忘却のかなたから活字と書物をよみがえらせた男たち−−−−−
 ウィリアム・モリスとその信奉者たちによってまきおこった個人印刷所運動(プライベート・プレス・ムーブメント)が沈静化した、今世紀初頭のことです。のちに「フラーロン派」とよばれ、あるいは「金属活字改良運動」とよばれた知的なグループが誕生しました。
 意外に気づきにくいのですが、現在わたしたちがつかっている金属・写植・電子活字などのうち、おどろくほど多くの活字書体が「フラーロン派」によって、歴史のかなたからよみがえったり、改良がほどこされました。
 ともすると従来はウィリアム・モリスとその「アーツ・アンド・クラフツ運動」を過剰に評価したり、その後のヨーロッパのデザイン潮流を、いきなりバウハウスに求めるかたむきが見られたように思います。
 『フラーロン』(1923-31)は、テオ・ファン・ドゥースブルフらの『ディ・スティル誌』(1917-31)とほぼ同じ時代に、合計7冊の、ちょっと雑誌とよぶには立派すぎる雑誌により ました。
 その主要なメンバーはスタンリー・モリスン、フランシス・メイネル、バーナード・ニューディギット、オリバー・サイモン、ホルブリック・ジャクソンらが第一次メンバーで「フラーロン協会」を1922年に結成しました。この会自体はまもなく失敗に終わったものの、翌年にモリスンとサイモンが中心になって、同名のタイポグラフィ情報誌『フラーロン』を発行しました。
 その執筆陣は綺羅星のようなタイポグラフィの研究・実践者であふれています。エリック・ギル、ビアトリス・ウォード、ジョバンニ・マーダシュタイグがなんども筆をとりました。
 寄稿陣もなかなかの存在です。1992年に「グラフィックデザイン」ということばを提唱したウィリアム・A・ドゥィギンズ、おなじくアメリカ人で『プリンティング・タイプス』の著者のダニエル・バークレイ・アップダイクなど多士済済です。
 そんな情報を『文字百景』「活字に憑かれた男たち5・金属活字改良運動とマーダシュタイグ 61号」、「活字に憑かれた男たち6・私家版印刷神話の形成と解体 62号」に片塩がまとめました。
 また白井敬尚さんが『スタンリー・モリスンとフラーロン派による金属活字改良運動の系譜 1922-55」として、A1たて半裁のビジュアルな年表にまとめてくれました。



















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