詩のこころ無きわが身なれば、折りに触れ
古今東西、四季のうた、ご紹介たてまつらん
吾 亦 紅 に 寄 す
夏―― 風になびく青い草原は 海のうねりにも似て
渺たる高原のそこここに たそかれが迫る
とおく はぐれ蝉か ひぐらしの聲
ひと叢の ワレモコウが 風に揺れている
ひめやかに 晩夏の気配が 艸叢を覆う
秋―― 妍を競って咲き誇った高原の艸草が
慌ただしく 種子の実りを終える
ワレモコウは 仔鹿の脚にも似た か細い茎を艸叢に屹立す
艸叢から ちいさなつぶやきが
「ねぇ、ねぇ、わたしって、きれい?」
晩秋―― 花序のあえかな彩りは くらい赤褐色に色とりをかえ
万葉ひとは なんのゆえありて かくも 可憐な
「 ワレ マタ ベニ ナリ —— 吾 亦 紅 」の名を与えしか
寥風がつのる 真紅の鮮血ほとばしらせ 慟哭する花 ここにあり
「 ねぇ、ねぇ、わたしって、クレナイの花よ!」
―――― よみひと しらす