛行実験の写真を亜鉛凸版で、そして、24pt.フランクリン・ゴシックの活字をもちいて、兄ウィルバーのことばを活字組版しました。
印刷は、活字版印刷機により、絵柄面2色3度刷り、宛名面2色2度刷りです。

  動力がなくとも飛ぶことはできる。
  しかし、知識と技術なしには
  大空を翔けることはできない。
         ――ウィルバー・ライト――

動力のない、手動式の活版印刷機をもちい、不自由で限られた活字を駆使して、活版印刷の知と技と美の研鑽をつづけているアダナ・プレス倶楽部会員の皆さまへ ────────
活版印刷の普及と存続のために、アダナ・プレス倶楽部の機材の製造と供給を支えてくださっている職人の皆さまへ ────────
すべての、身体性を伴なった「ものづくり」の現場の皆さまへ ────────
感謝と尊敬と応援の意を込めて、今年の念頭のご挨拶に代えて、このことばをお贈りいたします。

越年企画となりました。新春早早にアップいたします。

毎+水=?朗文堂 NEWS:2013年03月11日】にこんな質問を投げかけました。

上記の「字 ≒ 文字」は、ひとつの「字」です。
漢の字(漢字)というより、国字(わが国でつくられた漢風の字)、もしかしたら個人の創意、あるいはわずかなテライ、もしくは軽い諧謔ユーモアをこめてつくられた「字」かもしれません。
図版でおわかりのように、上部に「毎」をおいて、下部に「水」をおき、ひとつの「字」としたものです。

この「字 or 文・紋?」の読みかたと、ふつうの「字」の紹介は、「朗文堂タイポグラフィ・ブルグロール 花筏」に掲載するとしてきましたが、忙しさにかまけてご紹介が越年いたしました。
そのご紹介遅延のささやかなお詫びに、最近の朗文堂関連の画像情報が良くまとまっている【朗文堂花筏 画像集】をご紹介しますので、よろしければお楽しみください。
──────
もしお正月休暇を、炬燵に蜜柑でのんびりとお過ごしになるというかたは、森永チョコレートアイスクリームPARM ブランドサイト《平日のちょっと贅沢なライフスタイルマガジン Daily Premium Calendar》をのぞいてみてください。
ここに2013年11月、15回にわたるタイポグラフィ・エッセイをしるしました。その連載5回目、11月12日掲載分 「ちょっと贅沢お作法」 が下掲の図版です。中国安陽市『文字博物館』これは「甲骨文」出土地、中国安陽市に新設された「文字博物館」です。ここでの「文字」にはちょっと注意が必要です。たしかに「文字」そのものは、中国漢代にも使用例があります。ところがその意味するところは現代日本語の「文字」とはおおきくかけはなれています。

やっかいなことですが、わたしたちはいつのまにかすっかり「文字」ということばに馴れてしまい、相当な専門書にも、「甲骨文」にかえて「甲骨文字」などとしるされています。これでよければ、青銅器などにみる「金文」は「金文字」となり、つづみ形の石に刻まれた「石鼓文セッコブン」は「石鼓文字」となるはずですね。
ですから、わたしたちにとっては、この施設は「文モン or 紋モン and 字 の博物館 ≒ もん と じ の博物館」としてとらえたほうが誤解が少ないようです。
そんな予習のためにも、炬燵・蜜柑にアイスクリームを加えていただき、下記情報をご笑覧ください。
平日のちょっと贅沢なライフスタイルマガジン Daily Premium Calendar 2013年11月12日

活版カレッジ 冬期生募集終了いたしました。

活版カレッジ

朗文堂 アダナ・プレス倶楽部の直接指導により
本格的な活字版印刷術の
知・技・美の三領域をバランス良く学べます。

活版カレッジでは、科学と学術的根拠にもとづいた実践を基盤としながら、活版印刷機 Adana-21J によるケーススタディ・メソッドをふんだんに駆使し、あたらしい時代の活版印刷の現場での、現実的な課題の解決方法を学ぶことを目的とします。
────
「活字版印刷術 Typographic Printing」は、印刷による視覚伝達技術のなかでも、文字情報の主要な複製・伝達の手段として、ひろく「活版印刷・活版・カッパン」などと呼ばれて親しまれてきました。
そして今、印刷複製技術の原点として560年余におよぶ長い歴史を有し、メディアの変遷とともにさまざまな浮沈を経た「活版」が、ふたたび熱く注目され、関心をあつめています。
活版カレッジは、あたらしい活版ユーザーに向けた活字版印刷機 Adana-21J の製造・発売をおこなっているアダナ・プレス倶楽部が開講する活版講座です。

DSCN1832uu活版カレッジ前期の講座風景

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活版カレッジ  2014年冬期講座 《募集終了》

◎ 3 ヶ月 木曜日 全9回(毎月3回) 14:00-17:00
※ 各コース定員4名(お申込先着順)
※ 毎月第1-3週木曜日の開講。
   第4-5週は基本的にお休みです。
※ 年末年始・GW・夏期休暇などに際して若干の変動があります。

◎ 徹底した少人数講座のため、お申込先着順とさせていただきます。
◎ 受講希望者多数の場合には、次期講座への予約をお勧めする場合がございますのでご了承ください。
◎ 次期の開催日時と募集の開始は、この アダナ・プレス倶楽部ニュース にて随時お知らせいたします。
◎ 《活版カレッジ》受講をご希望の方は、お気軽に、できるだけ事前に、アダナ・プレス倶楽部の@メールまで受講希望の意向をご連絡ください。一般公募に先だって、あらためてご案内をさしあげます。

  • 木曜日コース(昼間部)14:00 ─ 17:00 
    2014年 冬
    01月09日(木) 活字版印刷概論
    01月16日(木) 和文端物組版
    01月23日(木) 文選
    02月06日(木) 和文ページ物組版
    02月13日(木) 和文と欧文の違い
    02月20日(木) 欧文書体の歴史
    03月06日(木) 欧文スペーシング
    03月13日(木) 多色刷り1
    03月20日(木) 多色刷り2

【講座教室】 東京都新宿区新宿 2-4-9 中江ビル
                      4FB 朗文堂内(通学制)
【講   師】 朗文堂 アダナ・プレス倶楽部
【受  講  料】 66,000円(税込・教材費込)
【支払い期日】 開講2週間前まで
               (中途退講の場合でも受講料の返却はいたしません)

今期の募集は終了いたしました。
次回講座(春期を予定)のご参加お待ちしております。

【TV番組紹介】黒船からロケットへ! ~世界初技術への挑戦~

BSジャパン
http://www.bs-j.co.jp/program/detail/22910_201312071600.html

黒船からロケットへ! ~世界初技術への挑戦~
BS JAPAN 12月7日[土] 午後4:00-4:55

黒船来航を機に「黒船と肩を並べる船を建造したい」奮起した日本人がいた。平野富二。
ペリー来航の1853年に石川島造船所を設立。現在の国内ロケット技術の基礎である。
通運丸全体通運丸模型上掲写真は、石川島平野造船所で最初期に建造された外輪式の蒸気船「通運丸」シリーズの簡易模型です(物流博物館でキットを販売。松尾篤史氏製作)。

2013年9月、日本は宇宙開発事業において大きな一歩を踏み出した。イプシロンロケットの打ち上げ成功である。
様々な新技術によって、これまでの半分ほどの費用で打ち上げが可能になり、今後新興国を中心に受注に向けた動きが活発化すると見られている。
歴史的とも言われるイプシロンロケットに生かされていたのが、実は造船で知られるIHI(旧石川島播磨造船所)の技術であった。
番組では、その秘密の数々を解き明かす。
────────────────
株式会社 IHI (旧石川島播磨造船所)の淵源は、BSジャパンの紹介のとおり、1853年(嘉永6)アメリカ使節ペリーの来航を契機に、徳川幕府が水戸藩に大型洋式帆船を建造させるために、隅田川河口にある石川島の地に造船所の開設を命じたものでした。ですから株式会社 IHI は、本年をもって記念すべき創業160年とされています。
この年には平野富二はまだ8歳の幼さで、長崎で学問をつづけていたときです。

幕末からつづいた石川島造船所は、幾多の変遷をへて、石川島修船所と石川島造兵所となり、1876年(明治9)8月31日主船寮が廃止され、内局に主船局が新設されたのにともない、旧石川島修船所の在品は、新設された海軍省主船局に所属する横須賀造船所に引き継がれ、石川島にのこされたのは、ドックとわずかな装置と建物だけになっっていました。

そんなうち捨てられようとしていた施設を、平野富二は1876年(明治9)6月14日「拝借の儀を出願」し、海軍省から9月19日に許されています[株式会社 IHI 沿革・あゆみ]。
このとき平野富二は弱冠31歳、活字と活版印刷関連機器の製造、東京築地活版製造所の運営がほぼ軌道に乗り、意欲満満、素志たる造船業に進出したことになります。[参照:『平野富二伝』古谷昌二、第六章-三 築地活版製造所の拡張と造船業への進出 p.200-]

BS JAPAN 【黒船からロケットへ! ~世界初技術への挑戦~】の番組は、12月1日に放映され、今回が再放送です。前回はイベントの最中で見逃しましたが、友人から再放送の情報をいただきました。
技術産業を背景としてのタイポグラフィを考えるのには、よい機会かとおもわれます。直前のご案内となって恐縮ですが、皆さまのご鑑賞をお勧めいたします。

『平野富二伝』刊行記念 展示・講演会終了いたしました。

《両日とも好天に恵まれ、多くの皆さまにご来場いただきました》
2013年11月30日[土]、12月01日[日]の両日にわたって開催された『明治産業近代化のパイオニア――平野富二伝』刊行記念展示・講演会(主催 平野家、協力:朗文堂、後援:理想社・タイポグラフィ学会・アダナプレス倶楽部)は、多くのご来場者をお迎えして無事に終了いたしました。
ご来場いただきました皆さま、ご協力いただきました皆皆さまのご尽力にふかく感謝いたします。
────────────────
『平野富二伝』著者:古谷昌二氏の講演会は、用意した椅子席がたりなくなるほどの盛況で、講師:古谷さんによって諄諄と説かれていく、明治産業近代化に果たした平野富二の功績の大きさに、ご来場者もあらためて驚かれたというご感想がたくさん寄せられました。

またはじめてひろく公開された平野家所蔵品は、平野富二の逝去後、関東大震災、戦禍などの大きな災禍のなかでも、平野家一門によってたいせつに守りぬかれてきた品品でした。これらの一次資料の数数に、皆さまは熱心にみいっておられました。

『平野富二伝』著者・古谷昌二氏と実兄・古谷圭一氏

『平野富二伝』会場入口 岡田c 『平野富二伝』会場 講演前 『平野富二伝』会場2 岡田C 『平野富二伝』福地・西郷 岡田cご後援いただきました タイポグラフィ学会 は、本木昌造賞平野富二賞 の両賞をもうけており、
「平野富二賞は、タイポグラフィの普及発展に著しく功績のあった個人及び団体に対するもので、その対象者は社会へのタイポグラフィの認識を高める行動及び啓蒙などにおいて、その事績が本学会にとどまらず、広く社会に貢献していると認められるものです」
としており、両賞関連資料の展示と、その活動報告をされました。

理想社 は、今回の展示・講演会にさいし、相当量作製されたパネル類の製作に協力いただき、また搬出入にもご協力いただきました。
平野富二自作短歌【動画:YouTube 3:41 活版印刷〈公版書籍印刷と端物印刷〉端物印刷 Adana-21J 】

アダナプレス倶楽部 は、いつものように「活版オジサン」(明治36年版『活版見本』東京築地活版製造所所収、電気版・ボーダーを使用)を掲げての参加でした。
今回は、平野家にのこされた池原奞(シュン、香穉カワカ)の画幅・書軸・短冊がきわめて多く、平野富二と池原奞シュンが相当親密な関係にあったとみられることにひそみ、本木昌造活字復元プロジェクトで再生した、いわゆる「和様三号活字」をもちいて、平野富二の明治20年自作短歌、
「世の中を 空吹く風に 任せ置き  事を成す身は 國と身のため」
の活字組版を用意し、小型活版印刷機 Adana-21J によってご来場者ご自身での印刷体験をしていただきました。
────────────────
《掃苔会と、通運丸。雑司ヶ谷ダラーイ船渠での進水式》
会場となった日展会館の近くには「谷中霊園」があります。ここには平野富二の巨大な顕彰碑と塋域エイイキがあり、その友人・知人、明治産業近代化に貢献されたひとびとの墓地もたくさんあります。
今回は『平野富二伝』に紹介された、石川島造船所関係のかたがたの資料も多数加わり、また幸いなことに、好天にめぐまれ、平野家ご長老の参加をふくめ、とても意義深い「掃苔会」となりました。

また展示には平野富二設立「石川島平野造船所」に源流を発する企業「株式会社 IHI 」のご協力もいただきました。
そこで展示の一環として「石川島資料館」にある、石川島平野造船所で最初に建造された、外輪式の蒸気船「通運丸」60トンなどの模型を拝借しようとしたところ、模型とはいえやはり活字とちがってそこは船で、とても気軽に移動するわけにはいかず、急遽紙製のちいさな模型を製作・展示することにしました。
通運丸模型 通運丸全体
平野富二の業績のうち、活字製造と活版印刷機器製造の分野には、インキ(英:インク)、ピンセット(英:ツィーザー)などの、オランダ語由来のことばがのこります。
もうひとつの造船・機械製造業の分野でも、やはり江戸期長崎出島からの情報発信のなごりがみられ、ふるい文献には「ダラーイ船渠」などとしるされています。
これは英語ではドライドック、現在でも造船界では乾式船渠ともされるようです。
今回の通運丸製作は、豊島区のマンションの一室「雑司ヶ谷ダラーイ船渠」で進水し、会場で艤装(爪楊枝についた旗2本を艦首と艦尾にさしただけですが)されて、無事に展示されました。

もうすこし整理がすすみましたら、今回の詳細報告の舞台を 《タイポグラフィ・ブログロール 花筏》 に移して順次ご報告いたします。
『平野展』ポスターL明治産業近代化のパイオニア
『平野富二伝』 考察と補遺  古谷昌二編著
刊行記念 展示・講演会
─────────
日 時 : 2013年11月30日[土]-12月01日[日]
      11月30日[土] 展示 観覧  10:00-16:30
                  著者講演会 14:00-16:00
             12月01日[日]  展示 観覧  10:00-15:00
                 掃 苔 会   10:00-12:00
      編著者・古谷昌二氏を囲んでの懇話会、サイン会は、会期中随時開催
会 場 : 日展会館
─────────
主 催 : 平 野 家
協 力 : 朗 文 堂 
後 援 : 理想社/タイポグラフィ学会/アダナ・プレス倶楽部

【イベント開催趣旨】
平野富二没後120年、平野活版製造所(のちの東京築地活版製造所)設立140年、石川島造船所(のちの石川島平野造船所・現 IHI)創業160年という記念すべき年にあたり、古谷昌二氏編著『平野富二伝』が刊行されました。

本展示講演会は『平野富二伝』に詳細にしるされた、明治前期の活字版印刷術の黎明期に、活字製造、活版印刷機器製造ならびに技術基盤の確立に活躍し、ついで、造船、機械製造、土木工事、鉄道敷設、水運開発、鉱山開発など、わが国近代産業技術のパイオニアとして、おおきな業績をのこした平野富二(1846-92)に関して、これまで一般にはあまり知られていなかった事績を発掘し、その全貌を紹介し、再認識していただくことを目的とします。

同時に、明治前期の工業界をリードした、技術系経営者としての平野富二の多彩な事績の紹介が、そのままわが国近代の産業技術発達史の一断面をなすものであるとの認識のもとに、関東大震災や第二次世界大戦の戦禍を乗りこえ、平野家に継承されてきた貴重な資料を中心に、本格的にははじめて資料を整理・展示し、《明治産業近代化のパイオニアとしての平野富二像》を描きだすものです。

『平野展』フライヤー

一枚だけのカレンダー。師走です-お疲れでしょうから、森永アイスクリーム『パルム』は如何ですか

日本人の知らない「文字のはなし」 日本で使われている「文字」というコトバ 中国では「文」と「字」は別のものなのです
中国料理店で寄り道 グルメな書家 蘇軾 美味しい、美味しい、トウロンポウ 書にまつわる美味しいおはなし

平日のちょっと贅沢なライフスタイルマガジン
【森永乳業 Daily Premium Calender 】

渋いオジサン-寺尾聡というと、わたしの世代では「ルビーの指輪」が印象的です。
その寺尾聡が TV CM に登場して「ワォ~」と叫んでいるのが森永乳業のアイスクリーム「PARM」です。「PARM」は人気商品で、累計10億本を越える販売実績があるそうです。
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森永乳業の巨大な Website のなかに、平日のちょっと贅沢なライフスタイルマガジン
「 Daily Premium Calender 」があります。 
── タイポグラフィと活版印刷 ──
{文字とは文化と歴史の結晶 それは「知」と「技」と「美」の総合技芸} と題して、11月の毎週月曜日-木曜日[祝日はのぞく]、都合15 回にわたって、片塩と朗文堂 アダナプレス倶楽部:大石の共著のかたちで連続エッセイを担当いたしました。

なにしろコンテンツの豊富なWebsiteですし、トップ画面はすでに12月のカレンダーに切りかわっています。11月だけの連載でしたが、スタートの月曜日が祝日で、11月5日[火]からのスタートで、11月28日[木]が最終回となりました。
Websiteの常で、情報はアーカイブに収納されましたので、そこへのご案内をリンクしました。2013年11月の「 Daily Premium Calender 」をご笑覧たまわりますようお願いいたします。
パルムuu

【 目 次 】
── タイポグラフィと活版印刷 ──
{文字とは文化と歴史の結晶 それは「知」と「技」と「美」の総合技芸} 

  • 11月05日[火] 第01回 スタート 
    新しい活版造形者とともに 『VIVA!! カッパン♥』
      活版ルネサンスと
      身体性をともなった「ものづくり」の歓び 
  • 11月06日[水] 第02回
    活版印刷 水 紀行
      それは河畔の街からはじまった……
      活版印刷術と水にまつわる物語
  • 11月07日[木] 第03回
    こころを豊にする短歌講座
      贅沢短歌  本木昌造(永久 ナガヒサ)、池原 奞(シュン、香穉 カワカ)
  • 11月11日[月] 第04回
    日本近代化のパイオニア 『平野富二伝』
      近代化の影の立役者「活版印刷術」
      平野富二の生涯から明治の男の気骨を知る
  • 11月12日[火] 第05回
    日本人の知らない 「文字のはなし」
      日本で使われている「文字」というコトバ
      中国では「文」と「字」は別のものなのです。
  • 11月13日[水] 第06回
    「豚」+「柿」+「ミカン」=「諸事大吉」
      笑う門には福来たる?
      ユーモアあふれる吉祥文
  •  11月14日[木] 第07回
    ゆっくり急げ!
      イルカと錨。亀と龍。
      相反する事物の意味は?
  • 11月18日[月] 第08回
    彫られた文字  石のエクリチュール
      堅牢な石に彫られた碑文
      その軌跡をたどり、文字の歴史を知る
  • 11月19日[火] 第09回
    グルメな書家 蘇軾ソショク 中国料理店で寄り道
      美味しい、美味しい、トウロンポウ
      書にまつわる美味しいおはなし
  • 11月20日[水] 第10回
      An essay of the typography.
        ところで、タイポグラフィって何でしょう?
  • 11月21日[木] 第11回
    贅沢短歌  心を豊かにする短歌講座
      現代日本人の多くは、残念ながら
      150年以上前の書物をスラスラとは読めません。
  • 11月25日[月] 第12回
    印刷用の書体 明朝体と宋朝体《前編》
      活字書体の「明朝体」って
      中国の文字ではないの?
  • 11月26日[火] 第13回
    印刷用の書体 明朝体と宋朝体《後編》
      活字書体の「明朝体」って
      明の時代の文字ではないの?
  • 11月27日[水] 第14回
    分子生物学からみるメディア論
      DNA と活版印刷術
      実はこのふたつ、とても似ているのです
  • 11月28日[木] 第15回 最終回 
    活字よ 永遠に――――
      ウーパールーパーとサラマンダー
      活版印刷術とのふしぎな関係 

新宿私塾第23期 順調に進行中です。

 

《11月16日[土] 第 9 回 フィールドワーク 公版書籍印刷所  理想社の実際》
新宿私塾開講のときからお世話になっている「理想社」。同社に出向いて公版印刷とはなにか、公版印刷の使命を現場で学びます。
前半の一時間は、同社社長・田中宏明氏による「書籍印刷概論」の講義があります。そこではデザインの現場では知ることができない、印刷工程の構築法と、実践的な管理知識が説かれていきます。
今回はめずらしく、理想社の新入社員のおふたりも、「印刷概論講座」ということで一緒に受講されました。

講義中の田中宏明社長 活版印刷、フィルム整版などの資料もたくさんいただいた。 


工場内部組版室での小林工場長
《理想社を理解するために》
理想社は秀英舎(現大日本印刷)出身の、初代田中末吉によって1921年(大正10)に創業されました。当初は活字組版専業者でしたが、次第に印刷機器を導入し、90年余の伝統を誇る印刷所です。
現在は CTP 室に改造されている現場は、かつては歴史にのこる多くの名著をうんだ「四六全判活版印刷機」がうなりをあげて稼働していました。なお時折お問い合わせがありますが、動画のなかでピンクの紙片を圧胴に貼っているのは「ムラ取り」作業です。
【リンク:タイポグラフィあのねのね*20 創業90周年を迎えた印刷会社
【YouTube:活版印刷 <公版書籍印刷と端物印刷> 公版書籍印刷2  2:51】

こんにちの理想社は、ゆっっくりと業態変更を実施しているようです。CTP, オンデマンド印刷システムといった最新鋭機器もならびますが、同社の組版部は、やはりいまなお版元からの絶対の評価をえているようです。

《北海道美唄出身です。名前は「でんすけ」。ぜひとも仲間にいれてください》
新宿私塾の教場の片隅にひっそりと棲息しています。名前はでんでん虫の「でんすけ」、北海道美唄の出身です。趣味は水浴び、好物は人参とキャベツです。ぜひとも皆さまのお仲間に入れてください。
北海道美唄出身、名前は「でんすけ」です。仲間にいれてください。わたしの出身地は、下記にリンクした アダナプレス倶楽部のコラム欄 か、 動画 YouTube  でご覧いただけます。
アダナプレス倶楽部:コラム
【Viva la 活版 Viva 美唄  YouTube  16:19】

平野富二と造形-活字人にして造船家、やはり造形にはこだわりが強かったようです。

『平野展』ポスターL古谷さん肖像《『平野富二伝』古谷昌二編著、朗文堂刊 発売日が迫りました》
発売日 : 2013年11月22日[金]
書店店頭、オンラインブックショップなどでの販売は、発売開始後すこし遅れます。

《『平野富二伝』刊行記念 展示・講演会、開催日が迫りました》
明治産業近代化のパイオニア
『平野富二伝』 考察と補遺  古谷昌二編著
刊行記念 展示・講演会
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日 時 : 2013年11月30日[土]-12月01日[日]
      11月30日[土]  展示 観覧  10:00-16:30
                  著者講演会 14:00-16:00
             12月01日[日]  展示 観覧  10:00-15:00
                 掃 苔 会   10:00-12:00
      編著者・古谷昌二氏を囲んでの懇話会、サイン会は、会期中随時開催
会 場 : 日展会館
             東京都台東区上野桜木2-4-1 電話 03-3821-0453
      JR 鶯谷駅より徒歩5分
             東京メトロ千代田線根津駅より徒歩15分
      日展会館案内図
─────────
主 催 : 平 野 家
協 力 : 朗 文 堂
             東京都新宿区新宿2-4-9 電話 03-3352-5070 
後 援 : 理想社/タイポグラフィ学会/アダナ・プレス倶楽部

《新刊発売とイベントがかさなって、いささかバタバタしております》
心地よい緊張というのでしょうか。主催者:平野家のみなさま、ご後援いただいた、理想社、タイポグラフィ学会、アダナプレス倶楽部と、それぞれ役割分担をして、大わらわでの準備作業が展開しています。
編著者の古谷昌二氏は、校正を終えたばかりだというのに、講演会のデータづくりに追われています。

平野富二。体重は100Kgをゆうに超え、人力車はふたりがかりで引いたといわれるほどの、大柄な男であった。
平野富二の写真記録(部分)。推定1885年(明治18)台紙によると印刷局にて撮影。体重は100kgをゆうに超え、ふたり乗りの人力車にひとりで乗っていたと記録されるほどの、大柄な男であった。
明治10年頃の平野富二による活版製造所の活字見本帳(部分)。「MOTOGI & HIRANO」と印刷されている。平野ホール蔵。
明治10年頃の平野富二による活版製造所の活字見本帳『BOOK OF SPECIMENS』(部分)。
「MOTOGI & HIRANO」と印刷され、中央部に「丸もに H」のブラックレターがみられる。平野ホール蔵。

《平野富二-活字人にして造船事業家、造形にはこだわりがあったか》
平野富二(1846-91 弘化3-明治25 行年46)は東京築地活版製造所を創立し、つづいて石川島造船所(現 IHI) を創立した明治の造形家であり、明治産業近代化のパイオニアです。
その業績にちなみ、書籍『平野富二伝』のジャケット、ならびにその関連イベントに使用した装飾罫は、「明治16年5月新製」(築地活版製造所)として、得意先に配布された装飾罫を、デジタル技法によって精緻化し、再現して使用しました。
飾り罫01uu東京築地活版製造所では明治16年5月-20年10月にかけて、これらのフライヤー状の「新製見本」を精力的に配布していました。

平野富二と東京築地活版製造所は、冊子型の活字見本帳として、1876年(明治9)に最初の活字見本帳を製作しています。この見本帳の扉ページには1876年と印刷され、英国セントブライド博物館が所蔵していましたが、現在では所在不明です。またその一部欠損本がわが国の印刷図書館に所蔵されています。

その後、翌1877年(明治10)に『BOOK OF SPESIMENS  MOTOGI & HIRANO』(推定明治10年 活版製造所 平野富二 平野ホール所蔵)を発行しています。本書は知られる限り、平野ホール所蔵書が唯一本です。同書は関東大地震のとき消火の水をかぶったとされ、いくぶん損傷がみられますが、今回の《『平野富二伝』刊行記念 展示・講演会》でご覧いただけます。

1879年(明治12)には『BOOK OF SPESIMENS  MOTOGI & HIRANO』の改訂版が発行されていて、この改訂版のほうは数冊の所存が確認されています。
その後平野富二が造船業をはじめて多忙をきわめたたこともあり、しばらく冊子型活字見本帳は発行されることが無く、フライヤーのような「新製見本」を発行しつづけたようです。

この「新製見本」は『SPECIMENS OF NEW TYPES  新製見本』(明治21年2月 築地活版製造所)として再刷し、軽装の合本とされて発行されました。
『SPECIMENS OF NEW TYPES  新製見本』の表紙裏には、要旨「大型活字見本帳は目下製造中ですが、できしだいお知らせ申しあげます」とありますが、結局東京築地活版製造所の大型見本帳『活版見本』が完成したのは、大幅に遅れて、1903年(明治36)となりました。
飾り罫02uu
飾り罫01uu 《平野富二がもちいた印鑑》
印鑑uu
  平野富二は相当の文章家で、さまざまな文書をのこし、その自筆による公文書類は『平野富二伝』に際して古谷昌二氏によって紹介されました。それらの書類をみると、どうやら印鑑にもこだわりがあったようで、さまざまな印鑑を使用しています。
平野家には関東大震災と戦禍を免れたふたつの印鑑がのこされています。これらも実物を展示公開の予定です。

平野富二がもちいた印鑑二点(平野ホール所蔵)。
左) 平野富二長丸型柄付き印鑑
楕円判のT. J. HIRANO は「富二 平野  Tomiji Hirano」の「富 Tomi  二 Ji」から T. J. としたものか。初期の東京築地活版製造所では、東京を TOKIO とあらわしたものが多い。この印判の使用例は見ていない。
右) 平野富二角型琥珀製四角平型印鑑、朱肉ケースつき
四角判の「平野富二」は、朱肉入りケースともよく保存されている。使用に際しては柄がないために使いにくかったとおもわれる。

《平野富二がもちいた社章》
下図4点は『平野富二伝』第12章 明治18年の事績(p.531)に紹介された社章、商標およびマークです。

商標01商標02uu
上左) 『BOOK OF SPECIMENS  MOTOGI & HIRANO』(推定明治10年)にみられる築地活版所の社標で、本木昌造の個人紋章「丸も」のなかに、ブラックレターのHがみられます。ながらくもちいられ、明治17年の新聞広告にも掲載されています。
上右) 東京築地活版製造所の登録商標で、明治19年の新聞広告からみられます。
下左) 平野富二と稲木嘉助の所有船痛快丸の旗章で、明治11年に届け出ています。装飾文字のHをもちいています。
下右) 明治18年石川島平野造船所は商標を制定し、登録しています。この商標は『中外物価新報』(日経新聞の前身 明治18年7月7日)に掲載した広告にはじめて示されています。イギリス人御雇技師(アーチボルト・キングか)の発案とされ、「丸も」のなかにカッパープレート系のふとい HT が組み合わされています。
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このような著述をなした『平野富二伝』編著者:古谷昌二氏の講演会と、ここに紹介した平野家所蔵品の展示会を予定しております。
下記の情報をご覧いただき、ぜひともご参加ください。

 『平野富二伝』刊行記念 展示・講演会のお知らせ

Weekend 情報:今週も頑張ったあなたに アイスクリーム《パルム》はいかがですか。

 パルムuu

 平日のちょっと贅沢なライフスタイルマガジン
【森永乳業 Daily Premium Calender 】

渋いオジサン-寺尾聡 テラオサトシ というと、わたしの世代では「ルビーの指輪」が印象的です。
その寺尾聡が TV CM に登場して「ワォー」と叫んでいるのが森永乳業のアイスクリーム
「PARM パルム」です。「PARM」は人気商品で、累計10億本を越える販売実績があるそうです。
─────
森永乳業の巨大な Website のなかに、平日のちょっと贅沢なライフスタイルマガジン
Daily Premium Calender 」があります。 
その担当者から、「知ると面白いけれど、ふつうは気に留めたことがない」ことがらを
ひと月担当せよとのご下命が。
テーマは入門編とするが、ひと月まるごと読みすすめば、マニアも納得するコンテンツを。
しかも主たるターゲットは女性とのことでした。ウ~ンなかなか難しい。

「らしくない」のは承知ですから、最初は辞退したのですが、担当者のご熱意に負けて
{文字とは文化と歴史の結晶 ── タイポグラフィと活版印刷 ──
それは 「知」と「技」と「美」の総合技芸}
と題して、11月の月曜日-木曜日[金・土・日曜日はのぞく]都合15回にわたり
わたくし片塩と、朗文堂 アダナプレス倶楽部:大石の共著のかたちで
連続エッセイをアップしています。

なにしろコンテンツの豊富なWebsiteですから、まずはリンクから入ってご覧ください。
11月だけ15 回の連載ですが、折り返しの 7 回目までがアップされました。
ぜひとも「 Daily Premium Calender 」をご覧いただき、友人・知人にもご紹介
たまわりますようお願いいたします。

2013年11月

「豚」+「柿」+「ミカン」=「諸事大吉」 笑う門には福来たる? ユーモアあふれる吉祥文

近刊『平野富二伝』古谷昌二編著 第一章 誕生から平野家再興まで -立神ドッグ建碑由来の説明板の紹介

立神ドック建碑2uu立神ドック建碑1uu写真) 三菱重工業株式会社長崎造船所 史料館提供

《三菱重工業長崎造船所にある立神ドッグ建碑由来の説明板》
長崎造船所とは、長崎県長崎市と諫早市イサハヤシにある三菱重工業の造船所・工場のことです。正式名称は三菱重工業株式会社長崎造船所。地元長崎では、もっぱら「長船 ながせん」の名で親しまれています。
ここに本格的な洋式造船所が設けられた歴史はふるく、時局下にあっては戦艦武蔵が建造され、最近では2002年に艤装中の豪華大型客船「ダイヤモンド・プリンセス」が火災をおこしたことなどでも知られます。

上掲写真は、三菱重工業長崎造船所本工場の立神通路の壁面に設置されている『建碑由来』説明板の写真です。この説明板の中央右寄りに、「立神ドック略歴」とあり、それに続いて平野富二の事績がしるされています。

「立神ドック略歴  明治三年(一八七〇)長崎製鉄所長平野富二乾ドック築工を民部省に建議、許可となり着工。同四年(一八七一)一時工事中止。明治七年(一八七四)フランス人ワンサンフロランを雇入れ築工工事再開。 明治一二年(一八七九)工事完成。(長さ一四〇米、巾三一米、深さ一〇米 当時東洋一)   (後略)  昭和四三年(一九六八)三月   三菱重工業株式会社長崎造船所」

これに補足しますと、
「慶応元年(1865)7月に立神軍艦打建所として用地造成が完了しましたが、当地における軍艦建造が取止めとなり、そのまま放置されていました。 明治2年(1869)になって、平野富二が民部省にドックの開設を建議し、民部省の認可が下りました。同年11月20日、平野富二が「ドック取建掛」に任命され、直ちに着工しました。しかし明治4年(1871)4月、長崎製鉄所が工部省の所轄となるに及んで、平野富二は長崎製鉄所を退職し、工事は中止されました」[古谷昌二]

平野富二(1846-91)は長崎出身で、活字と活版印刷関連機器製造「東京築地活版製造所」と、造船・機械製造「石川島造船所」を設立したひとです。
残念ながら、東京築地活版製造所はよき後継者を得ずに1938年(昭和13)に解散にいたりましたが、造船・機械製造「石川島造船所」は隆盛をみて、こんにちでは株式会社 IHI として、三菱重工業とは競合関係にある巨大企業です。

この地におおきな造船所がつくられた歴史を簡略にしるします。
1857年(安政4年)  江戸幕府直営「長崎鎔鉄所」の建設着手。
1860年(万延元年)  「長崎製鉄所」と改称。
1861年(文久元年)  完成。
1868年(明治元年)  官営「長崎製鉄所」となる。
1871年(明治4年)  工部省所管「長崎造船局」と改称[このとき平野富二は退職]。
1879年(明治12年)  立神第一ドック完成。
1884年(明治17年)  三菱の経営となる。「長崎造船所」と改称。

あわせて平野富二(富次郎 1846-91)のこの時代の行蔵を簡略にしるしましょう。
長崎にうまれた平野富二は、この三菱重工業長崎造船所の前身、長崎製鉄所とは16歳のときから関係をもちました。まず1861年(文久元)長崎製鉄所機関方見習いに任命され、教育の一環として機械学の伝習を受けていました。このころは飽の浦に建設された長崎製鉄所の第一期工事が完成して間もないころでした。

1869年(明治2)平野富二が民部省[1869年(明治2)に設置された中央官庁。土木・駅逓・鉱山・通商など民政関係の事務を取り扱った。1871年廃止されて大蔵省に吸収された]にドックの開設を建議し、民部省の認可が下りました。同年11月20日、「ドック取建掛」に任命され、直ちに工事に着工しました。しかし、1871年(明治4)4月長崎製鉄所が 工部省 の所轄となるに及んで、平野富二は退職し、工事は中止されました。

長崎製鉄所を退職したのち、1872年(明治5)7月から、本木昌造の再再の懇請により活字版印刷事業に着手し、東京に出て、1873年(明治6)から活字製造と活版印刷機器の製造「のちの東京築地活版製造所」で成功して資金をつくり、あわせて幕末に水戸藩が設けた石川島修船所の敷地を借りるかたちで、念願の造船業「石川島造船所」の事業に1876年(明治9)31歳のときに進出しました。
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造船業者や船乗りは「板子一枚下は地獄」とされ、きわめて危険な職業であることの自覚があるようです。ですからライバル企業「石川島造船所」現在の IHI の創業者「平野富二」の名を、自社の主力ドッグである立神ドックにその名を刻した、三菱重工業長崎造船所のみなさんの心意気にこころをうたれます。

上掲写真は、2001年「平野富二没後110年祭」に際して、列席された長崎造船所史料館からいただいたものです。ここは巨大工場の最奥部にあり、危険もあり、情報管理の面からも一般人の見学はゆるされていません。したがってこの写真が公開されたことはあまりないようです。
同社はまた『創業150周年記念  長船ナガセンよもやま話』(三菱重工業長崎造船所 平成19年10月 p.22-23)の見開きページで、「立神に巨大ドッグを 壮大な夢を抱いた平野富二、工事現場での大ゲンカ仲裁も」として、イラストと写真入りで紹介しています。
このとき平野富二は25歳という若さで、2-3,000人の労働者の指揮にあたっていました。

平野富二武士装束uu

平野富二(富次郎)が長崎製鉄所を退職して、活版印刷の市場調査と、若干の活字販売のために上京した1871年(明治4)26歳のときの撮影と推定される。
知られる限りもっともふるい平野富二像。旅姿で、丁髷に大刀小刀を帯びた士装として撮影されている。
廃刀令太政官布告は1876年(明治9)に出されているが、早早に士籍を捨てた平野富二が、いつまで丁髷を結い、帯刀していたのかは不明である(平野ホール所蔵)。

建設中の立神ドッグ

開鑿中の立神ドック
本図は、横浜で発行された英字新聞「ザ・ファー・イースト」(1870年10月1日)に掲載された写真である。 和暦では明治3年9月7日となり、平野富二(富次郎)の指揮下で開始されたドック掘削開始から、ほぼ 9 ヶ月目に当たる状態を示す。 この写真は、長崎湾を前面にした掘削中のドライドックの背後にある丘の上から眺めたもので、中央右寄りにほぼ底面まで掘削されたドッグが写されている[古谷昌二]。

考察13 開鑿ニ着手 明治二年(一八六九)一一月二〇日、製鉄所頭取青木休七郎、元締役助平野富次郎、第二等機関方戸瀬昇平は、「ドック取建掛」に任命され、続いて頭取助品川藤十郎と小菅掛堺賢助も要員に加えられた。 この中で筆頭の製鉄所頭取青木休七郎は名ばかりで、実質的な責任者は平野富次郎であった。 この時の製鉄所辞令が平野家に残されている。 「平野富次郎  右ドック取建掛  申付候」[古谷昌二]。 

任命状

  平野富次郎  右ドック取建掛  申付候図 ドック取建掛の辞令
本図は、平野家に保管されている平野富次郎に宛てた長崎製鉄所の辞令である。この辞令の用紙サイズは、高さ174㎜、幅337㎜で、ここに書かれている巳十一月とは明治2年(1869)11月(和暦)であることを示している[古谷昌二]。

長崎縣権大属任免状uu 

平野富次郎の長崎縣権大属任免状 
本図は、平野家に保管されている平野富次郎に宛てた長崎縣の任免状である。 この任免状の用紙サイズは、高さ187㎜、幅519㎜である。 最終行の「長崎縣」と書いた上部に小さく、「庚午 閏十月十六日」と記されており、明治3年(1870)閏10月16日の日付であることが分かる[古谷昌二]。
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このような著述をなした『平野富二伝』編著者:古谷昌二氏の講演会と、ここに紹介した平野家所蔵品の展示会を予定しております。
下記の情報をご覧いただき、ぜひともご参加ください。

 『平野富二伝』刊行記念 展示・講演会のお知らせ

平野富二、活字製造販売事業開始の広告

『崎陽 新塾餘談 初編一』の活字販売広告は
たれの企画と意図にもとづいて
急遽巻末に加えられたのか?
『平野富二伝』(古谷昌二編著)より

崎陽新塾餘談 天下泰平国家安全「崎陽 新塾活字製造所 口上」 『崎陽 新塾餘談 初編一』 壬申  明治5年2月 印刷博物館蔵

本図は新街私塾から刊行された『崎陽新塾餘談 初編一』(壬申  明治5年2 平野富二このとき26歳)の巻末に掲載された「崎陽新塾活字製造所」の活字見本(価格付き)です。
この図版はこれまではしばしば本木昌造の企画の一環として紹介され、「天下泰平国家安全」の活字見本として知られてきたものです(小生も紹介してまいりました。ここに不明をお詫び申しあげます)。

平野富二武士装束uu平野富二(富次郎)が市場調査と、若干の活字販売のために上京した1871年(明治4)撮影と推定される。
知られる限りもっともふるい平野富二像。旅姿で、丁髷に大刀小刀を帯びた士装として撮影されている。
廃刀令太政官布告は1876年(明治9)に出されているが、早早に士籍を捨てた平野富二が、いつまで丁髷を結い、帯刀していたのかは不明である(平野ホール所蔵)。

ところが本木昌造は、このころはすでに活字製造事業に行きづまっており、1871年(明治4)6-7月にわたり、長崎製鉄所を辞職したばかりの平野富二(富次郎 25歳)に、「長崎新塾活字鋳造所」への入所を再再懇請して、ついに同年7月10日ころ、平野はその懇請を入れて同所に入所しました。
これ以後、すなわち1871年(明治4)7月以降は、本木は活字鋳造に関する権限のすべてを平野に譲渡しています。

また本木はもともと、活字と活字版印刷術を、ひろく一般に解放することはなく、「新街私塾」一門のあいだにのみ伝授して、一般には秘匿する意図をもっていました。そのことは、『大阪印刷界 第32号 本木号』(大阪印刷界社明治45年)、『本木昌造伝』(島屋政一 朗文堂 2001年)などの諸記録にみるところです。

苦難にあえでいた「崎陽新塾活字製造所」の経営を継承した平野富二は、従来の本木昌造時代の経営を大幅かつ急速に刷新しました。また本木の方針による「活字を一手に占有」することはなく、ひろく活字を販売し、活字版印刷関連機器を製造し、その技術を公開することとしました。
そのために平野は『崎陽 新塾餘談 初編一』の巻末に、「販売を目的とする価格付きの活字見本」を急遽印刷させ、ひろく活字を需用者に販売することにしたものとみられます。

その最初の行動が、この活字見本(価格付き)であったことの指摘が、『平野富二伝』(古谷昌二編著 朗文堂近刊 p.137)でなされました。これはタイポグラファとしてはまことに刮目すべき指摘といえるでしょう。
掲載誌が、新街私塾の『崎陽 新塾餘談 初編一』であり、販売所として長崎(崎陽)の二ヶ所だけが記載されているために、その効果は限定的だったとみられますが、これが平野富二のその後の事業展開の最大のモデルとなったとみられる、貴重な資料であることの再評価がもとめられます。

この年平野富二は27歳。本格的な活字製造事業を開始し、同時に東京への進出に備えて、あらかじめ1872年(明治5)8月14日付けの『横浜毎日新聞』に、陽其二らによる同根企業の横浜活版社を通じて同種の広告を出しています。
10月には新妻・古まほか社員10名をともなって上京して、ただちに同年10月発行の『新聞雑誌』(第六十六號 本体は木版印刷)に同種の活字目録を活字版印刷による附録とし、活字の販売拡大に努めています。

この壬申 明治5年とは、わが国の活字が、平野富二の手によって、はじめてひろく公開され、販売が開始された記念すべき年であったことが、本資料の再評価からあきらかになりました。 
これからは時間軸を整理し、視点を変えて再検討と再評価をすべき貴重な資料といえるでしょう。
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このような著述をなした『平野富二伝』編著者:古谷昌二氏の講演会と、平野家所蔵品の展示会を予定しております。
下記の情報をご覧いただき、ぜひともご参加ください。

 『平野富二伝』刊行記念 展示・講演会のお知らせ

【近刊紹介】『平野富二伝』古谷昌二編著

【本書の発売日が決定いたしました!】
朗文堂近刊書、古谷昌二編著『平野富二伝』には、多くの皆さまがご関心を寄せられ、発売日、関連イベントに関するお問い合わせをたくさん頂戴いたしました。ありがとうございました。

発売日  2013年11月22日[金]

『平野富二伝』刊行記念・展示・講演会のお知らせ 
関連情報は、上記をクリックしていただきますと該当ページがひらきます。

 

書店店頭、オンラインブックショップなどでの販売は、発売開始後すこし遅れます。
一刻も早く、連休中にもお読みになりたいというかたは、ご面倒でも小社にご来社いただき直接ご購入いただくか、朗文堂ブックコスミイク robundo@ops.dti.ne.jp まで事前にご注文ください。
ご送付のばあいでも 11月22日[金]まで のご注文にかぎり、送料を小社負担でおもとめいただけます。ご注文をお待ちしております。

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明治産業近代化のパイオニア平野富二伝 考察と補遺
古谷昌二 編著
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発行:朗 文 堂
A4判、ソフトカバー、864ページ
図版多数
定価:12,000円[税別]
発売:2013年11月22日
ISBN978-4-947613-88-2 C1023

 ──────── 編著者プロフィール
古 谷  昌 二   ふるや しょうじ
古谷さん肖像

昭和10年(1935)、東京都に生まれる。
昭和33年(1958)、早稲田大学第一理工学部機械工学科を卒業。
同年、石川島重工業株式会社(現、株式会社IHI)に入社。
製鉄設備を初めとして、産業機械分野の設計、開発、技術管理、新機種営業部門を歴任。
平成7年(1995)、定年退職に際し、その後の一つのテーマとして平野富二の事績調査に取り組み、IHI OBを中心とした社史研究会「平野会」の設立と運営に協力。
日本機械学会正会員。

雑誌投稿:
「IHI 高圧高炉用炉頂装置の概要」
共著(『石川島播磨技報』、第7巻、第34号、昭和42年3月)
「大形高炉設備の設計」
(『石川島播磨技報』、別冊2、昭和44年8月)
「石川島のダラーイドック」
(『佃島物語』、その十五、平成7年10月)
「平野富二の師 本木昌造」
(『佃島物語』、その二三、平成12年5月)
平野会資料:
「旭日丸事績」を初め、幕末から明治初期の石川島に関する資料、平野富二に関するテーマ別に纏めた資料など多数を執筆し会員に配布。IHI本社図書室に保管。

──────── 著者まえがきより抜粋
本書は、明治前期の活字版印刷術の黎明期に活躍し、ついで、造船、機械、土木、鉄道、水運、鉱山開発など、わが国近代産業技術のパイオニアとしておおきな業績をのこした平野富二に関して、これまで一般にはあまり知られていなかった産業人としての事績を発掘して、その全貌を紹介し再認識してもらうことを目的とする。
同時に、明治前期の工業界をリードした、技術系経営者としての平野富二の事績紹介が、そのままわが国近代の産業技術発達史の一断面をなすものである。

──────── 目 次
第 一章 誕生から平野家再興まで
第 二章 土佐藩機械方就任と長崎製鉄所復帰
第 三章 長崎新塾活版所入社と経営改革
第 四章 東京への進出
第 五章 築地への移転と本木昌造との死別
第 六章 築地活版所の拡張と造船業への進出
第 七章 石川島造船所の操業開始
第 八章 活字改良、海運業進出と地方事業の展開
第 九章 明治一四・一五年の事績
第一〇章 明治一六年の事績
第一一章 明治一七年の事績
第一二章 明治一八年の事績
第一三章 明治一九年の事績
第一四章 明治二〇年の事績
第一五章 明治二一年の事績
第一六章 明治二二年の事績
第一七章 明治二三年の事績
第一八章 明治二四年の事績
第一九章 明治二五年の事績
第二〇章 没後の記録
平野富二年譜
平野富二没後の記録年表

──────── 著者あとがきより抜粋
明治前期に花開いた文明開化で、一般民衆が身近に実感したであろうものは数多くあるが、その中でも代表的なものは、新聞の普及による情報革命と、小形蒸気船による輸送革命であろう。
新聞は良質な活字と高性能な印刷機の出現によって、最新の情報が迅速に広く民間に届けられるようになった。
小形蒸気船は蒸気を動力として、多量の物資や乗客を、一時に短時間で、しかも安全に運送する乗り物として民間に親しまれた。

この活字と印刷機と、小形蒸気船に代表される製品を製造し、普及させたのが平野富二である。その根底となる技術はいずれも西欧先進国に学んだものであるが、それらをわが国で初めて国産化し、高性能で堅牢な製品として世の中に普及させた。

その他の分野でも、平野富二は民間人として「我国で最初に国産化した製品」を数多く生み出している。
例えば、蒸気暖房装置、演技場の大形石油ランプ、製糸動力用ボイラ・蒸気機関、鉱山用各種機械、水力発電用ペルトン水車、凌雲閣のエレベーター、吾妻橋に代表される大形橋梁などである。
一等砲艦鳥海も民間造船所で初めて建造された軍艦である。
近代化の象徴である鉄道建設や水道布設などにおいても、ドコビール式軽便レールを導入して、画期的工法で土地造成工事を行なった。

それらの製品を生み出し、工事を実施する過程においても、活字の多品種・大量生産を実現させ、現代に通じる品質管理、公害を配慮した工場移転、徒弟教育の実施、職工の生命保険付保など、時代を先駆ける先端的経営を行なった。

その意味で、平野富二をわが国産業近代化のパイオニアの一人として位置付けることができる。まさに福地桜痴の言う「明治工業史の人」である。

平野富二の生涯は苦労と失敗の連続であった。通常の伝記では成功談の羅列で終始するが、平野富二の場合は失敗談なくしてその人の生涯を語ることはできない。
平野富二の前半生の履歴をまとめ上げた福地桜痴や、全生涯を記録した『本木昌造 平野富二 詳伝』の編著者である三谷幸吉は、失敗談については敢えて触れることなく、意識的にこれを避けている。

平野富二は、恩師本木昌造の苦境に陥った活版印刷事業をたまたま引き受け、事業として成功に導いた。その結果得られた資金を活用して、念願の造船事業に進出することができた。
しかし、民間事業こそがわが国将来の発展に寄与するものであるとの信念から、敢えて政財界と結託することを嫌って一定の距離をおいていた。そのため、多額の資金を要する造船事業では再三に亘り政府に融資依頼を行なったが、いずれも不成功に終わっている。渋沢栄一の理解と協力で株式組織に変更するまでは、資金難の連続であった。

本書では、平野富二が取り組んだ事業の中でも不成功に終わった事例を数多くとりあげた。造船関係では兵庫造船所の借用、鉄道関係では利根川・江戸川連絡鉄道計画、甲信鉄道計画とその関連の江の浦軽便鉄道計画、築港関係では江の浦築港計画、土木関係では横須賀吾妻山掘割工事、鉱山関係では能美鉱業所の経営受託である。
しかし、不成功となったその後の経緯までをたどって見ると、単に失敗に終わらせず、その経験を少しでも世の中のために有効に生かす意志と努力を酌み取ることができる。

最大の失敗といえば、若い頃から持病を抱えながらもわが身を顧みず事業に没頭した結果、脳溢血で病床に就くこと三度、それが原因で折角育てあげた事業を途中で整理せざるを得なくなったことであろう。
その後は摂生に努めたが、国家に貢献する事業への信念から肉体の健康を疎かにし、それが原因で未だ前途のある生涯を四七歳の若さで終えたことである。

定年まで人生の一番大切な時期を過ごさせて頂いた会社の創業者である平野富二について、なぜ長崎の人が東京の石川島で個人経営の造船所を創業したのかという疑問に始まり、その人物と事績をもっと知らなければならないと思っていた。
それを定年後の取り組みの一つとして定め、本格的な資料調査を開始したのは既に十数年前になる。当初は、それほど多くの資料は存在しないだろうと予測し、二、三年で纏められると思っていた。平野富二に関する資料は、関東大震災、その後の戦災と戦後の混乱でほとんどの歴史資料を失ってしまったと見られていたからである。

当初は、平野富二に関する纏まった伝記資料としては、三谷幸吉の『詳伝』が唯一のものであった。それを手掛かりにして、資料収集を開始すると、断片的ではあるが次々と新しい資料を見出すことができた。

平野富二は、長崎奉行所とそれに関連する長崎製鉄所に勤務していた関係で、その役職履歴から勤務に関する多くの文書が長崎県に残されている。
東京に出てきてからは、事業の関係で役所に提出した文書が東京都公文書館に数多く保管され、また、横浜製鉄所や石川島造船所に関しては国立公文書館と防衛研究所図書館に多くの関連する文書が保管されており、近年、アジア歴史資料センターからインターネットで検索・閲覧できるようになった。
早稲田大学図書館に保管されている「大隈文書」にも平野富二直筆の願書等が残されていることが判った。

株式会社IHIの元専務取締役高松昇氏は残念ながらすでに故人となられたが、同氏とは十数年来、平野富二の研究でお互いに協力しあう関係にあり、お教え頂くことが多かった。相談の上、『長崎市史』に掲載されていた平野富二碑の碑文をもとに、その石碑の所在確認と、先祖の菩提寺に残されているとみられる記録を平野家に調査してもらうこととした。これが縁で平野家の方々と面識を得ることができた。

丁度その頃、祖先の遺品を整理されていた平野義和氏とその子息正一氏によって多数の資料が見出され、活版印刷関係の資料についてはその分野の研究をされている、朗文堂の片塩二朗氏と印刷史研究家板倉雅宣氏に伝えられた。平野家からは貴重な資料閲覧と写真撮影をさせていただき、特に正一氏からは独自に調査された貴重な資料のコピーを提供して頂いた。
また、片塩二朗氏と板倉雅宣氏からは平野富二が印刷分野で高く評価されていることを教えて頂き、御著作を初め多くの資料を提供して頂いた。

平野富二の資料収集を期に、高松昇氏の主宰により株式会社IHIのOBを主体とした「平野会」が結成された。社史に関連する資料の収集と資料管理を後援することを目的としたもので、その会員はIHIの歴史に関心を持つ各専門分野を経験された方々であった。この「平野会」は、所期の目的を達成して解散したが、多くの資料を調査・収集することができた。

二〇〇二年に朗文堂から片塩二朗著「富二奔る」(『ヴィネット08』)が、二〇〇六年に印刷朝陽会から板倉雅宣著『活版印刷史』が、さらに、二〇〇九年に株式会社IHIから高松昇著『平野富二の生涯』(非売品)が刊行された。
これらの動向により、平野富二に縁故のある関係者の子孫の方々が現れ、貴重な情報・資料の提供をうけることができた。

本書は高松昇氏の御著書を補う形で、広く一般読者や研究者に読んで頂くために纏めたもので、以上に述べた多くの機関や個人の方々から提供をうけた貴重な資料を利用させて頂いた。いちいちお名前を記すことを控えさせて頂くが、この場を借りて心から御礼申し上げる。

平成二五年八月
石川島造船所創業一六〇年、平野富二没後一二〇年を経過した歳に当たって                                                              古谷 昌二