『欧文組版入門』の原著者:ジェームス・クレイグ氏 1989年
『欧文組版入門』本体4369円 A4変形判 208p 在庫極僅少 最終案内
計測単位 Measuring Type
デザイナーなら必ず知っておきたい文字の計測単位に、ポイント (points)、パイカ (picas)、ユニット (units) の 3 つがある。
デザイナーにとってのこれらの計測単位は、いわば建築家のフィートやインチにあたるものであり、これらの計測単位によってデザイナーは印刷物の紙面を整える。
ポイント ── は文字サイズを表す単位であり、パイカ ── は行の長さを表す単位として使われる。
12 ポイントは 1 パイカ、そして 6 パイカ(または 72 ポイント)は 1 インチに相当する。
インチをフィートに換算できるように、ポイン卜もパイカに換算できる。ただし文字サイズを指定する時には、パイカではなく常にポイントを使う。
ユニットはアルファベット各文字の幅や、字間のアキ、語間のアキを表す単位として使われる。
注:本書ではインチ、ポイント、パイカ、ユニットという単位を使っている。しかし、イギリスやヨーロッパでは、文字組版の基準になる計測単位にメートル法を採用しようという活発な動きがあるので、読者はこのことを知っておいたほうがよい。
[『欧文組版入門』20ページゟ]
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もう30年余ほど前のこととなる。
『欧文組版入門』(ジェームス・クレイグ著、朗文堂、1989年12月5日)の原著は『 Basic Typography A Design Manual 』(James Craig, Watson – Guptill Publication, New York, 1978)であった。
原著の刊行年、1978年(昭和53)とは、アメリカでもまだ DTP システムの夜明け前であったが、いわゆる「電算写植」システムが普及して、次世代の大変革を予感させる微妙な年であった。したがって同書の巻頭扉ページの著者の献辞には以下のようにあった。
「あいまいな知識だけで欧文写植を使っているデザイナー諸氏に本書を捧げる」
当時 J・クレイグ 氏とはしばしば続編のはなしがあり、ジョークとしてその献辞は、
「あいまいな知識でパソコン組版をおこなっているデザイナー諸氏に本書を捧げる」
にしようと同氏は嗤っていた。
すなわち原著は写真植字ユーザーに向けて記述され、増刷のたびに一部を修整して刊行がつづけられており、稿者の依頼だった全面改定版に関しては、J・クレイグ 氏は DTP システムはもはや自分の埒外だとされた。
しかしながら原著は、平易に文字組版に関する必要事項を説いていたので好評を呼び、本書を使って学ぶ米国の大学は、イエール大学をはじめ64校におよび、専門学校を加えると82校の多数を数えていた。
こんな時代を背景として、1989年(平成元年)、小社の邦訳書が発行されることになった。しかしながらここ30年の文字組版環境は、あまりにも急激に、大きく変化した。そのためこの邦訳書は小社でも四刷りまでの刊行をみたが、急速に普及したパーソナル・コンピューターと、その組版システムへの対応が遅れ、残念ながら現在は品切れ寸前状態にある。
また印刷用保存データーが製版フィルムのため、コンピューター・データーから直接印刷版を製造する工程(CTP)がほとんどとなった現在は、フィルムからの印刷版製造(CTF)はきわめて困難になったため、事実上の絶版状態にある。
原著者:ジェームス・クレイグ氏は当時イエール大学で非常勤講師のようなかたちで教鞭をとっており、同大に学んでいた新島 実氏(武蔵野美術大学教授)の紹介を得て、版元交渉・翻訳・組版に二年ほどをかけて1989年(平成元年)に邦訳書が刊行された。あれから30年、まさに平成の世も終わるのかという感慨がある。
クレイグ氏とはNYで三度ほど直接面談したが、当時アメリカでもよく用いられていたヨーロッパ産の「電算写植機」の多くがメートル法に基づいていたことと、当時のアメリカではメートル法への移行が真剣に議論されていたこともあって、同氏はアメリカでもちかい将来にメートル法が全面的に採用されると予測されており、上掲のような一文を基本編にのこし、巻末にはメートル法への換算表を詳細に記録していた。
しかしながらDTPポイントが開発され、アメリカでは依然としてインチ・ヤード法が健在である。
あまりにも早い時代の推移のなかに消滅していこうとしている図書となったゆえんである。
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