【会員の皆さまへ】 トロロアオイを育ててみませんか?

写真:熊田達夫 『植物の世界 75』 (朝日新聞社 1995)

唐突ですが……、一緒に「とろろアオイ」を育てていただけるかたを募集中です。
一年草のアオイ科の仲間には「ぜにアオイ」「たちアオイ」「もみじアオイ」などがありますが、「とろろアオイ」は印刷狂・活字狂・愛書狂をもって自他ともにゆるした「アオイ書房」の志茂太郎が、その社名にもしたほど愛した花として知られます。
またその根の粘液は和紙の糊料(俗にネリ)
として用いられ、古くは胃腸炎や喉頭炎の漢方薬としても利用されました。

全くの偶然でした……。奥多摩の活字版印刷所を訪ねた際に、すぐ近くに東京都指定の無形文化財になっている「手漉き紙」の工房があることを知りました。
さっそくバスに乗って駆けつけると、そこでは都内でたった一ヶ所だけの伝統技法による「紙すき」が実施されていました。

この工房と手漉き紙のことは、なにぶん仕事の合間に駆けつけただけでして、まだあまりに情報不足です。ですから改めて取材してご報告しますが、5月27日、ちょうど工房を訪れた際に、黒ポットで密生した「とろろアオイ」の苗を一本立ちにする作業がされていて、その黒ポットを五鉢わけていただきました。

帰宅後調べてみると、いまの苗こそ可憐ですが、成長がはやく、高さは1メートル余になり、茎の太さは5―10センチにまで巨大化するようです。そして晩夏のころ、茎頂に黄色の大形の五弁の花を1日だけ開花するようです。
ですから花も見たいし、根から採れるという粘液も採取して、また工房を訪れて「手漉き紙」を抄造したいのですが、猫の額はおろか、鼠の額ほどもないベランダ花壇では心許ないものがあります。

そこで、いただいた黒ポットの種苗を見よう見まねで一本立ちにして、成長を見まもっています。もし皆さまのうち、お庭が広かったり、プランターで育ててみようとおもわれるかたがいらっしゃいましたら、ご遠慮なくお申し出ください。
ご来社いただければもちろん無料でおわけします。
ついでながら……、もったいないとおもいながら抜いた「とろろアオイ」の若芽は、いっしょに採集してきた三匹の「カタツムリ」がムシャムシャと食べ尽くしてしまいました。この「カタツムリ」のおはなしは、いずれまた。

後日記 : とろろアオイの苗、配布終了いたしました。
それぞれのお庭やベランダで、すくすくと成長しますように!