【会員情報】 ぢゃむ 杉本昭生さん|活版小本新作 ── ジェイムズ・ジョイス『エヴリン』|’25年12月

ぢゃむ 杉本昭生 活版小本 一筆箋 }

ジェイムズ・ジョイスの短篇「エヴリン」です。
十九歳のエヴリンは、厳しい父親や家事の重荷などの家庭環境から逃れ、
船乗りの恋人フランクと一緒に海外へ行こうと考えています。
しかしいざ船に乗るとき、故郷への執着と解放への願望の間で葛藤し、
最終的に国外脱出を断念します。
(2枚目に少し詳しい解説をつけました)

たまたま読んだこの作品に魅了されました。
どこがいいのかうまく説明できませんが、奥深さを感じます。
ひとつひとつの文章が短いのも好きです。
今回はいつもより丁寧に作りましたが、
せいぜいがこんなところです。
箔押しができたらなあと痛切に思いましたが
反面、出来る範囲で作る喜びも感じています。
ぜひご一読ください。
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前の説明だとよくある恋人同士の逃避行のように解釈されるので、
僭越ながら気になった言葉をあげておきます。
ブエノスアイレスへ行く
 これは当時売春婦になるという意味で使われたらしく、
 恋人(とエヴリンは思っているが)のフランクはどうやらエヴリンを
 売春婦として売りとばすつもりで近づいたことも考えられる。
……彼女を脅すようになり、死んだ母の手前言わなかったことを言うようになってきた
 父親はエクリンに何か性的な要求をしていたことを匂わせている。
ポペンズ
 人形。可愛い存在。つまり「俺の意思に従う操り人形」の意味。
デレグォーン、セローンー
 これは 「The end of pleasure is pain(快楽の終わりには痛み〈苦しみ〉がある)」
 あるいは「The end of song is raving madness(調和や楽しさが消えたあとには、
 混乱や狂気が訪れる)」という意味のゲール語らしい。
* いくつかの論文を参考にしました。
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