コラム No.010
長崎の3号活字がアダナ・プレス倶楽部に勢揃い!
本木昌造活字復元プロジェクトの漢字・両仮名をご寄贈いただきました。
コラム 008 で既報の「長崎からの活字」の続報です。
師走の 13 日、長崎の「本木昌造顕彰会」からのズッシリとした荷物が到着しました。もう中身は開梱しなくてもわかっていました。「長崎3号両仮名活字 219 字種」に続き、待ちに待った「長崎3号漢字活字 112 字種」でした。
「長崎3号両仮名活字 219 字種」は、東京ビッグサイトで開催されたふたつのおおきなイベント、IGAS(International Graphic Arts Show/2007 年 9 月 21 日—27 日/全国印刷連合会他主催)、JANPS(第 19 回新聞製作技術展/2007 年 11 月 6 日—9 日/日本新聞協会主催)で公開し、多くの皆さんに印刷体験までしていただきました。
ピッカピカに光る新鋳活字を開梱するときは、それだけで胸がたかまります。ましてこの活字セットは「本木昌造顕彰会」と印刷博物館をのぞけば、ほぼアダナ・プレス倶楽部だけが公開することになりそうな雲行きの貴重な活字です。
ところで「長崎からの活字」は、研究の手はほとんど復元までの作業にとどまり、せっかくの復元活字を実際に印刷・研究することはほとんどなかったという経過があります。かくいうわたくし(片塩)も「本木昌造活字復元プロジェクト」メンバーの末席をけがしてきましたが、活字収納ケースも無い身では、実際の印刷体験など望むべくもありませんでした。
ですからここにアダナ・プレス倶楽部の発足によって、Adana-21J が開発され、またミニすだれケースなども整備されることによって、ようやくその全貌をあらわすことになりました。つまりこの活字は、正式な書体名称が判明していないことはもとより、その実際の印刷物、とりわけ漢字が印刷物として公開されたことはほとんどありません。
アダナ・プレス倶楽部はこれらの資料と活字を公開し、何らかの研究チームを公募・結成して、この復元活字を多方面から研究したいと考えています。幸いなことに、ここのところ各種大学・教育機関が Adana-21J をご購入され、また新年度予算での購入検討が本格化しています。教育者や学生の皆さんには研究・論文のテーマには格好の存在ですし、もちろん、アマチュアやホビー・プリンターの皆さんにも積極的にご参加いただきたいと存じます。いまはまさに、素晴らしい新鋳造活字を眼前にして夢がおおきくふくらんでいるときです。
【長崎の活字の詳細】
3号漢字の紹介
キャラクター数:112 キャラクター(現在の JIS 規格やユニコード規格とも字体が異なるものが多い。総キャラクター紹介はユニコード規格の字種を含むため、別途画像紹介:ページ下部)
1 キャラクターの本数・重量:22 本ずつ。およそ 90 グラム。
総本数・総重量:112 字種× 22 本=2,464 本。112 字種×90 グラム=およそ 1 キログラム
書体は『 BOOK OF SPECIMENS 』(俗称明治 10 年版築地活字見本帳・平野ホール所蔵/参考資料『ヴィネット 08 富二奔る』) 6 ページ所収の「第三号(築地初期楷書体)」に近い。巷間伝えられる 7 ページ所収の「第三号(行書風書体)」ではないとおもわれる。
3号両仮名の紹介
ひら仮名は多くのひら仮名異体字(変体仮名)を含む。また長崎諏訪神社所蔵の木製種字には見られない、ひら仮名の濁音字、半濁音字、促音字が見られる。
カタ仮名にも「イ → 井」「ネ → 子」などのカタ仮名異体字が見られる。
ひら仮名・カタ仮名を合わせて 219 キャラクターが完成している。
1 キャラクターにつきそれぞれ各 40 本を所蔵した。
句読点、括弧、中黒、疑問符などの約物類は存在しない。
書体は『 BOOK OF SPECIMENS 』(俗称明治 10 年版築地活字見本帳・平野ホール所蔵/参考資料『ヴィネット 08 富二奔る』)15 ページ所収の「第三号」第一パラグラフのカタ仮名と、第二パラグラフのひら仮名に近い書体である。
本木昌造活字復元プロジェクト
三号活字字種摘要表