ことばが活きている限り、技術は生きつづけます。今、活版印刷の再生のために、まずことばを甦らせました。

Glossary サラマ・プレス倶楽部の皆さんのための活版印刷用語集

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【活字 printing type, type ; Schrift, Type

活字

鉛を主体として、アンチモン(アンチモニーとも Antimon )、スズ(錫)を配合した 3 元合金で、鋳造した金属柱の上面に、左向き(逆向き、鏡文字とも呼びます)の文字・記号を突起させたものです。組み合わせて使うために「可動活字 movable type 」とも呼ばれます。文字活字の合金はふつう、流動性にすぐれた鉛が 70 — 80% 、硬度を増すアンチモンが 12 — 20%、塑性( plasticity 変形しやすい性質・可塑性)にかかわるスズが 1 — 10% ほどですが、各社・各国それぞれの配合率となっています。こうした活字と、込め物・罫線などを組み合わせて、活版印刷用の刷版を作ります。ちなみに込め物の合金比率はふつう、鉛 86%、アンチモン 12%、スズ 2% ほどです。

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【活字の高さ height of type ; Schrifthöhe

活字の高さ

活字の高さとは、活字の足から字面までの高さ(長さ)のことです。とかく活字では、そのサイズ(大きさ)が問題にされますが、この高さに相異があると、版面に高低を生じ、印刷の際のムラ取り作業の時間と労力を必要とします。現在の「高さがゼロ」の写植活字や電子活字と違って、鉛合金で鋳造される金属活字ではサイズとともにその「高さ」も大きな問題となり、長年にわたって議論と検討が重ねられてきましたが、その統一は容易ではなく、現在の金属活字も、国や地域ごとに、また企業や鋳造所ごとに微妙な相異があります。大別すると、活字の高さも「アングロ・アメリカン・ポイントシステム」の採用国と、欧州大陸諸国による「ディド・ポイントシステム」の採用国とに大別されます。すなわちアメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリアなどは 1886 年アメリカの活字鋳造業者が採用した 0.918inch 23.32mm )を標準としていますが、フランス、ドイツ、イタリアなどの諸国では 0.928inch を標準としています。わが国では、大手新聞社や大手印刷所では英米式の 0.918inch を採用しましたが、その他の活字鋳造所では高さが一定せず、0.922-0.927inchの範囲の物を採用しています。なお 1962 年に日本工業規格で活字の高さの基準寸法を 23.45mm とし、その許容誤差を 3 — 24pt. では ±0.03mm26.25pt. 以上では ±0.04mm と定めました。しかし、活字の高さとは、活字母型の谷の深さや、鋳型の寸法とも微妙に関係しますし、商業的な理由からも、その統一は容易ではなく、現在も一部に混乱がみられます。

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【活字の大きさ】

活字の大きさ

「号数制活字」

活字類の大きさを表した制式。清王朝後期にヨーロッパやアメリカから中国に輸入された様々な活字の大きさが元となっているとみられ、初号がもっとも大きく、1 — 8 号と数値が増すにつれて小さくなっています。それぞれのサイズの根拠に研究が進んでいますが、いまだ定説をみるにはいたっていません。わが国には幕末から明治初期に中国経由で導入され、広く採用されたシステムですが、明治末期から次第に「アメリカン・ポイント制」に移行しました。それでもいまだに端物印刷を中心に製造・販売されているのが「号数制活字」です。下記の各行中の号数の間には 2 倍の関係が成り立ちますが、各行の系列間には関連性がありません。

1 号:27.5pt.4 号:13.75pt.

初号:42pt.2 号:21pt.5 号:10.5pt.7 号:5.25pt.

3 号:16pt.6 号:8pt.8 号:4pt.

また、1962 年に日本工業規格によって号数システムの大きさが定められました(新号数)が、東京を中心とする関東地方では活字業者が林立していたために、JIS 規格に従った号数規格の活字は普及・定着し難かった歴史があります。いっぽう、関東地域以外の諸地域では、ほとんどが JIS 規格による新号数サイズに変更しましたので、号数活字には歴史的背景と地域的背景の混乱が収束されないまま現在に至っています。そのため、号数の活字を使用したり補充したりする場合には、注意が必要です。

「新号数制活字」

5 号活字 10.5 ポイント) 8 1 の大きさ 1.3125 ポイント、0.46125mm を基本単位とする金属活字の倍数体系です。この制度による活字単位を S(新号数制活字の略称)と呼び、これを 3 — 20 倍して 8 種類の大きさをつくりました。しかしながらこの体系は JIS として制定されたものの、東京を中心とする関東圏では普及しなかったという経緯があります。新号数制活字の大きさを、ポイントに換算すると下表のようになります。


号  数

ポイント

初 号

42.0

1

26.25

2

21.0

3

15.75

4

13.125

5

10.5

6

7.875

7

5.25

8

3.9375


「ポイント point, pt. ;  Punkt

活字および込め物の大きさの標準単位。わが国や英米諸国ではほぼ 1/72inch 0.3514mm )を 1point とする「(アングロ・アメリカン)ポイント制」を採用しています。活版印刷において、ふつう「ポイント」と称する場合にはこの標準サイズを指します。それに対して欧州大陸諸国では、フランスの常用尺の 1/72inch 0.3759mm )を 1point とする「ディド式ポイント制」を採用してきました。しかしながら現代のコンピューター組み版システムのほとんどでは、正確な 1/72inch 0.3528mm )が採用されています。

「ポイント制活字 point system ;  Punktsystem

もともと近代活字を考案した欧州においては、活字の大きさをあらわす一定の単位が無かったという歴史があります。もちろん当時から大小の活字がありましたが、それには Minikin, Brilliant, Gem, Diamond, Pearl などの名前をつけて呼んでいました。現在のわが国で「ふり仮名」の代名詞となっている「 Ruby ( Agate ) ルビ」もそのひとつで、和文本文用の大きさとして使われていた 5 号 活字(約 10.5pt. 相当)のふり仮名として用いられた 5 号活字の半分の大きさの活字、つまり 8 号活字(約 5.25pt. 相当)が、当時欧米で用いられていた 5.5pt. の大きさの活字、つまり「 Ruby ( Agate )  ルビ」活字の大きさに近似値であったことから由来します。そのためにどうしてもボディ・サイズが不正確、不統一になりがちで、また倍数関係が明らかでなく、活字鋳造所や鋳造の時期によって、同一名称の活字でも多少の相異があるという不便がありました。そのポイント制活字が現代のコンピューター組み版システムの登場によって、正確な 1pt. =1/72 inch 0.3528 mm )となるまでには長い苦難の歴史がありました。詳しくは専門書に譲り、ここではおもに鋳造活字に限定して「ポイント制活字」をみてみましよう。

関連用語/ポイント・ゲージ、ポイント尺、ポイント・スペース、ポイント・セット活字、DTP ポイント

「ディド式ポイント制」

1737 年フールニエ( Fournier le Jeune, Pierre Simon 1712 — 68)は当時のフランスの基本的活字であった「シセロ Cicero 」を基準とし、その 1pt. 0.01373inch 0.3478mm )としました。しかし 1770 年頃ディド( François Ambroise Dido 1730 — 1804 仏)がこれを改めて、フランス常用尺( pied du roi )の 1/72inch 1pt. と定め、1pt. 0.0148inch 0.3759mm )としました。「ディド式ポイント制」は現在でもヨーロッパ大陸の活字では採用されています。

「アメリカ式ポイント制」

正確には「アングロ・アメリカン・ポイントシステム」と表されますが、ふつうに「ポイント制活字」と呼ぶ際にはこれを指します。1866 年に全米の活字鋳造業者がナイアガラの滝の近郊で集会をもち、フィラデルフィアのジョルダン社( MacKellar Smiths & Jordan Co.)のパイカ活字の 1/12、すなわち 0.013837inch 0.35146mm )を 1pt. とすることを決めました。また 1905 年イギリスもこれを採用し、他の諸国もこれに倣ったものです。わが国では明治末期 1908 年以降)から、新聞社を中心に逐次従来の「号数制活字」に代えてポイント制活字を採用しましたが、1923 (大正 12 の関東大地震の罹災をきっかけとして一般の印刷所にも急速に普及しました。また 1962 (昭和 37 活字の大きさを 1pt. = 0.3514mm とすることが JIS 規格として制定されました。

活字の大きさ

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【活字ホルダー type holder

活字や込め物による組み版を固定し、スタンプとして手で押して使うための道具。簡易な機器に見えますが、活字の大きさに合わせてそれぞれの規格があり、意外なほど精巧で堅牢にできています。残念ですが現在では製造されていないカッパン関連機器のひとつです。ちなみに、本の背文字などを箔押しする製本用具に似ていますが、「箔押し」には加熱が必要なために、熱に強い材質でつくられた頑丈な専用器材を用い、活字も活字版印刷術用の鉛活字ではなく、熱に強く、通電性にも優れた真鍮製の彫刻活字や、いわゆる「スーパー活字」をもちいるのが良いとされています。

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【活版印刷 typographic printing, letterpress printing ; Buchdruck, Typographischer Druck

印刷

文字の印刷を主とする凸版印刷の一種。もともと活字を組んで組み版を整え、これを刷版として押圧を加えて印刷する技術でしたが、鉛版・電鋳版・線画凸版などの各種の刷版が発明されてからは、これらの諸刷版による印刷も活版印刷に含むようになりました。活版印刷はもっとも利用範囲の広い文字の印刷を主とし、現在ではわずかながらも、書籍・新聞・雑誌・名刺・カードなどの一部が活版印刷によって生産されています。本来は活字を刷版とする「活字版印刷」でしたが、一般には「活版印刷・活版」などと略称されています。

「活版校正機 galley proof press ;  Abziehpresse

活字組み版の「校正刷り」や「試し刷り」を印刷する簡単な印刷機。平圧式と円圧式があります。多くは手動ですが、円圧式には電動もあります。

「校正」
  1. 文字の誤りをくらべ正すこと。

  2. 校正刷りを原稿と引き合わせて、文字の誤りや不備を調べ正すこと。

「赤字」
  1. 校正刷りに書き入れる赤色の訂正文字または訂正記号。同一の校正刷りを複数の校正者が校正する場合、または再校の訂正を初校の訂正と区別するために青色の訂正文字や記号を用いることがあり、これを特に「青字」といいますが、一般にはこれをも含めて「赤字」と総称します。

  2. 赤字を加えた校正刷りそのもの。関西方面では「朱づき」とも呼びます。

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【くくり糸 page cord ; Kolumnenschnurk

くくり糸

組み上がった版を縛っておくための丈夫な木綿糸。一度で使い捨てにするのではなく、再度用いるために、解版のときにも整理して再使用にそなえて保管したので「結束糸・解版糸・まとめ糸」とも呼びます。

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【組みつけ imposition, imposing ; Ausschießen

活字組み版そのほかの凸版の版面を、チェースあるいは印刷機の版盤または版胴に固定すること。ページ物印刷においては特に重視され、印刷後に折り畳んだときのページ順・余白・印刷位置、あるいは印刷紙のクワエシロ(枚葉印刷機のクワエ爪がくわえる紙の端の部分。この部分に印刷はできません)などを考慮して版面を配置します。多色刷りの場合には刷り重ねが正確に合うように版面の位置を調整します。

「組みつけ寸法」

版面を組みつける際の基準とする寸法。ページ物印刷の場合には、各ページの余白、表裏の刷り位置などが正しく合うようにするため、ノドとワタリ(ノドは書籍などの綴じ目の余白。ノドを中心として向かい合わせた二つの版について、左側の版の左端から、右側の版の右端までの寸法がワタリです)、ケシタ(向き合った版の下部と下部の余白部)の寸法を定めて組みつけます。

「組みつけ台 imposing stone, imposing bed ;  Schließtisch

活字組み版その他の写真や図版などの凸版の版面をチェースに組みつけるための台。昔は平滑な大理石などの石盤を、現在ではおもに金盤(かなばん)を用いています。

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【罫線 rule ; Linie

罫線

罫線

活版印刷で線を印刷する際に用いる金属の薄板。形状はインテルと似ていますが、印刷される用途がある罫線は活字と同じような高さをしています。

素材は活字合金・亜鉛・真鍮・アルミニウム製などがありますが、その材料によって、鉛罫・トタン罫・真鍮罫・アルミ罫などと呼びます。またその形状によって「普通罫」と「飾り罫」とに分かれます。普通罫の代表には単柱罫があり、その細い辺を「表罫・オモテ罫」、天地を逆転させた反対側の太い辺を「裏罫・ウラ罫」と呼びます。そのほかにも単柱罫には無双罫・双柱罫・子持ち罫・両子持ち罫などがあります。飾り罫には種類がたくさんありますので、各社の見本帳をご覧ください。

関連機器/罫線切り機・罫線折り曲げ機・罫線仕上げ台・罫線鋳造機

罫線

罫線

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【ケース case ; Schriftkasten

欧文活字の収容ケースは、大文字、スモール・キャップ(小型大文字)、数字などを収める「アッパー・ケース upper case 」と、小文字、クワタ、スペースなどを収める「ロアー・ケース lower case 」とが 2 枚一対になっています。アッパー・ケースは小間を等区画し、ロアー・ケースは活字の使用頻度に応じて大小に区画されています。これらのケースは、植字台の上部にアッパー・ケースを、下部(手前)にロアー・ケースを置いて植字作業をするのでそう呼びならわしています。端物組み用には、大文字・小文字などを合わせた 1 フォントを 1 枚に収めた「ジョブ・ケース」のほか、「ハーフ・ケース」「ダブル・ケース」「トリプル・ケース」など種類がたくさんあります。「ダブル・ケース」の中では「カリフォルニア・ジョブ・ケース」が広く普及しています。そのほかにも、スペースやクワタなどを収める「込め物ケース」、罫線を収める「ルール・ケース」などの特殊なケースもあります。

「カリフォルニア・ジョブ・ケース California job case

欧文活字のダブル・ケースのひとつ。アッパー・ケースとロアー・ケースをひとまとめにしたケースです。活字の分量を多く必要としない、端物組み版に適した配列になっています。

カリフォルニア・ジョブ・ケースカリフォルニア・ジョブ・ケース

図版(右):『欧文組版入門』ジェイムズ・クレイグ 組版工学研究会監訳 朗文堂より

「ケース架(か)・ウマ」

ケース架・ウマ

おもに和文用の「すだれケース」を何枚も立てかけて収納し、一定の場所で文選作業がしやすいようにした棚状の台。木または鉄でつくり、片面掛けと両面掛けがあります。俗に「文選架」とか、その馬の背のような形状と、四方に開いた支脚を有することから「ウマ」ともいいます。
ケース架・ウマ

「ケース棚 case rack

ケース棚

活字を詰めたケースを収めておく木製または鉄製の棚。ケース架に納まりきれない予備のケースや、使用頻度の低い活字ケースを収めます。なお和文用活字の収納がほとんど「すだれケース」で、壁や棚に斜めに立てかけて保管するのに対して、欧文のケースは平らな引き出し式の棚に保管します。

「出張ケース case rack

ケース棚

「摘要文字」と呼ばれる使用頻度の高い漢字活字だけを集めた活字ケースです。一般の活版印刷所にある漢字活字、総数およそ 7500 字種のうち、もっとも多く用いる 2000 字種内外を収めます。このうちもっとも使用頻度の高いおよそ 140 字種を 1 枚に収めた「大出張 おおしゅっちょう」、次に使用頻度の高いおよそ 800 字種を収めたケースを「小出張 こしゅっちょう」といいます。以下は使用頻度によって「本室」や「外字」などと分類されますが、「小出張」に「中出張」や「出張」を付属させたり、「第二」や「どろぼうケース」「無室」などといった、各社独特の呼称と分類法がありました。ちなみに「どろぼうケース」は「隠しケース」とも呼ばれ、ある原稿に限って頻繁に使用する特殊活字を収めた特別のケースです。ふつうはこまかく字種を分類せず、部首だけをしるした見出しをつけて使用しました。

仮名活字は漢字よりも使用頻度が高く、また字種によって頻度が著しく異なるため、小間の区切りにも広狭があります。「仮名ケース」と呼んで仕切りの小間を広く取り、使用頻度によって大小を設けたものもありますが、多くは「すだれケース」の仕切り板を抜き取って小間を広げて用います。その他にも「袖(そで)ケース」「洋数字ケース」「補助ケース」などに分けて作業をしやすくしてあります。

「すだれケース」

すだれケース

和文活字の収納ケースです。すだれケースはところによって多少の差異がありますが、一般に縦 288mm、横 394mm、深さ 18mm ほどの箱に、横 3 段または 47 段の桟(さん)を渡し、収容する活字の号数もしくはポイント数に応じて細長い小間を仕切ってあるので「簾(すだれ)ケース」と呼びます。

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【ゲタ】

ゲタ

文選・植字中に欠字がある場合、補給がつくまで、不要な活字を裏返しにしたものをその文字の代わりに一緒に組み込んで作業を進めます。そのまま印刷をすると活字の裏側の溝(鋳造時についた「ぜい片」を切り取った後、仕上げカンナで削った際につく溝)が印刷面にあらわれます。その様子が下駄の歯模様〓に似ていることから伏せ字のことを「ゲタ」と呼びます。

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【ゲラ gale, galley ;  Setzschiff

ゲラ

gale が訛ったもので「ゲラ」といいます。活字組み版を入れる浅い盆状の箱です。「組みゲラ」と「置きゲラ」があります。

「組みゲラ」

組みゲラは長辺と短辺の各一辺に活字より低い縁があります。縁が高いゲラを用いる場合は、組み版を結束しやすいように「ゲラ棒」を用いることもあります。植字の際にステッキに組みつけた活字を、組みゲラに移して版をまとめるので「まとめゲラ」とも呼びます。また新聞やコラム、棒組みなど、組み幅が一定で行長の短い組み版のための細長い「棒ゲラ・棒組み用ゲラ」や、手軽に小さな組み版を運ぶための小型の「手ゲラ」もあります。

「置きゲラ letter board, saving galley ;  Formenbrett, Satzbrett

活字組み版を保存または運搬するために載せておくゲラ。積み重ねても版が損傷しないように、活字よりも高い、およそ 3cm の縁が 3 方についています。「取りゲラ」、「箱ゲラ」とも呼びます。

「ゲラ組み」」

植字の際に、ステッキを用いず、活字を直接ゲラ(組みゲラ)の上に組むことです。この方法では行の長さが不揃いになりがちな欠点がありますが、関西方面ではよく用いられた技法です。

「ゲラ刷り galley proof

組みつけの前に、ゲラに入ったままの状態の活字組み版を、いったん校正機に移動させて刷った校正刷り。校正刷りが終了すると、またゲラに戻して校正指示を待つことになります。「ゲラ刷り」は本来活版印刷の校正刷りのことですが、現代では、オフセット印刷やコンピューター・プリンターでも「ゲラ」は「校正刷り」の一般呼称となっています。

「ゲラ棚 galley rack, board rack ;  Setzchiffregal, Formenregal

組み置き版などのゲラを貯蔵しておく棚。木製または金属製で、前方の開いた箱の内側に桟を設け、あるいはここに板を差し込んで、ゲラの出し入れの便宜をはかっています。桟に金属のアングルを用いているものもあり「アングル angle 」とも呼ばれます。

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【見当針 feed gauge, feed guide ;  Anlegemarke

見当針

見当針

印刷機において、刷版に対する紙の上下・左右の位置を決めるための用具。平圧式においては圧盤上に金具、厚紙、見当針などによって前と横に当てる物を設けます。「当て針、前当て、当て、当て金」とも呼びます。

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【楮(こうぞ)

わが国が少しだけ自慢できるすぐれた製紙原料が「楮 こうぞ」です。楮はカミソ(紙麻)の音便でクワ科の落葉低木です。西日本の山地に自生し、繊維作物として各地で栽培されました。葉は桑に似て、高さは 3 メートルに達します。この樹皮の繊維を原料(あるいはその一部)として漉いた和紙が「楮紙」で、杉原紙・美濃紙・西の内紙・吉野紙・奉書などが知られています。古くから写経用紙・書類用紙・障子紙・傘紙などにひろく用いられてきました。

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【コットン紙 cotton paper

軽くて弾力性に富み、嵩高(かさだか)で光沢のない書籍用紙。おもに木綿の繊維またはソーダパルプなどを用いて作ります。現代では版画用紙や高級ステーショナリーなどにももちいられます。

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【込め物】

込め物

印刷面には出ない、余白をつくるための道具です。号数体系、ポイント体系のそれぞれの活字サイズに合わせて、それぞれの込め物があります。高さは活字より低く、大きさは様々です。金属材のうち大形のものの中には、軽量化のために中空のものもあり、パイカの 2 倍から 8 倍位のものを「ジョス justifier ; Hohlsteg、クォーテーション」と呼びます。「ジョス」よりさらに大きい込め物を「フォルマート、マルト、ファーニチュア furniture ; Formatsteg 」などと呼び、木製のものもあります。

「インテル leads ; Durchschuß

活字組み版の行間に差しはさむ木製または金属製の薄い板。英語の鉛の複数形「レッズ leads 」を訛って「レッチ」ともいいます。高さは活字より低く、一般に 0.760 — 0.770inch ほど。長さは手鋳込みのものは 60cm くらいありますので、インテル切り機で適当な長さに切断して使用します。

木製インテル

金属製インテル

インテル鋳造機で鋳造したものは、自動的に任意の寸法に切断されていますので、そのまま用います。なお、わが国ではしばしば厚さ 5 8 1.3125 ポイント)のインテルを用いることがありますが、これは主に亜鉛板のトタン板を利用していたことから「トタン・インテル、トタン」と呼ばれています。

関連機器:インテル切り機/インテル定規/インテル鋳造機

「スペース space ; Ausschluß

スペース

全角に満たない込め物。活字組みの字間または語間に差し込んで、こまかな余白をつくる道具です。2 (にぶ・にぶん)3 (さんぶ・さんぶん)4 (しぶ・しぶん)5 (ごぶ・ごぶん)などの「分物 ぶんもの」や、極めて薄い金属片を用いたヘア・スペースなどのそれぞれの込め物があります。このほかにも、活字の字間に薄い紙などをはさんで調整することもあります。全角より大きなスペースを「クワタ」と呼んでこれと区別します。なお欧文植字では「 1/2 en 」「 1/3 thick 」「 1/4 middle 」「 1/5 thin 」と呼びます。

関連機器:スペース・ケース/スペース小間/スペース箪笥

「クワタ quadrat, quad ; Quadrat

クワタ

全角( em )以上、欧文では 2 分( en )以上、3 — 4 倍などの倍数の込め物。活字組み版の行末のアキ、空白の行などを埋めるのに用います。

 このクワタを入れておく木製の箱を「クワタ箱・込め物箱」と呼びます。
クワタ箱

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【ころがし】

ころがし

文選した活字を組む際に、文選箱の中の活字を取り出しやすいようにするための補助具。多くは職人の手造りで、五寸釘などの円柱形の金属を、文選箱の横幅に合う長さに細工したものを使用していました。文選箱の最上部の行を軽く引き出し、活字の裏側と文選箱の底板との間に転がし入れて、最上部の活字をせり出させて使用します。

ころがし

ころがし

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