《馴染みのお店がどんどん消える昨今》
衣食住にはこだわりが無い …… と公言してきた。それはいまも変わらないが、さいきん馴染みの飲食店の廃業が続いてなさけない思いをしている。
酒は呑まないので和食の店はおおきく制限される。中国料理も大型店だとひと皿五人分ほどの料理が提供されるので、退勤途中に少人数で、ちょっと何品かで食事というのには料が多すぎるし、定食では飽きて物足りないこともある。
お気に入りだった中国料理店は「臺灣 ≒ 台湾小皿料理店」で、ママさんは中国瀋陽(中国東北部・旧奉天)出身であるが、コックさんとスタッフは台湾の出身。したがって少量で安いので、フラリと寄っても四-五皿の料理を楽しめるし、南部のお米料理・北部の万頭料理も過不足無くたのしめた。店がすいていれば 莨 も遠慮しながらではあるが吸うことができた。馴染みの店とはそんなものである。
この店が人手にわたったらしい。看板はそのままだったが、すっかり料理もふんいきも変わり、即座に逃げだしたものの代わりの店が無かった。
ようやく「新宿御苑共和会通り」に気に入りの店をみつけた。ホールは小姐-シャオジェとオバサンの中間ほどの姉妹で、キッチンはふたり。旨くて安いから30-40名ほどの団体も相当はいるが、このふたりは平然と消化しているからかなりのものである。
団体席との仕切りに「吉祥もんじ ── 合体字」があった。手許の辞書に熟語「合体字」はなかったが、「合体-ふたつ以上のものがあわさって、ひとつになること」で十分だろう。
月例会でこの写真が話題になり、中国大連近郊出身の張さんが、中国陝西省(日本でも)で流行っている「ビャンビャンメン」も例にあげて「合体字」の解説にあたってくれた。
【 YouTube 李玉萍 (萍萍老師) 書法/春聯教學 金字「招財進寳」楷書 1 : 49 】
《招財進寳の字画構成と意味》
「招財進寳ーzhaocai-jinbaoーしょうざいしんぽう」は金運を招き寄せる吉祥紋ーもんじである。
まず「たから-の異体字のひとつ、寳」を選び、ウカンムリから上部を書き進める。下部の「貝」は何役も兼ねるのでいくぶん細身に書く。ついで右側に「才」を置くと「財」になる。「才」をテヘンにみなして右に「召」を書くと「招」が完成し、左側に「隹ーふるとり」を書き、「辶-シンニュウ」を勢いよく蚕頭燕尾にまとめると、アラふしぎ ── 招財進寶のできあがりである。
紹介動画は台湾の書芸家。YouTube の文字部をクリックすると別ウインドウがひらき、拡大画面でみることができる。
ほとんどの中国人はお金へのこだわりを隠そうとしない。それでも安くて旨い中国料理をたのしんで、お店もお客も大判小判がザックザクとなればいうことなしである。
上掲写真は張さんが陝西省西安で撮影した「ビャンビャンメン」。この合体字も麺もあまりうまくなかったとは張さんの言。なぜかこの「もんじ」は日本の一部ではやっていると聞いた。稿者はこの麺を西安・北京と葛飾区亀有でも食べたことがあるが、やはり流行り物で格別の意見はない。
中国と台湾には、ほかにも吉祥もんじとして「集字」「畳字」があるが、わが国では別の意味でもちられているので、すこし整理していずれ紹介したい。
[協力:青葉水竜さん、張 文一さん]
{関連:花筏 台湾の縁起物 柿+橘+豚=開運臻寳シンポウ 諸事大吉 文と寓意}