朗文堂 アダナ・プレス倶楽部 こんな時代だから、活版印刷機を創ってます。

以前のコラムのページです。

コラム No.009

朗文堂 アダナ・プレス倶楽部の発足から 1 年がたちました。

その間さまざまなイベントに参加してきました。


カッパン印刷ファンの皆さま、ご来場・ご支援ありがとうございました。


秋色ますます色濃くなるこのごろです。この季節の町角に「年賀状印刷たまわります」のノボリがはためくと、ことさらプライヴェート・プリンターの胸はさわぎますね。

「今年こそは、クリスマス・カードも年賀状も、カッパンでバッチリ決めるぞ!」と。

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そんな暮れの忙しいときに余談めいて恐縮ですが ……、「活版・カッパン」ということばを考えています。このことばは、どこかさびしく、うらぶれた響きがあってあまり好きではありません。ましてこのごろは、「活版・カッパン」にむける一部の人々の視線に、自分は(一応、取りあえず)安全な先端産業の領域にいて、そのたかみから、まるで絶滅危惧種の哀れな弱小動物を見るような奢りの視線を感じないでもありません。

のっけから、すこし感情的なことを書きました。コラム欄のことですからなにとぞご容赦ください。外来の技術用語は、その技術の普及と共に、とかくことばが簡略化されるのがわが国の常です。たとえば現在隆盛をきわめている「オフセット平版印刷」を例にみるとわかりやすいかもしれません。

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オフセット平版印刷 → オフセット印刷 → オフセット → オフ

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またわが国の近代印刷においては、もっとも基準となる「印刷版」という概念が希薄です。

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印刷に用いる版材 → 印刷版 → 刷版(サッパン) → 版 → ハン、ハンコ

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以上を踏まえて「金属鋳造活字を主要な印刷版とする活字版印刷術—Typography 」と「金属鋳造活字はもちろん、各種凸版類を印刷版とする凸版印刷術—Letterpress 」という技術用語が、「活版・カッパン」へ推移していった経緯を推測すると以下のようになります。

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活字版摺立 → 活字版印刷 → 活版印刷 → 活版・カッパン

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格別ことばばかりにこだわるわけではありませんが、概念の希釈は物事の本質を見失うことがあります。ですから今後、アダナ・プレス倶楽部では、技術用語としては煩瑣をいとわず「活字版印刷」と表記し、それと併用して、人口に膾炙した「カッパン」をカタ仮名表記で用いさせていただきます。

閑 話 休 題

そんなわけで、今回は朗文堂 アダナ・プレス倶楽部の発足からほぼ一年が経過しましたので、その間の皆さまのご支持・ご声援へのお礼と、最後のイベントに関して、このコラム欄らしく、つれづれなるままに……。

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Adana-21J 試作機特別内覧会

期間:2006 10 27 – 29

会場:朗文堂 4F-B

主催:アダナ・プレス倶楽部

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Adana-21J 操作指導教室

期間:2007 4 月より随時開催

会場:朗文堂 4F-B

主催:アダナ・プレス倶楽部

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活版再生展

期間:2007 5 4 – 20

会場:世田谷キャロット・タワー 生活工房

主催:せたがや文化財団 世田谷文化生活情報センター

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ABCタイポグラフィ!

期間:2007 6 11 – 7 2

会場:青山ブックセンター青山本店 A 空間

主催:青山ブックセンター/朗文堂 共催

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IGAS 2007 (International Graphic Arts Show 2007)

期間:2007 9 21 – 27

会場:東京ビッグサイト

主催:全国印刷連合会他

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JANPS 2007 (第 19 回新聞製作技術展)

期間:2007 11 6 – 9

会場:東京ビッグサイト

主催:日本新聞協会

振り返ってみると、ただただ夢中で、慌ただしく、多忙な一年でした。とりわけ試作機の発注から設計・部品製造・組み立て・調整の間は、先行各社の特許・工業意匠権・商標権などに抵触しないよう、慎重を期して、法律の専門家をわずらわせたり、活字やインキや込め物などの関連機器や、資材の安定供給のみちを探ることも平行作業しておりましたので、テンヤワンヤの慌ただしさでした。

そして、21 世紀の日本のプライヴェート・プリンターやスモール・プリンターの中核となる「蝶番式プラテン活字版印刷機 Adana-21J 」が誕生しました。Adana の名称の使用は、このセルフ・インキング方式の考案者へのオマージュの心をこめて名づけたものであり、21J には、21 世紀日本の活字版印刷機のルネサンスの思いを込めたものでした。

試作機の完成からは、世田谷区、青山ブックセンター、全国印刷連合会、日本新聞協会など各種の団体・企業からのお誘いを受け、さまざまなイベントに参加してきました。そこではさまざまな嬉しい出逢いがあり、どれもが充実したイベントでした。  そして実売機の発売がはじまり、週末ごとに「 Adana-21J 操作指導教室」も熱気を帯びて開催されてきました。

いっときは、アダナ・プレス倶楽部の活動は、衰退を続ける活字版印刷業界の中にあって、「蟷螂の斧」とされたむきもなかったわけではありません。それでも、開発決定以来のパートナーの小池製作所をはじめ、明和ゴム、山櫻、DIC などの有力企業のご支援もいただき、また多くの友人・同志のバックアップもあって、ここに最後の楽しいイベントをご紹介できるところまできました。

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この Website の「ニュース」の欄でもご紹介していますが、アダナ・プレス倶楽部では今年最後のビッグ・イベントとして「カッパン ルネサンス フェア」を来る 11 30 日[金]・12 1 日[土]の両日、午後 1 – 7 時にわたって、本拠地の朗文堂で開催いたします。

プライヴェート・プリンター、スモール・プリンターのサポーターとして、アダナ・プレス倶楽部ならではの、お得な情報と機器をどっさりご用意してお待ちいたしております。ただし狭い会場ですので、恐縮ながら、混乱をさけるためにも「アダナ・プレス倶楽部会員」の皆さまの限定ご参加とさせていただきます。詳しくは ニュースNo.025 をご覧ください。

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