『書字法・装飾法・文字造形』
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『書字法・装飾法・文字造形』
エドワード・ジョンストン著 遠山由美訳 |
B5判 ソフトカバー・ジャケット付 312ページ かがり綴じ 図版多数(一部2色印刷)
定価 本体4700円 + 税 ISBN4-947613-78-5 C1070 |
手製の書字台に向かうジョンストン 1902年撮影 |
およそ百年前の1906年 ロンドンのCentral School of Arts and Craftsのテクニカル・ハンドブック・シリーズとして、本書は若きエドワード・ジョンストンによってしるされました。19世紀の後半のイギリスでは産業革命のわるい意味での影響で、あまりにひとの能力が軽視されて機械の支配がすすみました。また金融支配が強固となって、なにごとにも効率化と経済性ばかりが重視されました。 |
そこではカリグラフィの伝統は途絶え、タイポグラフィも危機に瀕し、装飾をはじめ工芸全般の基盤があやうくなっていました。そのなかで開講されたジョンストンの装飾技術学科の講座とは、週1回180分授業の夜学で定員は6名ほどといった小規模なものでした。 本書の執筆に着手したとき、ジョンストンは29歳の若さであり、またはじめての著作でもありました。したがって若さゆえの未成熟や、過剰なまでの丁寧さや、重複した解説もみられます。 しかしながら現代のわが国は電子工学の進展によって、第二の産業革命ともいうべき社会現象が見られて、造形界はおおきな混乱と深刻な危機に瀕しています。すなわち造形者に任されていた特殊技能の一部を、電子機器やそのソフトウェアが収奪して、職業的存立基盤を危うくする社会現象がみられます。 そんないま、ようやくここに第一次産業革命下での混乱から欧州の造形界を救ったとされる『WRITING, ILLUMINATING, AND LETTERING』の邦訳書の完成をみました。本書は原出版社のピットマン社から30刷りほどの元版のままの増刷がありましたし、その後は印刷方式こそオフセット平版印刷になったとはいえ、いまだにどの英語版も原著のままのデザインを複製して各国・各社からの刊行がつづいています。独語訳のほうは若干の改訂がありましたが、オンライン・ショップをのぞくといまだに英語版・独語版ともに「売れ行き良好書」と表示されています。 したがって本書は世紀を越えて「売れ行き良好書」とされる原著と同様に、ベストセラーではなく、ロングセラーの書物であって欲しいと願っています。かつてのアーツ&クラフツ運動が成熟した先進国の造形界にもたらした豊穣なる成果のように、本書がいささかでもこれからのわが国の造形界の再建と変革に役立ってほしいと願うこと切なるものがあります。 |
『書字法・装飾法・文字造形』
目 次 |
発刊によせて ウィリアム・R・レザビー William R. Lethaby
エドワード・ジョンストン/その人となり ノエル・ルーク Noel Rooke 著者まえがき エドワード・ジョンストン Edward Johnston 第一部 書字法と装飾法 WRITING AND ILLUMINATING 第 一章 書字法の発達 第 二章 正書体の習得──(一)道具の準備 第 三章 正書体の習得──(二)方 法 第 四章 正書体の習得──(三)手 本 第 五章 正書体の習得──(四)練習編 第 六章 写本の制作 第 七章 ヴァーサル体と採色大文字 第 八章 黒と朱赤 第 九章 ギルディング(金箔の扱いかた) 〈特別寄稿〉 ギルディングについて グレイリー・ヒューイット Graily Hewitt 第一〇章 彩色と金で仕上げる頭文字およびシンプルな装飾の仕方 第一一章 装飾の理論(一) 第一二章 装飾の理論(二) 第一三章 装飾の理論(三) 第二部 文字造形 LETTERING 第一四章 優れた文字造形/文字の造形と配置 第一五章 ローマン体とその派生形 第一六章 特別科目 第一七章 石 碑〈特別寄稿〉エリック・ギル Eric Gill 巻末図版の解説 訳者あとがき 遠山由美 |
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