朗文堂 アダナ・プレス倶楽部 こんな時代だから、活版印刷機を創ってます。

以前のアダナ・プレス倶楽部ニュースです。
現在はブログにてお知らせしております。

ニュース No.014 【アダナ・プレス倶楽部便り】

活版印刷再生に向けた各地の動きをお伝えします。

このたび公的団体である「財団法人せたがや文化財団」様の主催によって、「世田谷文化生活情報センター 生活工房 10 周年記念事業 活版再生展」が開催されることになりました。まことに感慨無量、欣喜雀躍の思いがいたします。ご担当者さまからお誘いをいただきましたので、できたての「 Adana-21J 」と、ピッカピカの新鋳造活字をもってゲスト出演いたします。会場は三軒茶屋駅から至近のキャロットタワーの 3F4F になります。ふるってご参加ください。

活版再生展

会 期:2007 5 4 日 — 5 20

時 間:11:00 — 19:00

会 場:ワークショップ B 4F )/生活工房ギャラリー( 3F )※会期中無休・入場無料

アダナ・プレス倶楽部の出演

5 7 日(月)14:00 — 17:00

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Adana-21J を使って、お客さまに「ウエルカム・カード」を印刷していただきます。参加費は無料です。

5 19 日(土)13:30 — 16:30

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Adana-21J でオリジナル・ミニカードをつくろう!

自分の絵がその場で樹脂版になり、活字と組み合わされて印刷が楽しめます。定員 8 名で、参加費は 2,000 円です。

応募の詳細は Websiteせたがや文化財団生活工房)でご確認ください。

オリジナル・ミニカード・サンプル 青オリジナル・ミニカード・サンプル 白オリジナル・ミニカード・サンプル 黄オリジナル・ミニカード・サンプル 赤

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「活版再生展に寄せて」

いまから 120 年ほど前、19 世紀世紀末のイギリスのことです。当時のイギリスは産業革命を達成し、世界最強を誇る国勢をみていました。当然活字と印刷術も長足の進展をみましたが、世紀末ともなると、過度の合理化、省力化、そして経済利潤の追求ばかりが目立つようになり、植民地の独立などによって国勢にも衰勢が忍びよっていました。ロンドンの街並みは煤煙でおおわれ、河川は汚物と汚水が氾濫し、ひとびとは労働の喜びと存在意義が判然としない時代相だったようです。つまり活字と印刷術、とりわけ書物にとって、19 世紀は必ずしも幸せな時代とはいえませんでした。

 そうした混迷期や頽廃期には、まず思想家が登場して、混迷を解析し、改良の理想を説くものです。ジョン・ラスキン( John Ruskin 1819 — 1900 )はイタリアの建築に造詣が深く、芸術批評家、社会思想家でもありましたが、著作『建築の七灯』『この後の者にも』『胡麻と百合』などを著して、産業革命の悪しき側面からの離脱をうながしました。

 その理想に共感し、テムズ河畔に可憐なまでにちいさな、1 コース定員が 10 名ほどの教育施設「 Central School of Arts and Crafts ロンドン中央美術工芸学校」を設けたのがウィリアム・R・レザビー( William Richard Lethaby )であり、その教育内容をひろく紹介したのはアイザック・ピットマン卿父子による SIR ISAAC PITMAN & SONS 出版社によるシリーズ図書「 THE ARTISTIC CRAFTS SERIES 」でした。

 この動向や運動は、わが国ではウィリアム・モリス( William Morris 1834 — 96 )を通じて語られることが多く、「芸術と工芸の統合 ── アーツ & グラフツ運動」などとして親しまれている一連の運動です。周知のようにウィリアム・モリスらが唱えたのは「 Private Press Movement 個人印刷所運動」でした。すなわちモリスは印刷専業者ではありませんでしたが、アマチュアであっても、個人の小さな力を結集して、活字と書物の良き再生を意図し、労働の喜びと人間性の回復を計った運動体でした。この運動は 20 世紀の初頭に、スタンリー・モリスン( Stanley Morison 1889 — 1967 )らによって批判的継承がなされ、金属活字改良運動へと連なっています。つまり欧州、なかんずくイギリスにおいては、19 世紀末から 20 世紀の初頭にかけ、活字と書物のありようにひとつの節目を形成しています。

 残念ながらこの時代、わが国においては時期遅れの産業革命を享受しており、欧米列強諸国に追いつき追い越せという国策のもとに、殖産興国、富国強兵が叫ばれていた時代でもありました。活字と書物も、大量・一括・廉価が求められ、合理化・省力化・価格競争・都市への人口集中による分業化がなんの疑いもなくおこなわれていました。

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 閑話休題、ここに朗文堂の古い年賀状をご紹介しました。これは暇なお正月に、炬燵にもぐり込んで蜜柑でも食べながらご笑覧いただこうという狙いで、15 年ほど継続している定型パターンです。「正月早々、長口舌につきあっていられるか……」と不評の声も聞こえるのですが、それにめげず、クドクドと書いているこのごろです。

『祝活字復興元年』2003 年 年賀状

『祝活字復興元年』2003年 年賀状

『乾杯! 活字版印刷復興元年』2007 年 年賀状

『乾杯! 活字版印刷復興元年』2007 年 年賀状

このように、ここ数年、活字復興、活版再生、ルネサンスだ……、と念じ続けてまいりました。そしてついに、昨秋に朗文堂/アダナ・プレス倶楽部を立ち上げ、ようやく「蝶番式プラテン小型活版印刷機 Adana-21J 」の製造・販売にたどりついたのが現状です。したがいまして、このたびの「せたがや文化財団」様のご英断に深くお礼を申しあげます。

朗文堂 アダナ・プレス倶楽部

〒160-0022 東京都新宿区新宿2-4-9 中江ビル4F

telephone : 03-3352-5070 / facsimile : 03-3352-5160

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