以前のアダナ・プレス倶楽部ニュースです。
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ニュース No.007 【アダナ・プレス倶楽部便り】
フランス国立印刷局の文化遺産保存への署名運動にご協力ください
倉頡文庫所蔵:Imprimerie Nationale の活字見本各種
2 — 3 年ほど前から印刷界の一部で話題になっていた「フランス国立印刷局」の敷地・資材の売却ばなしですが、いよいよ予断をゆるさぬ緊迫した状況になりつつあるようです。在仏の AtypI(国際タイポグラフィ協会)会長、タイポグラファのジャン・フランソワ・ポルシェ氏から、日本のタイポグラファの仲間からも、緊急に「フランス国立印刷局の文化遺産保存運動」への賛同の署名を寄せて欲しいとの依頼がありました。詳しくはそのための Website: http://www.garamonpatrimoine.org/petition.html をご覧ください。日の丸のところをクリックすると日本語バージョンが出てきます。署名欄はフランス語と英語のページだけですが、そう複雑ではなく、この趣旨にご賛成のかたならばご署名いただけると存じます。
パリのセーヌ川沿いの 15 区に「フランス国立印刷局」はあります。その歴史はきわめて古く、コレージュ・ド・フランスと同じ 1539 年に創設され、「王の印刷師」たちの時代をへて、正式にはルイ 13 世治下の 1640 年に設立された王立印刷所に起源を発します。ナポレオン皇帝の時代には帝立印刷所となり、共和制になってからは国立印刷局と称しています。1994 年に国家を 100 % の株主とする会社組織に改組されましたが、2005 年 6 月にいたって閉鎖されました。
このあたりは日航ホテルなどの高層ビルが 1960 年代からたくさん建築された再開発地区でもあります。そこに古い煉瓦立ての偉容を誇る建物が「フランス国立印刷局 Imprimerie Nationale 」です。周囲の道路は「グーテンベルク通り」や、フランスの名門活字鋳造所の子弟で、第一次世界大戦に散った「ペイニョ四兄弟通り」などが連なっている、印刷の名所でもあります。
また、この施設がいかに貴重なものであり、ここから移動するだけでも大きな損失があることは、わが国の資料では、東京外国語大学教授・高島 淳氏の論文「旧フランス国立印刷局の活版印刷の伝統と現状」( http://www.aa.tufs.ac.jp/~tjun/index.html )、多摩美術大学教授・港千尋氏の写真集『 In – between 2 港千尋 フランス、ギリシャ』(港千尋 EU・ジャパンフェスト日本委員会)、『文字百景 038 パリのタイポグラフィ行脚』(酒井哲郎 朗文堂)などがありますのでご参照ください。
フランス国立印刷局の文化遺産保存運動の趣意書
www.garamonpatrimoine.org/ より転載
フランス政府は、国立印刷局グループ(民営化されましたが、国が実質上の株主)の各種部門と、所有する一部の「歴史的建造物」を含む建物の保存を、深く考慮せずに売却しようとしています。来年 2005 年の前半には印刷局を未決定の場所に移転する意向です。
国立印刷局の文化遺産コレクションは世界でも比類のないものです。それは 16 世紀から今日までの活字文化の証言であり、価値のつけようもありません。この文化遺産コレクションの中には、活字父型(活字母型製作に使用)のアトリエも含まれており、そこには西洋・東洋(そして世界中)の数知れぬほどの活字父型が保存され、今日でもその技術を伝承するための活動が続けられています。
ほかにも、活字鋳造アトリエ、活版印刷アトリエ、リトグラフ印刷アトリエ、凹版印刷アトリエ、仮綴・製本アトリエ、そして 3 万冊を越える蔵書類と、国立印刷局としてのアーカイブが含まれています。国立印刷局はコレージュ・ド・フランスと同じ 1539 年に創設され、それ以来の印刷技術のノウ・ハウの歴史が蓄積した遺産であり、かつ創造の場です。しかし、それが継承されずに消え去ろうとしているのです。
博物館、保存、活字の創造、出版、教育、研究、これらの一連の文化遺産は、そのコレクションを内容的にも、機能的にも分割してはならないのです。そして経済的効率しか考慮しない監督省庁から独立したものであるべきではないでしょうか。
つまりこの「国立印刷局」の施設は引き続いてパリに所在し、この文化遺産コレクションをより豊かにし、発展できる適切な手段と、能力を有する機関に受け入れられるべきなのです。なおかつ、可能ならば非営利目的で、監査を受ける財団を誕生させて、保存、広報、研究を行なえば理想的ではないでしょうか。
また、それと平行して、今日行なわれている現場での生産、保存、研究、教育活動を停滞させることなく、その機器と専門知識を出来る限り敏速に、かつ一時的に移転するための必要な措置をとるべきだと思います。救うべきなのは貴重な国立印刷局のオブジェだけでなく、その人材、職業、知識も一緒です。それらが世界文化史から消え去る前に、わたしたちは緊急に救わなくてはならないのです。
わたしたちはこの文化的破壊を中止するために、あらゆる手段を講ずることを要求します。それらの手段を直ぐに講じなければ、それはわたしたちの歴史、そして思想普及の根源そのものの破壊を意味するものであり、わたしたちはそれを拒否します。
電子メイルで署名をなさる方は www.garamonpatrimoine.org/ でお願いします。
この請願書とその他の署名書類はフランス共和国大統領宛に送付されます。
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