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本情報のオフィシャルサイトは アダナ・プレス倶楽部ニュース です。
ここ、タイポグラフィ・ブログロール《花筏》では、肩の力をぬいて、
タイポグラフィのおもしろさ、ダイナミズムなどを綴れたらとおもいます。
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《活版印刷の車の両輪、活版印刷機械製造と活字製造》
活版印刷の中核は、なんといっても活版印刷機と活字です。小型活字版印刷機 Adana-21J を製造・販売しているアダナ・プレス倶楽部では、つねに、もっとも心強いパートナーとして、活字鋳造所の存在をおもくみています。
うれしいことに《活版凸凹フェスタ012》では、活字鋳造所として、これまでの2社に加えて、あたらしい有力活字鋳造者2社をお迎えすることができました。
◎ 有限会社佐々木活字店
1917年(大正6)創業の 佐々木活字 さんは、東京都心部、新宿区榎町75に本社工場を構えています。佐々木社長、塚田さんの、ベテラン・コンビによる、該博な知識と、悠揚迫らぬ円熟したご対応は、活版実践者の皆さんはよくご存知ですし、活版初心者からもおおきな信頼をあつめています。
また、こころ強いことに、近年佐々木社長のご子息が、次世代の佐々木活字店の継承にむけて入社されました。現在はまず Facebook を開設され、デジタル通信環境も急速に整備されています。
佐々木活字店の活字鋳造機の一部。『VIVA♥!! カッパン』の撮影にもご協力いただきました。
左:トムソン型全自動活字鋳造機、右:ブルース型手回し式活字鋳造機
以下3点の写真は、同社FACE BOOK より。
佐々木活字店の前身、佐々木活版製造所は、日清印刷(現在の大日本印刷榎町工場)鋳造部の責任者であった佐々木巳之八氏が、1917年(大正6)に独立して設立されました。
いまや活字販売店は都内でも数えるほどとなりましたが、佐々木活字店では、活字鋳造・販売はもとより、植字(組版)から印刷・製本にまでいたる、活版印刷の全工程をおこなっている、貴重な存在の企業です。
佐々木活字店さんとアダナ・プレス倶楽部とは、おつきあいがながく、初回の《活版凸凹フェスタ》から出展をお願いしてきましたが、今回ようやくご参加が実現しました。
◎ 日星鋳字行+台湾活版印刷文化保存協会(台湾)
台湾で唯一の活字鋳造所であり、活字販売店が日星鋳字行ニッセイ-チュウジ-コウさんです。「鋳字」は活字鋳造で、「行」はお店の意です。すなわち日本風にいいますと「日星活字鋳造店」ということになります。
日本との違いは、台湾ではいつのころからか、活字店が活字鋳造だけでなく、文選・植字までの作業をおこない、まだ10数軒あるという活字版印刷所では、印刷・製本作業担当と役割分担が分かれています。
すなわち、これが本来の活字版製造所、略して活版製造所だということになります。わが国では「活字鋳造」と、それを文選・植字(組版)してつくりあげる「活字版製造」が早期から分離し、また「活字版」を「カッパン」と略称してきましたので「活版製造所」と「活字鋳造所」の文意、相違がわかりにくくなっています。
すなわち台湾では、明治最初期のわが国の「活版製造所」と同様のワークフローがのこっていると考えたほうが、適切かつわかりやすいかもしれません。
あるいはカッパン印刷に不馴れなかたは、オフセット平版印刷における、印刷版の元・版下をつくる版下業者と、印刷版をつくる写真製版所と、ロール印刷所の役割分担にちかいワークフローができているとお考えになると、わかりやすいかもしれません。
同社Websiteより:左は鉛字(活字)・右は銅模(電鋳法活字母型)
日星鋳字行の存在は、数年前にタイポグラフィ学会会員・林昆範(台湾在住)さんからご報告があり、一部では良く知られた存在でした。その後雑誌での報道などもあって、多くの日本の活版愛好家の皆さんが同社を訪問されているようです。
同社には併設して 台湾活版印刷文化保存協会 がおかれています。
台湾活版印刷文化保存協会は、台湾の活版印刷産業を保存するための民間団体です。新しいアイデアを次次と提案し、活版印刷文化に新たな生命力を注入し、将来目標として「台湾活版印刷工芸館」の設立を目指しています。
当面は、電鋳法(電胎法)による繁字体(わが国の旧漢字に近い)の、ふるい活字母型の損傷の修復と、一部台湾政府の援助をうけて、活版印刷関連機器と関連資料の収集に注力されています。
現在の日星鋳字行さんの活字母型製造技術は、いわゆるベントン彫刻法によるものではなく、コンピュータ3Dソフトを駆使した斬新な手法によっています。日本と台湾、とても近くて親しい間柄です。多くの皆さんとの交流をもとめてご参加されました。
◎ 株式会社築地活字 平工希一さん
築地活字は1919 (大正 8)年の創業から、まもなく 90 周年を迎える老舗活字鋳造所が、横浜の 築地活字 さんです。アダナ・プレス倶楽部とも創設以来親しくおつきあいいただき、《活版凸凹フェスタ》には初回からのご参加をいただいています。
築地活字さんの90年余の歴史の間には、関東大震災による罹災があり、太平洋戦争の空爆による被害も甚大なものがありました。そのほかにも、活字鋳造と活版印刷には、いうにいえない栄枯盛衰のときがありました。それでも平工希一さんを陣頭に、家業としての活字鋳造と印刷材料販売を粘り強く展開されています。
築地活字には豊富な活字書体と、各種のサイズがあり、その見本帳も充実しています。また今回は、企画商品「新 活字ホルダー」も展示されます。
◎ 株式会社中村活字/中村明久さん
京橋区木挽町1丁目に1910年(明治43)に創業され、すでに100年余のながい歴史を刻んできた活字鋳造所が 中村活字 さんです。代表の中村明久さんは、あかるく屈託のないお人柄で、多くの若者に取りかこまれていると嬉しいそうです。
「最近、活版印刷の仕事が忙しすぎて、若いひととゆっくりはなしができなくて、つまらない」
とも語られます。よいお人柄です。
今回は銀座夏祭りの役員としてご多忙のため、差し入れはしてくださるようですが!? 「活版工房」の一員としてのご参加です。
同様に真映社さんも神田祭りの役員で、こちらは兄弟で役割分担を。ご長兄が夏祭り担当、ジョームが活版祭り《活版凸凹フェスタ》のご担当となりました。
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あす4月11日[水]に、急遽長野県松本市のちかく、白馬村までバスで日帰り往復することになりました。今回の企画展示の資料譲渡をうけるためです。
したがって、この《花筏》の更新は、あすはおそらく不可能かとおもわれます。
その間の時間を利用して、《活版凸凹フェスタ2012》の企画展示と密接に関係する、江川活版製造所、江川次之進、江川行書、江川隷書、活字ホルダー、深町貞一郎などのキーワードにご興味がおありのかたは、次ページにふるい資料に補筆したものをアップしました、お時間が許せばご覧いただきたいとぞんじます。