【ことのは】真名-漢字 真仮名-万葉仮名とひら仮名 カタ仮名|かぎろひ-の【陽炎の】枕詞-まくらことば

奈良県北東部 ── 山の辺・飛鳥・橿原・宇陀エリア  ⓒ Yahoo  Japan  ⓒ ZENRIN
『古事記』『日本書紀』『万葉集』ロマンのさととされる奈良県宇陀市大宇陀地区を中心に

真名と仮名
奈良県:宇陀郡>安騎野-あきの

『日本書紀』天武天皇元年六月二四日条に「菟田の吾城-うだのあき」がみえる。
『万葉集』巻一に「軽皇子の安騎の野に宿りましし時、柿本朝臣人麿の作る歌」として長歌とともに、

阿騎-あき-の野に宿る旅人打ち靡き寐-い-も寝-ぬ-らめやも古思ふに

東-ひむかし-の野に炎-かぎろひ-の立つ見えてかへり見すれば月傾きぬ

の短歌を載せる。
『大和志』には「吾城野」として「在迫間本郷二村間」とあり、現大宇陀町大字迫間-はさま・本郷-ほんごう-に比定[およそ定める]する。
また本郷村東南の拾生-ひろお-村(現大宇陀町)に「旧名明城野-あきの」とある。
なお迫間には式内社[しきないしゃ 延喜式神名帳に記載された3132座の神社]に比定される阿紀-あき-神社がある。

歌学書『八雲御抄』には「あきのおほ野」とある。

こうした歴史を背景として、この地域には神社の名称として「阿紀-あき-神社」がのこり、公園施設の名称として「阿騎野・人麻呂公園」がのこり、ひろくは「安騎野」と呼ばれ、しるされるようになった。
[参考資料:『日本歴史地名大系』平凡社]
────────────────
奈良県北東部 ── 山の辺・飛鳥・橿原・宇陀エリアは、こんにち『古事記』『日本書紀』『万葉集』ロマンのさととされるが、ここにみるように「万葉仮名」の残渣ないしは残り香があちこちにのこっている。

「万葉仮名」は、漢字の音・訓を仮借-かしゃーして、日本語の音韻表記に用いた表音文字である。漢字の音を仮借した「安-あ、加-か」などの音仮名と、訓を仮借した「三-み、女-め」などの訓仮名とに大きく分類される。
漢字の表音的用法は古く中国にみえ、固有の字がなかった日本でもこの方法を用いたもので、『万葉集』に豊富にみえることから万葉仮名とよぶ。ひら仮名、カタ仮名はこれから成立した。漢字(真名)と形が同じであることから真仮名-まがな-ともいう。

枕詞-まくらことば

かぎろひ-の【陽炎の】〔カギロイ-ノ〕

〔枕 詞〕 「春」「心燃ゆ」などにかかる。
〔  例  〕 「味さはふ夜昼知らずかぎろひの心燃えつつ悲しび別れぬ」〈万葉・9・1804長歌〉
〔  訳  〕    夜昼の区別もなく心は燃え続けて、悲しみ別れたことだ。
〔  注  〕       田辺福麻呂(タナベノサキマロ)ガ弟ノ死去ヲ悲シンデ作ッタ歌。
「味さはふ」ハ「夜」ノ枕詞。

[参考資料:『全文全訳古語辞典』小学館]
────────────────
枕 詞-まくらことば

おもに和歌に用いられる古代的な修辞のひとつ。
和歌においては五音一句に相当する句(四音や六音もある)をなし、独自の文脈によって一つの単語や熟語にかかり、その語を修飾し、これに生気を送り込む。一首全体に対しても、気分的・象徴的に、または声調上・構成上に微妙な表現効果をもたらす。

枕詞の起源は古代の口誦詞章のきまり文句で、そのうち最も重要なのは神名や地名にかぶせる呪術的なほめことばである。記紀歌謡において枕詞を受ける単語や熟語の半数以上が固有名詞であるのは、その辺の消息を示すものにほかならない。のちのちまで枕詞のかかり方が、固定的、習慣的、伝承的でありつづけながら、なお有機的に働くのもそのためである。枕詞は平安朝に入ってからは使われることが少なくなっていく。

枕詞のかかり方は、同音・類音のくり返しや懸詞-かけことば-によるものと、意味の上で説明したり、形容したり、比喩したり、連想を働かせたりするものとさまざまであるが、すでにかかり方の不明となった慣用句も多い。これらはすべて神託などの呪術的な古代的発想法から展開してきたものとみられている。

枕詞と似た和歌の修辞に序詞-じょし-があって、両者はその長さの違いや、文脈の性格の違いによって区別されているが、個々の例では区別のつきにくいものもある。
本質を異にする両者が混雑を生じたものか、本質を同じくする両者が別々に発達したものか両説があるが、古代人が枕詞と序詞とを明確に区別した形跡はない。

柿本人麻呂は、古い枕詞を新しく解釈し直して用いたり、新しい枕詞を作ったり、用言を修飾する枕詞を多用したりして、枕詞の発達に大きく貢献した万葉歌人である。その作品
〈玉藻刈る敏馬-みぬめ-を過ぎて夏草の野島が崎に船近づきぬ〉(《万葉集》巻三)
の〈玉藻刈る〉〈夏草の〉という枕詞は、実景を描いたかと思わせるほど一首全体に対して大きな表現効果をもっている。
なお、老・病・死をおもにうたった山上憶良は、枕詞をほとんど使っていない。
[参考資料:『世界大百科事典』平凡社]

例年の「かぎろひを観る会」の様子

東-ひむかし-の野に炎-かぎろひ-の立つ見えてかへり見すれば月傾きぬ

なら旅ネット ── 奈良観光公式サイト
第47回かぎろひを観る会
開催施設  自然公園かぎろひの丘万葉公園
開催日時  2018年12月23日[日・祝] 04:00-07:00
所 在 地  〒633-2166 宇陀市大宇陀迫間25番地
      入園無料  事前申し込み不要 
問い合せ  0745-82-3674(宇陀市役所 公園課)
アクセス  最寄り駅からの交通
      近鉄 榛原駅より 大宇陀行きバス「大宇陀高校前」下車 徒歩3分 
────────────────
「かぎろひを観る会」は今年で47回目を数える歴史ある催し。
柿本人麻呂が詠んだ秀歌、

東-ひむかし-の野に炎-かぎろひ-の立つ見えてかへり見すれば月傾きぬ

にちなみ、かがり火を囲みながらかぎろひの出現を待ちます。
かぎろひとは厳寒の晴れた早朝、夜明けの一時間前に空を染め上げる陽光のことと、宇陀市観光協会では考えています。
時を越えて記紀万葉のロマンに浸ることができるひと時をお楽しみください。

【 詳細: なら旅ネット ── 奈良観光公式サイト 特設コーナー 】