以前のアダナ・プレス倶楽部ニュースです。
現在はブログにてお知らせしております。
ニュース No.010 【アダナ・プレス倶楽部便り】
小池林平と活字鋳造
日本の活字史のもうひとつの側面から
活字鋳造師
錫と鉛の秘法をもって
鋳造活字をつくるのがこの儂じゃ
組版は正確きわまりなく
整然と活字がならぶ
ラテン語、ドイツ語
ギリシャの文字でも同じこと
イニシャル、句読点、終止符と揃え
あとはいつでも刷るまでさ
Illustration by Jost Amman
Text by Hans Sachs
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アダナ・プレス倶楽部が Adana-21J の機械本体の製造を依頼している企業は「小池製作所」といいます。創業は 1941(昭和 16 )年、設立は 1947(昭和 22 )年と、古い歴史を有し、印刷関係のさまざまな機器を製造してきた工作機械メーカーです。小池製作所が製造した活版印刷関連機器は「自動罫インテル鋳造機」「トムソン型自動活字鋳造機」「見出し活字鋳造機」「自動花罫鋳造機」「 KMT 自動鋳植機」などが知られています。
小池製作所の技術陣はとても積極的で、アダナ・プレス倶楽部の Adana-21J 試作機に対する改善要望には、即座に明確な諾否の答えが返ってきますし、操作性、耐久性、利便性の向上に向けてあくなき向上心をもっています。そんなみなさんですが、その技術力の高さは世界でも認められ、ときおり工具箱ひとつを抱えて、国内はもとより、世界各地をとび廻っておられます。古くはモノタイプ社の代理店として欧米をはじめとする世界各国の自動鋳造機のメンテナンスに、近年では印刷の技術革新が盛んなインド、パキスタン、タイ、シンガポール、インドネシア、中国、香港、台湾、韓国などの国と地域からの依頼がひっきりなしです。
「お一人で海外に行って、会話に不自由しませんか」
ある日、明日から海外出張に出かけるという寡黙な技術者にうかがったことがあります。
「別に不自由はありませんよ。機械の調子は音を聴いてやればすぐ解りますから」
「…………。そうですか」
何となく納得させられるものがありました。
現在の小池製作所も「知る人ぞ知る」企業であり、自社の Website も格別には設けていません。そこで余計は承知で、同社の技術力と名前をみなさんにもっと知っていただきたく、同社の企業史ともういべき『活字文化の礎を担う/小池製作所の歩み』(東洋経済印刷 小池製作所 昭和 60 年 6 月 30 日)から、先代社長/小池林平氏を中心に、「活字」がなぜ「文化」とされ、その「いしずえ」をどのように同社が担ってきたのかをご紹介します。
つまり、活字鋳造法の長い歴史と、普遍の技術をなんとか解りやすく記述しようとしたのですが、すこし長くなりましたので、もしも、ご関心、ご興味をもたれた方は「ニュース 特集記事」をご笑覧ください。
『活字文化の礎を担う/小池製作所の歩み』
(東洋経済印刷 小池製作所 昭和 60 年 6 月 30 日)
主要登場人物と、その業績と製品
大川光次(1853—1912)
もと彦根藩鉄砲鍛冶出身/大蔵省印刷局鋳造部伍長
活字鋳型(type mold)の製造
「小型鋳造機/カスチング」の製造
↓
大岩久吉(?—1937 )/大岩鉄工所
もと東京の煙管(キセル)金属職人出身/大川光次に学ぶ
「トムソン活字鋳造機」の仕上げ装置の開発
「大岩式自動活字鋳造機」の製造
↓
小池林平(1915—96)/小池製作所
佐渡郡相川町出身/大岩久吉に学ぶ
「自動罫インテル鋳造機」の製造
「見出し活字鋳植機」の製造
「KMT 型全自動組版機」の製造
小池林平 1985 年
「KMT 型全自動組版機」
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