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Viva la 活版 薩摩 dé GOANDO-Report 00 番外編 しろくまは カゴンマ de ゴアンド !

 

天文館「ママ」のしろくまくん

本項の初出は2013年09月20日であった。 好評をいただいて閲覧カウンター数も多かったようである。
この旅の目的のひとつに、本年の <Viva la 活版 薩摩 dé GOANDO> の会場交渉があった。
<Viva la 活版 薩摩 dé GOANDO> の開催、2014年11月01-03日の開催が迫ったいま、ここに若干の補整を加えて再紹介したい。
―― 2014年10月15日
Goando-red【 名 称 】 Viva la 活版 薩摩 dé GOANDO
【 会 期 】 2014年11月1日[土], 2日[日], 3日[月 ・祝] 3日間
【 時  間 】   開場 8 : 30 ― 閉場 17 : 30
【 会 場 】 仙巌園〔磯庭園〕  尚古集成館本館 展示室 鹿児島県鹿児島市吉野町9700-1
【 主  催 】 朗文堂  アダナ ・ プレス倶楽部

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【 緊 急 の お 知 ら せ 】

◆ 尚古集成館 館長 : 田村 省三氏による
特別講演 と ギャラリー ・ トークの 開催が決定しました !!
<尚古集成館所蔵/重要文化財 『木村嘉平活字』 と 薩摩藩集成事業について>

◯ 今回の <Viva la 活版 薩摩 dé GOANDO> 開催にともなって、尚古集成館別館に、重要文化財「木村嘉平関係資料」が特別展示されます。
◯ 『木村嘉平活字』 研究の第一人者 : 田村省三館長に、講演とギャラリー ・ トークを担当いただきます。
◯ 11月02日[日] 14:00-17:00 仙巌園会議室
◯ またとない機会ですが、会場の都合で 限定20名様となります。
◯ 聴講料は不要ですが、仙巌園 ・ 尚古集成館の共通入場券 ¥1,000 が必要となります。
◯ 参加希望のかたは adana@robundo.com に、件名「木村嘉平活字講演会参加」で申し込みを。
◯ 申し込みは先着順で、定員になり次第締め切りとさせていただきます。
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《 いやぁ~ 南国 鹿児島での しろくま 結構なもので ごあんど ! 》

やつがれは下戸である。したがって甘党でもある。
糖尿病予備軍と医者に通告されてから及び腰になったが、ともかく甘いものには目がない。

完食寸前のアレの本物? カップアイスでは味わえない、本物のアレ。完食寸前でもう一杯食べたいおもいがある。

口惜しいことがあった。もう07年余も笑われ モトイ あざ嗤われてきた。
やつがれがお気に入りの、その 「アイス」 に囓りついていると、ノー学部が嘲笑を浮かべてボソッと口ばしる。

「 カチカチのカップ入りなんて……。 本物を知らないから、あわれなのよね~ 」
買い物は苦手だが、煙草の補給のためにときおりコンビニにいく。 帰り際にさりげなくアイスクリームのケースをのぞく。
「 アレ は本物じゃない、あわれなのだ 」
といわれたくないから、あくまでもさりげなくケースをのぞく。

人気の赤木乳業 「 ガリガリ君 」 はいつも中央部にデンと据わり、種類もまことに豊富だ。
「 ガリガリ君 」 なら、やつがれはあっさりめのソーダ味と梨味が好きだ。中央部はかき氷風で、外周部はキャンデーのようだ。
それ
でも 「 ガリガリ君 」 はあくまでも代替品であり、狙いのアレ、本命の アレ ではない。

その 「 疑似の アレ 」 は、気まぐれのように、時折コンビニのアイスケースの端のほうに、数個だけ置かれることがある。
家の近くにのコンビニは 「 ファミマ 」 が多いが、ときおりすこし遠い 「 セブン 」 に足を伸ばすのは、おなじ「 疑似の アレ 」 でも、セブンのアレのほうが、トロリと豊饒な甘さがあるからであある。 ファミマのアレは、カップの底までなめてやろうというまでの、恍惚たる至福感にいたることはない。

値段もファミマのほうは少し安いかもしれないが、あまり気にしていない。どうせ 「 アイス 」 だし、「 疑似の アレ 」 と罵られている代物だ。
しかもどこのコンビニも 「 ガリガリ君 」 の補充には熱心だが、もともと 「 疑似の アレ 」 は、専有面積が少ないし、同好の士もわずかにいるとみえて、アイスケースの手前右隅 ―― 一番目につきにくいところが定番の置き場所 ―― はポツンと空いていることが多い。

《 カゴンマ イキモンソ ! ウマカ ゴアンド ! ― 鹿児島にいきました。 悶絶する旨さでした !  》
2013年08月10日-12日、所用があって数年ぶりに鹿児島にでかけた。 主要な打ち合わせの相手が多忙ということで、こんなお盆休暇の直前での打ち合わせとなった。
旅の同行者はノー学部。

ノー学部は福岡で生まれ育ったが、父親が鹿児島大学を卒業し、母親の実家も鹿児島にあり、子供のころから長期休暇はイトコが多い鹿児島で過ごすことが多かったという。
そして父親が亡くなったいまは、母親が里の鹿児島にもどったために、ノー学部にとっては帰省の旅ともなった。やつがれは02泊03日の慌ただしい旅となる。

「むじゃき」
「むじゃき」2

「むじゃき」3 待望のしろくまくんに挑戦。

《 唖唖 遂に至福のときはいたれり。 やつがれ、鹿児島にて しろくま を食す 》
諸君 見て欲しい !
この天をもどよもす圧倒的なボリュームを、入道雲のごときふわふわ感を。なんとも圧巻ではないか !!  どうだ、これが本物の アレ、鹿児島名物 本物の「 しろくま 」 である。 

屈辱の07年余、軽蔑 ・ 侮蔑 ・ 嘲笑されながらも、ひとり黙黙と 「 コチコチで疑似のカップアイスの アレ 」 を食し、心中ひそか、せめて一度で良いから本物を食そうと、念願 祈願 切望してきた、これぞ 「 しろくま 」 の本物である !!!
鹿児島到着の夜、ホテルから近く、閉店間際に駆けこんだ、元祖 「 天文館むじゃき 鹿児島中央駅前店 」 での歓喜のひとこまである。
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コンビニのパックにはいった 「 アレ 疑似しろくま 」 しか知らなかったやつがれ、フルーツが山のように盛られ、蜜と練乳がたっぷりかけられた 本物の 「 しろくま 」 に陶然となった。
ところがやつがれ、かき氷はもちろん 「 アレ  疑似のしろくま 」 でも、食している最中にこめかみのあたりが痛くなり、最後は頭を絞りあげられるような傷みがはしる。

その怖れを抱きながら食したが、なんと本家 ・ 元祖 ・ 家元、鹿児島の 「 しろくま 」 は、1949年(昭和24) の発売開始のころから、ピュアな角氷を 「 カンナ削り製法 」 によって、ふんわりとやさしく仕上げてあるそうである。
そのせいかこのボリュームを食べても、こめかみにズキズキ感は無いし、むしろもっと食べたい気分にさせる。

「 フル-ティー & ミルキー  しろくま  ウマカ ゴアンド ―― とても美味しゅうございました 」

《 翌日は鹿児島市内を駈けまわったが、天文館の 「喫茶ママ」 で 「 しろくま 」 に再度挑戦 》

天文館「ママ」のしろくまくん

今回の鹿児島行きでは、車をふくめてすっかりノー学部の従姉 ・ ミカさんのお世話になった。
そのミカさんが繁華街/天文館の一隅、昭和のかおりがのこる喫茶店 「ママ」 に連れていってくれた。このひとは寡黙だが、薩摩おごじょであり、芯はつよいのかもしれない。
「 このママという店は、父と母が はじめてデートしたお店だそうです 」
「 やはりご両親も、初デートで しろくま をたべたのかなぁ 」
「 そこまでは聞いていませんが、それぐらいふるくからある喫茶店です 」

まつことしばし。 新種の 「 しろくま 」 登場。 昨夜よりいくらか落ちついて歓喜のときを迎えたが、「むじゃき」 とはいくぶん異なりながらも、これまた取り乱すほどの美味であった。
こちらは自家製の練乳を、これでもか、これでもかとかけて、おおきく切ったオレンジ、バナナ、スイカ、メロンがドカンと盛りつけられ、中央に餡豆が表情をつくるようにのせられている。
「フル-ティー &ミ ルキー しろくまくん ウマカ ゴアンド ―― とても美味しゅうございました 」

長島美術館から見た錦江湾と桜島。薩摩は人をもって城となす。薩摩鶴丸城は館づくりの平城であった。

鹿児島県立図書館の薩摩辞書の碑愛猫家の皆さんへのプレゼント!

シラス台地の海岸線東シナ海に没する夕陽

《 慌ただしい旅は終わった ―― 成果と宿題の多い旅となった 》
こうして久しぶりに鹿児島のタイポグラファとの再会をはたし、来年(つまりことし)の企画の打ち合わせもできた。また美術館、文学館、歴史資料館などでも打ち合わせを重ねることができた。
最終日の12日[日]は、アダナプレス倶楽部の鹿児島会員 : 陶芸家の窯と、手漉き紙工房の造形家のもとをたづねることができた。
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ことし(2013年)の夏、07月は北海道 《Viva la 活版 Viva 美唄》 にでかけ、08月はこうして鹿児島に出かけていた。
どちらも暑く、帰京してからも残暑がきびしかった。
そんなわけで暑さに負けて、すっかり脳内発酵をみて、この 《タイポグラフィ ・ ブログロール 花筏》 の更新が滞っていた。
何人かの愛読者からは 「さぼるな」 「躰の調子でも悪いのか」 と、@メールでの叱声や、お心遣いをいただいた。

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たしかにいささか夏バテ気味ではあったが、本音は夏季休暇を終えて出社したノー学部が、
「 偶然、JAL の機内誌に、作家の浅田次郎さんが 『 しろくま 』 のことを書いていました。 面白いからお土産に貰ってきました 」
と、機内誌 『 SKY WARD 』 (620号、2013年07月27日) を差しだしたことにある。
その p.119-122 にわたって、文 : 浅田次郎 、絵 : 川上和生による 「 続 ・ しろくま綺譚」 が掲載されていた。

それによると、浅田氏は 5 年前の鹿児島訪問にあたって、取材のスケジュールに追われるあまり、 「 しろくま 」 を食べる機会を逸し、それ以後 5 年にわたり 「 しろくま 」 を食すことを渇望し、ようやく仇討ちにも似た気分で 「 しろくま 」 にありついたそうである。その感動を、軽妙な筆で描写していた。

浅田次郎氏といえば、やつがれはたいていの作品を読んでいる愛読者である。このとき浅田氏は宮崎での講演会を終えて、ひとり (ひそかに) 鹿児島を訪れて 「 天文館むじゃき 」 の 「 しろくま 」 を、二杯もむさぼったらしい。以下に 『 SKY WARD 』 の一部を抜粋したい。

旅の感動を言葉で表現するのは難しい。それを百も承知で書くと、たいそうすこぶるチョーメッチャうまかった。

カキ氷でもフラッペでもない。いったいどんなカキ方をすれば氷の粒子ががこんなに細かく、ふんわりとでき上がるのであろう。テンコ盛りのトロピカルフルーツと、クラシックな自家製練乳の甘みが相俟って、そのおいしさたるや、私がしろくまを食べているのか、それともしろくまに食われているのか、わからなくなるほどであった。

『 SKY WARD 』 のエッセイは、うれしくもあり、筆力の差を見せつけられたようで疎ましくもあった。 そのためと暑さ負けとで、ついついやつがれの駄文をしるす筆がおもくなっていた。
内心ではひそかに、
「 なんだよ、浅田次郎は 5 年のお預けかよ。こちとら、カタシオ ジロウは 7 年だぞ。俺のほうがずっとながく、臥薪嘗胆、艱難辛苦、かてて加えて 屈辱に耐えてきたぞ 」
「 文章家なら、感情表現に、もそっと気配りをせい。 『 たいそう すこぶる チョーメッチャ うまかった 』 とはなんだ。 テレビのグルメ番組のタレントでも、こんな寒いセリフは云わんぞ 」
と、悔し紛れの悪態をついていた。

ところでそこから浅田氏は奇矯に奔ることになったらしい。
つまり浅田氏はひとりでの鹿児島入りであり、仇討ちにも似た 「 しろくまを食した 」 ことの立会人 (つまり証人) がいないことにハタと気づいたという。
そこで、もちいたことのない写メールを、店員に操作を教えてもらいながら、5 年前に取材 (だけに) に引きずり回した担当編集者に 「 しろくま征伐、勝利の凱歌 」 の記録として送ったとしるしている。

『 SKY WARD 』 の挿絵は情感のある良い絵だが、この機内誌の編集者は、空前絶後かもしれぬ 「 浅田次郎の写メール 」 を紹介する、千載一遇の機会を逸しているのは残念である……。
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そしてやつがれ、火を吐く山 ・ 櫻島、錦江湾の紺碧の海、半島の尖端でみた東シナ海に没する夕陽、すなわち鹿児島のエトスにこころを奪われた。
エトス Ethos はギリシア語で、エートスとも音される。ご存知の パトス Pathos 感情 ・ 激情の対語である。そのことは本欄でもしるしたことがある。

【 花筏 : 朗文堂-好日録015  五日市のランドスケープ、佐々木承周老師 2011年11月23日 】

すなわちエトスとは、やつがれにとっては情念にちかく、簡略に述べると、ひとの性格 ・ 心性であり、ある社会集団にゆきわたっている恒常的な感性 ・ 情念であり、ときとして色彩感覚や宗教観や死生観でもあろうか。

どうやらやつがれ、田舎育ちのゆえに、火の山櫻島、紺碧の錦江湾、そして南国の氷菓 「 しろくま 」 にまで、地霊 ・ 山霊 ・ 岩霊 ・ 艸霊 ・ 木霊 ・ 水霊をおぼえるのである。そのふところに身をゆだねると安堵するエトス ── 情念 ・ 性癖ないしは心性があるらしい。
こうした山川の地では、一木一艸がいとおしく、小川のせせらぎ、かすかな瀬音、どうということのない路傍の小石までがこころをなごませる。

これからしばし、エトスが存するまち、なんといっても 「 しろくま 」 が一年中食せるまち、「 鹿児島 」 に、内心ひそかに情念のほむらを燃やしながら、こだわるつもりのこの頃ではある。