◉『広辞苑』(第六版、2012、岩波書店)
【 づ 】
「つ」の濁音。鎌倉時代までは舌尖有声破裂音〔du〕であったが、のちに舌尖有声破裂摩擦音〔dzu〕となり、室町末期には「ず」〔zu〕と混同しはじめ、現在一般には「づ」「ず」の区別はない。
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◉ 平野富二の会:平野正一さんからのメール紹介 ’20年02月27日
冬らしい寒さもほとんど無く、春の足音が近づいてきました。
おかわりありませんか。
ところできょうは、つまらない質問をさせていただきたく Mail しました。
テレビのニュースで手塚治虫が紹介されていたのですが、そこでは手塚治虫のローマ字表記は TEZUKA とZU になっていました。念のため調べたネットのオフィシャルサイトでも「 TEZUKA OSAMU OFFICIAL 」になっていました。
ローマ字では、TEDUKA、つまり「づ」はDUと標記すべきなのではないかと思いました。発音では「ず」「づ」はほぼ同じ(厳密にいえば違うのかもしれませんが)なのですが、手塚治虫の塚は〔ひら仮名表記では〕「づか」であって「ずか」ではありません。
ローマ字標記はこだわらなくていいものなのか …… 。ルールがあるのか、無いのか、アバウトなものなのか、この周辺状況をご教授くださいませ。
お忙しいところ、申し訳ありません。
「ポストカード」の一件もあったので妙にこだわっています。
{新宿餘談}
きさらぎ二月の末、会員の平野正一さんから@メールが到着した。
このローマ字表記法に関しては随分以前に印刷業界誌にまとまりが無いまましるしたことがあった。その再調査は興味ふかい命題であった。
そこですこしじっくりとり組もうとおもって、まず@メールの一部引用の許諾をもとめて架電した。折しも年度末、また新型感染症が世界規模で猖獗をきわめ 平野さんは団体幹部職員としてはご多忙のはずなのに……とおもっていたが、案の定二度とも「会議中です」ということであった。夜ふけに返電をいただいたが疲労感は隠せなかった。おそらく重圧のなかで、ちょっと気分転換を計られたと想像されたが、それでも実名表記で、全文紹介の承諾をいただいた。
稿者は音韻学・言語学は門外漢であるし、国語学・英語学とも無学であるが、わずかに字学研究者の末席を汚しているばかりと自覚している。つまり「ローマ字表記法」の調査とは、広大な氾濫原を踏査するような危うさがあり、いまや「専門家」と称する関係者はこれに触れることを巧妙に避ける風潮がみられる。
したがって平野正一さんへの返信は長くなりそうである。その交流の次第は、本{NOTES ON TYPOGRAPHY}に掲出して、読者諸賢と共に考えてみたい。