朗文堂 アダナ・プレス倶楽部 こんな時代だから、活版印刷機を創ってます。

以前のアダナ・プレス倶楽部ニュースです。
現在はブログにてお知らせしております。

ニュース No.005 【アダナ・プレス倶楽部便り】

たかが文選箱、されど文選箱

《雄飛堂印刷所/市村考由さんの文選箱》
文選職人が使い込んだ味わいのある文選箱

雄飛堂印刷所/市村考由さんは、活版印刷の「文選」ひとすじで半世紀余をすごされた大ベテランです。まだ新宿ゴールデン街のかたわらを都電が走っていたころに、文房具・印刷を主業務としていた大店・新宿「大我堂印刷部」に入社されました。その後大我堂の閉鎖にともない、植字の専門家の友人とともに雄飛堂印刷所と名づけて独立開業し(その時の「活字の引越し」のお話が興味深いので、いずれ続編としてご紹介します)、おもに文選・植字を中心とする活版印刷所を板橋区で経営されてきました。残念ながら植字担当の友人の体調がおもわしくなく、2006 年の夏で「有限会社雄飛堂印刷所」は終止符を打つことになり、その際、市村考由さんの血と汗の結晶ともいうべき思い出深い文選箱やすだれ・ケースをはじめ、一部の活版用機器を朗文堂/アダナ・プレス倶楽部がお譲りいただきました。文選と植字、すなわち活字組み版を中心として営業されてきた雄飛堂さんには、実に大量の活字がありました。そのために「すだれケース」はもとより、文選箱も大量に、そしてさまざまに工夫されたものがありました。

雄飛堂版文選箱の種類は以下のとおりです。

asterisk仕切り無し

箱によっては、長年の使用によって自然に刻み込まれたセッテンの跡を、箱の内側面に見ることができます。

asterisk2 段仕切り・3 段仕切り・4 段仕切り・5 段仕切り

主に活字の取り置き(ストック)用に使われていた箱には、外側面にその箱に収まっていた文字が手書きで記されています。

asterisk数字ケース用

数字や約物の小分け収納に便利な、格子状の仕切りつき文選箱です。

《濱野製作所製造の文選箱》
名匠父子によって甦り、継承された活版木工の伝統。

濱野さん

最後の活版木工職人といわれる濱野清さん、栄一さん父子の手による、まっさら新品の文選箱をご紹介します。有限会社濱野製作所は現在も各種木工製品を製作していますが、活版印刷が盛んだった昭和 30 年代には「活版木工所」として、活版印刷用木工製品の専門工場でした。当時はこうした活版木工所は全国に数十件はあったそうですが、次第に数が減り、気がつけば濱野製作所一軒だけになっていたそうです。いまでも東京都内のどこの活字店や活版印刷所にうかがっても、「すだれケースや文選箱は濱野さんに頼んでいる」、「濱野さんに頼めば活版木工品は手に入る」といった返事が返ってきますが、実際にはもうすでに数年前から活版木工の仕事はほとんど請けておらず、製作に必要な型や専門道具の一部も処分されてしまったとのことでした。

 しかし、今回の朗文堂/アダナ・プレス倶楽部による活版印刷の再生と創造の趣旨にご賛同いただき、特別に生産を再開していたく運びとなりました。定評ある濱野製作所による活版木工製品は、長年の使用と金属活字の重みにも耐えられるように、材料を厳選し、つなぎ目や仕切りなどの隅々にまで細やかな細工を施した名人技の木工品です。

 現在のところ、アダナ・プレス倶楽部では「仕切り無し」の文選箱のみを委託生産しておりますが、ご希望が多ければ、今後、仕切り有りの生産も検討いたします。また文選箱を斜めに立てかけた状態で収納する「文選箱収納ケース」をご要望の方は、個別に寸法・見積もりの対応をさせていただきますのでアダナ・プレス倶楽部にご相談ください。

ゲラ文選箱

ケース活字ケース

活字ケース込め物ケース

Robundo Publishing Inc. Tokyo JAPAN