2012年もよろしくお願い申し上げます

今年もまた新しい年を迎えました。
皆さまにとりまして穏やかで幸多き年となりますように、お祈り申し上げます。

アダナ・プレス倶楽部の年賀状は毎年、数ある欧文活字のなかから歴史順に一書体づつを選択して制作しています。
ブラック・レター、ヴェネチアン・ローマン、オールド・ローマン、トランジショナル・ローマンを経て、今年はモダン・ローマンの「ボドニ」の登場です。
「ボドニ」はイタリアの印刷者であり活字父型彫刻師でもあったジャンバティスタ・ボドニ(1740―1813)に由来する活字書体です。
パルマ公国印刷所の印刷監督官であったボドニの手がけた印刷物とその技量は、ローマ教皇庁や近隣諸国の王族にも知れ渡ることとなり、ボドニは王者のタイポグラファ、タイポグラフィの王者とも呼ばれました。

ボドニはフランス皇帝ナポレオンにも美しい書物を献上しています。『ローマ国王の両親に捧げるタイポグラフィと絵画による聖遺物』という長いタイトルゆえに、通称『チメリオ・ティポグラフィコ』と呼ばれるその書物は、生まれながらのローマ王としてナポレオンとハプスブルグ家皇女マリー・ルイーズの間に誕生したナポレオンⅡ世の誕生を祝して、1811年にたった一冊のみが刊行されました。

今回の年賀状では活字書体「ボドニ」を用いて、ボドニと同じ時代を生きたフランス皇帝ナポレオン・ボナパルト(1769―1821)の言葉を印刷しました。

縁取りの罫線は、ボドニの晩年から死後にかけてボドニ工房での使用が見られるパターンを模して、輪郭罫を用いて印刷しました。さて、この輪郭罫ですが、内側の子持ち罫に2種類の使用パターンが見られます。ボドニが世界の文字を活字であらわした『オラティオ・ドミニカ』では子持ち罫の太い線が外側に、ボドニの活字製作の見本帳ともいえる『マニュアル・ティポグラフィコ』では子持ち罫の太い線が内側になるように組まれて使用されています。今回はボドニの生前である1806年に刊行された『オラティオ・ドミニカ』のタイトルページを参考に、内側の子持ち罫は太い線が外側になるように組み合わせました。輪郭罫を四角く配するために、罫線の端が45度の角度になるように削って組み合わせてありますので、輪郭罫の四隅にそれぞれ切れ目が見えています。