ことばが活きている限り、技術は生きつづけます。今、活版印刷の再生のために、まずことばを甦らせました。
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【三椏(みつまた)】
わが国が「 楮 こうぞ 」とともに少しだけ自慢できるすぐれた製紙原料が「三椏 みつまた」です。中国原産のジンチョウゲ科の落葉低木で、高さはおよそ 2 メートル、枝は三つに分かれます。繊維植物として日本の暖地に栽培され、樹の靭皮(じんぴ)繊維をとって和紙の原料とします。
【耳付き紙 deckle-edged paper ; gefranstes Rändelpapier 】
優雅な味わいを与えるために、周囲の仕上げ裁ちをしないで、縁を自然のままに残した紙。高級な書籍用紙や挨拶状などに用います。手漉きまたは円網抄紙機で抄造します。この仕上げに似せたものに擬耳付き紙があります。
【ムラ取り makeready ; Zurichtung 】
本刷り前の準備作業のひとつで刷りムラを取る作業です。
凸版印刷(活版印刷)では、印刷機に組みつけた刷版をそのまま印刷したのでは、インキの付着が均一ではなく、印刷面の各部分の濃度が揃った印刷物が得られません。その原因は、版面の高低差がもっとも多く、その他にも印刷機の精度不良、構造的欠陥、版面の画線の粗密、印刷圧力の不同などによって生じます。
活版印刷の場合に問題となるのは、活字の高低差がもっとも多いので、「ならし木」などをもちいて、丁寧に版面を平滑にしたり、活字の底部や印刷機械の胴張り紙の上に薄紙を貼って高さを調節します。また、場合によっては背の低い活字を金槌で叩くことにより金属をのばして高さを増したり、高すぎる場合はヤスリや輪郭削り機で削って微調整することもあります。
【メタル・ベース metal base, metal mount ; Metallfuß 】
活字版印刷において、活字のほかの樹脂版・亜鉛版・銅版・網版などを、活字と同じ高さにするために貼りつけて用いるための金属製の版台です。台金・共台ともします。また同様の目的で木製のものを「木台 もくだい・台木 だいぎ wood base 」と呼び、メタル・ベースを「金台 かなだい」とすることもあります。メタル・ベースは活字合金または鉛版地金、鉄、軽合金などでつくり、前述の印刷版を両面テープなどを用いて接着します。木台のように狂いが起こらないので、精密な印刷や大量の印刷に適します。
【メツ/滅活字 battered type ; schadhafte Scrift 】
印刷や紙型取りなどによって活字が摩滅したり欠けたりして不要となった活字。まとめて地金商などに引き渡され、溶解ののち不純物を取り去り、合金成分を調整して再使用されました。活字の自家鋳造が盛んなころ、品質管理に厳格な印刷所では、活字が床に落ちただけでも、汚れの付着と字面の損傷を嫌い、メツ活字として「地獄箱 hell box 」に投げ込まれました。まれに地獄行きを免れたメツ活字の中には、伏せ字(ゲタ)用として、活字ケースの「メゴマ」の欄に伏せて利用されるものもありました。