以前のアダナ・プレス倶楽部ニュースです。
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ニュース No.002 【アダナ・プレス倶楽部便り】
Adana-21J とジェームズ・モズレーさん
アダナ印刷機「 Adana-21J 」が工場での検収を終えて、朗文堂/アダナ・プレス倶楽部に搬入されたのは 2006 年 10 月 9 日[月]のことで、この日はちょうど体育の日で祝日でした。設置を終え、工場のスタッフといっしょにまずは試運転という最中に来社されたのが、英国のセント・ブライド印刷博物館・前館長/ジェームズ・モズレーさんでした。モズレーさんは今回が初の来日で、ご専門は、書誌学・図書館学・パレオグラフィ(古書体学)・タイポグラフィ・カリグラフィと多岐にわたっています。
またその論文や著作はきわめて多数を数え、最近も『 THE NYMPH AND THE GROT 』を著し、サンセリフの誕生(リヴァイヴァル)をあらたな視点から説きおこして注目されました。
こうした世界の印刷界の権威ともいうべきモズレーさんと、夕方から懇談と会食の予定はしていたのですが、なんと約束の時間より 1 時間半もはやく到着されたために、スタッフは大慌てでアダナ印刷機を片づけようとしたのですが、オックスフォード大学修士課程の履修中に、活字鋳造所に勤務されたこともあるモズレーさんは、興味深そうに試作機をご覧になり、やがてじつに気軽に、
「どれどれ、わたしにも刷らせてください」
とのことで、「 Adana-21J 」の試作機での印刷に挑戦されました。つまりこの試作機を使用したのは、スタッフを除けばモズレーさんがはじめてという「珍事」になってしまいました。
ところで、そのモズレーさんの印刷ぶりは腰のはいった本格的なもので、スタッフ一同感動するやら、感心するやら大忙しでした。
印刷を終えて、モズレーさんは、
「ここのところ、世界の各地でまだ十分使用できる活版印刷機が廃棄される悲しい現場をたくさんみてきました。ですからおそらく、この小さな活版印刷機は、21 世紀になって誕生した世界でもはじめての活版印刷機でしょう」
と嬉しそうに述べられました。なにしろテスト用の粗末な用紙しかなく、印圧調整のいとまもなかったのですが、それでもモズレーさんは自ら印刷した 1 枚を丁寧に間紙にはさんで鞄にしまわれ、もう 1 枚にはサインをしてわたしたちに残されていきました。
[ James Mosley さんの略歴]
1953 — 1956 |
英国ケンブリッジ大学で修士号を取得 |
1955 |
Stevens, Shanks & Co Ltd, で活字鋳造に従事 |
1956 — 1958 |
St Bride Printing Library に司書助手として勤務 |
1958 — 2000 |
St Bride Printing Library に司書・館長として勤務 |
1964 — 2000 |
Reading University, Department of Typography & Graphic Communication Visiting Lecturer 1964 — 2000 Visiting Professor 2000 — Institute of English Studies, London University Senior Research Fellow 2000 — Rare Book School, USA Columbia University, New York 1984 — 1991 University of Virginia, Charlottesville 1993 — |
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